身体症状症

精神科

身体症状症

どんな病気?

身体症状症とは、苦痛を伴うまたは日常生活に混乱を引き起こす身体症状があり、それに関連した過度な思考、感情、行動が長期的に持続する病気です。この病気のポイントは身体症状への過剰なとらわれです。実際に身体疾患がある場合も診断がついていない場合も、苦痛や日常生活の混乱が実際の身体的問題に比べて不釣り合いに大きい場合はこの病気の可能性があります。症状の消失にこだわらず、症状があっても精神的に健康に過すことを目標に、精神療法や行動療法、補助的に薬物療法を行います。

症状

身体症状についての考えや不安で生活に支障が出る病気

一般外来で医学的に説明がつかない身体症状を持つ患者さんは40.2%–49%にものぼるという調査があり(Haller Hら, Dtsch Arztebl Int 2015 112: 279–287, 2015)、症状の原因がわからないということはきわめて一般的なことです。医学には限界がありますが、すべての検査を行わなくても重大な病気の見落としがないように、医師は総合的に判断しています。しかし、症状に注目し続けた場合、医師に問題がないと言われても安心できず、症状のことばかり考えるようになることがあります。複数の病院を受診して検査を希望したり、民間療法を試したりと、症状にとらわれた生活を送るようになります。この状態が長期的に続くと、結果的に身体症状そのものよりも、それに関する思考や不安、症状に振り回された生活の方が大きな問題となってきます。このような状態を身体症状症と呼びます。

検査・診断

症状<症状へのとらわれによる悪影響が診断のポイント

まずは苦痛を妥当に説明できる重篤な身体疾患がないか、内科などで十分に調べてから、精神科的評価や治療を開始していきます。DSM-5-TR(米国精神医学会による精神疾患診断分類)の診断基準では、1つ以上の苦痛を伴うまたは日常生活に意味のある混乱を引き起こす身体症状があり(A)、身体症状、またはそれに伴う健康への懸念に関連した過度な思考、感情、または行動(B)を伴い、症状のある状態は持続している(典型的に6ヶ月以上)(C)ものを診断するとしています。実際は、診断基準に機械的に当てはめて診断をするものではなく、診察医が病歴や診察所見などから総合的に診断を行います。幼少期からの人生経験、発達特性の有無、周囲の対人関係や社会的な状況などの情報は診断だけでなく、その人に合った治療方針を立てて精神療法(医師と会話をすることによる治療)を行うためにも役立ちます。また、医師は他の精神疾患がないかどうかも確認します。

治療と経過

症状の消失ではなく、よりよい生活を送ることを目指す

精神科を受診することは「症状は気のせいだ」と言われているような気がして抵抗を感じる方は多いでしょう。身体症状症は確かな苦痛や機能低下をもたらす疾患であり、精神科ではその苦痛を軽視しません。それでも、精神的な健康を取り戻すこと、身体症状とどう付き合っていくのかというのは非常に重要な問題です。そのため精神科では原因の追及や症状の消失は目指しません(必要な場合は身体科と併診します)。診察での精神療法、行動療法などを中心に、身体症状との付き合い方を一緒に考えたり、ストレスに対処する力を伸ばしたりといったことが行われます。抑うつや不安、痛みが強い時に、補助的に抗うつ薬などの薬物療法を行います。時間をかけて自分自身や症状への理解を深め、症状と距離が取れ、健康的な行動を選択していくことで、身体症状によるとらわれが軽減し、苦痛が軽減していくと言われています。

よくある質問

家族が身体症状症かもしれないのですが、どのように接したらよいでしょうか

本人の身体症状への苦痛は、他者から見れば過度であっても、本人は真剣に苦しんでいます。本人のためよかれと思って「気の持ちようだ」と励ましてしまうと、本人は「辛さをわかってもらえない」「サボっていると思われているのではないか」と感じ、さらに不安や落ち込みを感じ、孤立感を深めてしまうことがあります。また、本人が現実的な(精神的な)問題に向き合うかどうかは本人の決断であり、本人の中でさまざまな準備が整うことが必要になるため、周囲が強引に精神科を受診させようとするとうまくいかないことが多いと思われます。原因については議論せず、まずは本人のきつさを否定せずに認め、味方としてそばにいることが本人の支えになると思われます。本人が行動するために、安全な場所にいる、周囲に支えてもらっているという感覚は大いに助けになります。

症状をCHECK
※症状は人によりさまざまです

  • □ 原因が分からない症状に長く悩まされている
  • □ 持病の症状がつらく、なかなか良くならない
  • □ 重大な病気なのではと不安に襲われる
  • □ とにかく原因をはっきりさせたい
  • □ インターネットや書籍で症状について頻繁に調べている
  • □ 医者にしっかり検査をしてもらえない
  • □ 何カ所か病院を変えている
  • □ 症状のせいで仕事や家事がうまくいかない
  • □ 症状によって気持ちが落ち込み、好きなことも楽しめない
  • □ 周りの人が症状を理解してくれず「気にしすぎ」と言われるのがつらい

更新:2026.08.14