てにすひじ(じょうわんこつがいそくじょうかえん)

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

概要

テニス肘(上腕骨外側上顆炎〈じょうわんこつがいそくじょうかえん〉)は、ひじの外側部分に痛みが生じる症状です。テニスなどのラケット競技をする人に多いことから「テニス肘」と呼ばれていますが、実際にはテニスをしていなくても、ひじの腱(けん)や筋肉を繰り返し使う作業をしていると誰にでも起こり得ます。例えば、パソコン作業、工具を使った仕事、重い荷物の運搬など、手首をよく使う動作が続くと、肘周辺の筋肉や腱に負担がかかり痛みが発生します。

日常生活の動作やスポーツ、仕事でも起こりやすいトラブルとして認識されており、年齢層では30代以上の働き盛りに比較的多くみられます。早めに適切なケアを行うことで、長引く痛みの悪化を防ぐことが可能です。

テニス肘の原因

テニス肘が起こる主な原因は、腕や手首を伸ばす筋肉や腱に過度な負担がかかることです。

特に、手首を上に反らせる動作で使われる「短橈側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)」という筋肉の付け根(ひじの外側)に炎症や微細な断裂が起きることが、痛みの主な原因です。

具体的には次のようなケースがあります。

1.スポーツ時の動作
テニスやバドミントンなどラケット競技で、サーブやスマッシュを繰り返し行う
ゴルフのスイングや野球のスローイングでも、肘の外側に負担がかかる場合がある
2.職業や作業での使いすぎ
パソコン操作でマウスやキーボードを長時間使う
ペンで長時間文字を書き続ける
工具を使ったり重いものを持ち上げたりする仕事を繰り返し行う
3.日常生活での動作
買い物袋や荷物を片側で持ち上げ続ける
掃除や庭仕事などで手首を何度もひねる動作をする

これらの動作によって筋肉や腱の一部に小さな傷ができると、それを修復する過程で炎症(えんしょう)が起き、痛みを引き起こします。

テニス肘の症状

テニス肘の主な症状は、肘の外側に感じる痛みです。初期段階では、負担をかけたときだけ痛む場合がありますが、進行すると日常動作でも痛みが出ることがあります。具体的には次のような症状がみられます。

1.肘の外側の痛み
物を持ち上げるとき、ラケットを振るとき、またはペンで書くときなどに痛む
特に手首を反らせる(手の甲を上に向ける)動作で痛みが強くなる傾向がある
2.握力の低下
コップやペットボトルを握って持ち上げるときなどに力が入りにくくなる
3.ひじ周辺のこわばり
朝起きたときや長時間じっとしていた後、肘付近が重だるい・動かしにくいと感じる

痛みが進行すると、何もしていなくてもジンジンうずくような痛みを感じるケースもあります。

図
図:テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

テニス肘の検査・診断

医療機関での検査・診断は、以下のように進められます。

1.問診
痛みの場所や強さ、いつごろから症状が出始めたか、どのような作業をよくしているかなどを医師が詳しく聞き取ります。
2.視診・触診(ししん・しょくしん)
肘の外側を押して痛みがあるか、腫れ(はれ)や熱感(ねっかん)があるかを確認します。
手首や肘を動かす検査を行い、痛みの出方や動かしにくさをチェックします。
3.画像検査
X線(レントゲン)検査:骨に異常がないかを確認します。骨折や関節の変形などが疑われる場合に行われます。
MRI検査:腱や軟部組織(なんぶそしき)(※1)の詳細を確認したいときに行われることがあります。

また、自分でもできるチェック法として、椅子を上から掴んで持ち上げる「チェアーテスト」や、手首を反らせる動作に抵抗をかける「トムゼンテスト」があります。これらでひじの外側に痛みが出る場合は、テニス肘の可能性が非常に高いと言えます。

テニス肘は、問診と触診による診断が中心ですが、他のひじの疾患(しっかん)や神経の問題との区別が必要な場合、詳細な画像検査が行われることがあります。

※1:臓器や骨組織を除く筋肉や皮膚及び皮下組織(ひかそしき)、血管、末梢神経(まっしょうしんけい)などのこと

テニス肘の治療

テニス肘の治療は、まず安静とケアを重視します。症状の度合いや生活背景に合わせて、以下のような方法が組み合わされます。

1.休息と負担の軽減
スポーツや作業による痛みがひどいときは、しばらく休むか、痛みが生じない範囲で運動量を調整します。
手首や肘の負担を減らすため、作業道具やラケットの持ち方、握り方を見直すことも大切です。
テニス肘バンド(エルボーバンド)の活用 手首や指を動かす際の負担を軽減するために、テニス肘用のバンド(エルボーバンド)の使用が効果的です。 装着する際は、「肘の外側の最も痛む場所」そのものではなく、そこから「指2本分ほど手首側(前腕の筋肉が最も盛り上がっている部分)」にパッドが当たるように巻いてください。痛む場所の少し手前を圧迫することで、手首を動かした際の衝撃が肘の付け根(炎症部)に直接伝わるのを防ぐ「身代わり」の役割を果たします。
2.物理療法(ぶつりりょうほう)
冷却(アイシング):痛みや炎症が強い場合は、氷などで患部を冷やし、炎症を鎮めます。
温熱療法(おんねつりょうほう):慢性的に痛みが続く場合は、温めることで血行をよくし、回復を促します。
超音波療法・低周波治療:リハビリの専門である理学療法士が行うことがあり、腱や筋肉の修復を助けます。
3.リハビリテーション
ストレッチや筋肉強化運動を行い、腕や手首周辺の筋肉をバランスよく鍛えます。
正しいフォームでテニスなどのスポーツを行えるよう、動作指導を受けることも有効です。
4.薬物療法
鎮痛薬(ちんつうやく)や消炎薬(しょうえんやく):痛みや炎症を和らげる内服薬や塗り薬が処方される場合があります。
ステロイド注射:痛みが強い場合、炎症を抑える注射を肘付近に打つことがありますが、短期間に繰り返すと腱の組織がもろくなるリスクがあるため、慎重な判断が必要です。
その他:最近では、自分の血液の成分を利用して組織の修復を促す「PRP(多血小板血漿)療法」という新しい選択肢も登場しています。
5.サポーターや装具の使用
前腕(※2)に装着するバンドやサポーターを利用し、負担のかかる腱や筋肉を支えます。
6.手術
痛みが長期間続き、日常生活に大きな支障が出る場合や、上記の治療が効かない場合は手術が検討されることがあります。しかし、テニス肘で手術に至るケースは多くはありません。

※2:肘から手首にかけての部分

テニス肘の予防

テニス肘は、正しい身体の使い方や負担の軽減で予防しやすいと考えられています。日常生活やスポーツの中で以下の点に注意しましょう。

1.適切なストレッチとウォーミングアップ
運動前に腕や手首の筋肉をよくほぐしておくことで、筋肉や腱の負担を減らします。
2.筋力バランスの強化
肘や手首周辺だけでなく、肩や背中、体幹(たいかん)の筋力も鍛えておくと、動作時にかかる負荷が分散されます。
3.道具の見直し
テニスやゴルフなどの道具は、自分に合った重さやグリップサイズを選ぶことが大切です。
パソコンのマウスやキーボードの高さや位置を調整し、手首への負担を軽減します。
4.作業時間の管理
長時間同じ動作を続ける場合は、適度に休憩を取り、肘や手首を休めるようにします。

更新:2026.05.13