きょうはくしょう(きょうはくせいしょうがい)

強迫症(強迫性障害)

概要

強迫性障害とは、つまらないことだと自覚していても、そのイメージや不安が頭から離れず、それを打ち消すために何度も同じ確認などの行為を繰り返し行ってしまう疾患です。

例えば、汚れが付いているのではないかと不安になり、手洗いや拭き掃除を繰り返したり、自分の不注意で事故が起きるのではないかと不安になり、ガスの元栓やかぎを何度も確認したりします。この頭から離れない不安や嫌なイメージを「強迫観念」と言い、強迫観念を打ち消すために繰り返す行為を「強迫行為」と言います。

図
図:強迫行為の一例

強迫性障害は、10歳代から20歳代の思春期青年期に発症することが多く、有病率は2~3%といわれています。自分でも強迫観念で思い浮かぶ内容を、ばかばかしいと分かっているのに、強迫行為をやめることができない病気です。また、物の位置が左右対称でないことが気になり、何度も並べ替えを繰り返したり、大切なものを捨ててしまうのが心配で、何も捨てられずに溜(た)め込んでしまうという病型もあります。

原因

強迫性障害の原因は明確に特定されていませんが、ストレスなどの環境要因と、遺伝的体質などが複雑に関与して発症するものと考えられています。

また、セロトニンという脳内伝達物質の再取り込み阻害作用の強い抗うつ薬が、強迫性障害に効果的だということが知られるようになり、脳の代謝や血流の研究から、患者さんの脳では特定の部位に異常が起きていることが疑われるようになりました。強迫性障害の患者さんの脳では、神経伝達物質の働き方に変化が起きていると推定されています。家庭や学校でのストレスが強迫性障害の原因と思われる方がいますが、ストレスは様々な原因のなかののひとつに過ぎません。

診断

強迫性障害は、自分で意味がないとわかっていながら(自我違和感がありながら)、強迫行為を繰り返してしまいます。

子どもの場合は、この自我違和感があいまいだったり、正常な発達過程でも儀式的なルールや特定のこだわりや収集癖などがみられることがあるため、時間をかけて詳しい問診を行い慎重に診断を行っていきます。

治療

強迫性障害の治療は、薬物療法に加え、認知行動療法というトレーニングを並行して行います。

薬物療法

多くの強迫性障害の患者さんに改善がみられている薬が「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」という抗うつ薬で、副作用も少ない薬です。SSRIを強迫性障害の患者さんに使用するときは、うつ病の患者さんに対してよりも高用量を用い、効果がでるまでに長い時間がかかります。

認知行動療法

意図的に不安刺激に触れ(曝露(ばくろ))、その際に生ずる不安や衝動を我慢すること(反応妨害)を組み合わせて行うことが行動療法です(曝露反応妨害法)。具体的には、強迫観念を引き起こす刺激を弱いものから強いものまであらかじめ提示してもらい、弱い刺激から順番に触れてみて強迫観念が引き起こされても、強迫行為を行わない練習を行います。

更新:2022.08.22