あきれすけんだんれつ

アキレス腱断裂

概要

アキレス腱(けん)(※1)は、人が歩く・走る・ジャンプするといった動作を行ううえで重要な役割を担っています。しかし、このアキレス腱に急激に大きな力がかかったり、長年使いすぎによるダメージが蓄積したりすると、腱が部分的または完全に切れてしまうことがあります。これをアキレス腱断裂(だんれつ)といいます。

スポーツをする人に多いけがとして知られていますが、日常生活のちょっとした動作でも起きる可能性があります。脚のけがの中でも比較的多く報告される事例の一つです。アキレス腱が断裂すると、歩くのはもちろん、日常生活にも支障をきたします。

※1:ふくらはぎの筋肉と、かかとの骨をつなぐ太くて強い腱

図
図:アキレス腱断裂

アキレス腱断裂の原因

アキレス腱断裂の主な原因は、腱にかかる過度の負担や衝撃です。具体的には以下のような状況で起こることが多いとされています。

1.急な動きや強い負荷
スポーツでのダッシュ、ジャンプ、急停止や方向転換など
重い物を急に持ち上げる動作
段差から飛び降りるなど、足首に強い力がかかる動作
2.加齢や長期的な使用による弱まり
アキレス腱は年齢とともに弾力が低下したり、小さな損傷が繰り返されたりして脆(もろ)くなることがあります。
運動不足から急に激しい運動を始めた場合など、十分な準備運動をしないまま腱に強い負荷がかかることも一因です。
3.薬の影響や病気
一部のステロイド薬(※2)や特定の抗生物質(※3)は、腱を弱くする可能性があると指摘されています。
リウマチや糖尿病など、腱の丈夫さを損ないやすい病気を持つ場合もリスクが高まるとされています。

※2:免疫反応や炎症を抑える薬
※3:細菌を殺す薬

アキレス腱断裂の症状

アキレス腱断裂が起きたときにみられる症状は、以下のようなものです。

1.急に「バチン」とはじけるような音や感覚
断裂の瞬間、多くの人が「何かに強く蹴られたような感覚がした」「硬いボールが当たった」と錯覚するほど強い衝撃を受けたと表現します。
実際に大きな音が聞こえる場合もあれば、「ブチッ」といった感覚だけがある場合もあります。
2.ふくらはぎやかかと周辺の強い痛み
断裂直後は激しい痛みを感じることが多いです。
痛みの感じ方や持続時間には個人差があります。
3.足首を下方向(底屈)に動かせない、または動かしづらい
かかとを持ち上げる動作が難しくなるため、足の指先で立ち上がれない、つま先立ちができないといった症状が出ます。
4.歩行困難
痛みや筋力低下により、普通に歩くことが難しくなるか、痛みをかばうように、足を引きずりながら歩くようになります。

上記のような症状がある場合、アキレス腱が断裂している可能性があるため、早めに整形外科などの医療機関を受診することが大切です。

アキレス腱断裂の検査・診断

1.触診
医師がアキレス腱の部位に直接触れ、腱が連続しているかどうかを確認します。アキレス腱にくぼみがある場合や、正常な弾力を感じにくい場合には、断裂が疑われます。
2.トンプソンテスト
ふくらはぎ(下腿三頭筋:かたいさんとうきん)を手で圧迫し、そのとき足首が下方向(底屈)に動くかどうかを確認する簡易テストです。正常な場合は、ふくらはぎを押すとアキレス腱を通じて足が動きますが、断裂があると動きが小さいか、まったく動かないことがあります。
注意が必要なのは、腱が完全に切れていても、周りの筋肉を使ってつま先を動かしたり、多少歩けてしまったりする場合があることです。「動かせるから大丈夫」と自己判断せず、必ず整形外科を受診してください。
3.画像検査
超音波検査(エコー検査)
皮膚の上からアキレス腱の状態を映し出し、断裂の有無や断裂した範囲を調べます。被ばくのリスクがなく、検査が比較的簡単です。
MRI検査
手術の計画など、より正確な情報が必要な場合に行われることがあります。

医師は、こうした診察や検査結果を総合的に判断し、アキレス腱断裂の有無や程度を診断します。

アキレス腱断裂の治療

アキレス腱断裂の治療には、大きく分けて手術療法と保存療法(※4)の2つがあります。選択は患者さんの年齢、運動レベル、断裂の程度などを考慮して行われます。

保存療法は手術をしないため合併症のリスクはありませんが、手術療法に比べると再断裂のリスクがわずかに高いとされています。

手術療法は再断裂のリスクが低く、スポーツ復帰を早めたい方に適していますが、傷口の感染や神経損傷のリスクが伴います。

手術療法
1.縫合手術(※5)
アキレス腱が完全に切れている場合や、大きくずれている場合には、手術で腱をつなぎ合わせます。
2.術後のリハビリテーション
一定期間、ギプスや足首を固定する装具で足を動かさずに固定した後、徐々にリハビリを行って筋力を回復させます。早期にリハビリを始めることで、腱の癒着(※6)や筋力低下を最小限に抑えられると考えられています。
保存療法
1.ギプスや装具での固定:手術を行わず、足首を一定の角度で固定し、腱が自然にくっつくのを待ちます。
2.リハビリテーション:固定期間の終了後は、装具の角度を徐々に変えたり外したりしながら、筋力や柔軟性を回復させます。

保存療法は、部分的な断裂や高齢者、あまり運動をしない方などに選択される場合があります。ただし、手術療法に比べると再断裂のリスクがやや高まるともいわれています。

※4:手術をしない治療
※5:切れた腱を縫い合わせる手術
※6:不要な部分同士がくっついてしまうこと

アキレス腱断裂の合併症

再断裂
治療後に再び強い負荷をかけると、アキレス腱が再断裂する可能性があります。
筋力や柔軟性の低下
長期間の固定や負荷不足により、ふくらはぎの筋肉が衰えたり、足首の動きが硬くなったりすることがあります。
感染症(手術の場合)
手術の切開部位から細菌が侵入するなどして、まれに感染症が生じることがあります。

アキレス腱断裂の予防

アキレス腱断裂を防ぐことは難しいですが、以下のポイントに気をつけることでリスクを下げることができます。

1.十分な準備運動
スポーツや運動を始める前に、ストレッチや軽いウォーミングアップを行い、筋肉や腱を温めておきましょう。
2.適度な運動習慣
急に激しい運動をすると、腱に大きな負荷がかかります。普段から適度に筋力を維持することで、腱の負担を減らせます。
3.加齢や既往歴(*7)への配慮
リウマチ、糖尿病などの持病がある方や、特定の薬を使用している方は、医師に相談しながら運動量を調整しましょう。
4.合わない靴を避ける
ヒールの高い靴や、クッション性の低い靴などは、足首に負担をかけやすくなります。自分の足に合った靴を選ぶことが大切です。

※7:過去にかかった病気

更新:2026.05.13