虫歯(う蝕)
概要
虫歯は、歯の表面に付着した細菌の塊であるプラークによってつくられる酸が原因で、歯の表面のエナメル質(※1)や、その内側にある象牙質(ぞうげしつ)(※2)が溶けてしまう病気です。日本では、子どもから高齢者まで幅広い年齢層で見られる、最も一般的な歯の病気のひとつといわれています。
歯を失う原因の上位として「虫歯」や「歯周病(ししゅうびょう)(※3)」が大きな割合を占めており、虫歯の予防と早期治療は歯の健康を守るうえで欠かせないとされています。
虫歯は、初期段階では痛みを感じにくいことがあります。しかし、放置して進行すると、歯に大きな穴があいたり、激しい痛みが生じたり、歯を抜かなくてはならない場合もあります。適切な予防策と、早めの検査・治療を心がけましょう。
※1:歯の一番外側を覆う硬い層
※2:エナメル質の下の層
※3:歯ぐきや歯を支える骨の病気
虫歯の原因
虫歯の主な原因は、口の中にいるストレプトコッカス・ミュータンスなどの細菌が糖分を分解して酸を作り、その酸が歯を溶かすことにあります。
- 1.プラーク(歯垢:しこう)の形成
- 歯の表面に付着した食べかすや唾液中の成分が混ざり合い、細菌のかたまりであるプラークを形成します。これは、歯をしっかり磨かないとたまっていきます。
- 2.酸の産生
- プラーク中の細菌は、糖分(砂糖、ブドウ糖など)を栄養源として酸を生み出します。特に甘い食べ物や飲み物を頻繁にとると、細菌が活発に酸を出し続けます。
- 3.歯の脱灰(だっかい)
- 歯が溶けることです。つくられた酸がエナメル質や象牙質を少しずつ溶かし、歯に穴があく状態へと進行していきます。
- 4.唾液の不足
- 唾液は、酸を中和して歯を修復する働きがあります。唾液の分泌量が少ない人は酸から歯を守る力が弱くなり、虫歯になりやすくなります。
- 5.歯磨き不足や不適切な磨き方
- 毎日の歯磨きやデンタルフロスの使用が不十分だと、プラークが残りやすく、虫歯のリスクが高まります。

虫歯の症状
虫歯の症状は進行度によって変わります。初期にはほとんど自覚症状がありませんが、次第に以下のような症状が出てきます。
- 1.白い斑点(はんてん)が見られる
- エナメル質に初期の脱灰が起きると、歯の表面に白っぽい斑点が生じることがあります。痛みはありません。
- 2.軽い痛みやしみる感じ
- エナメル質がさらに溶けてきたり、冷たいものや甘いものを食べたりしたときに、歯がしみたり軽い痛みを感じたりします。
- 3.歯に穴があく、茶色や黒色に変色する
- 虫歯が象牙質にまで達すると、歯に穴があき始め、茶色や黒っぽい色になることが多いです。この段階からは痛みもはっきり出やすくなります。
- 4.強い痛みや歯の神経のダメージ
- 虫歯がさらに奥深く進むと、歯の神経まで細菌が達し、激しい痛みやズキズキした不快感を生じます。場合によっては歯ぐきが腫れたり膿(うみ)がたまったりすることもあります。
- 5.歯の欠損や抜歯が必要になる
- 虫歯が重症化すると、歯が大きく欠けたり、修復が不可能になったりするため、抜歯を選ばざるを得ない場合もあります。

虫歯の検査・診断
虫歯が疑われる場合、歯科医院で以下のような検査・診断がおこなわれます。
- 1.視診と触診
- 歯科医師が直接目で見たり、歯科用の器具で歯の表面を触ったりして虫歯の有無や範囲を確認します。
- 2.レントゲン検査
- 目に見えにくい歯と歯の間や、歯ぐきの下に隠れた虫歯を発見するためにレントゲン撮影を行い、内部の状態を確認します。
- 3.光学式検査
- 特殊な光をあてる検査(蛍光観察など)により、初期虫歯を検出する場合もあります。
- ただし、設備や医院によって実施の有無は異なります。
- 4.歯周状態のチェック
- 虫歯と同時に歯周病のリスクがあるかどうかを確認するため、歯ぐきの状態や歯石(*4)の有無もチェックします。
診断では、虫歯の進行度に応じて処置や治療計画が立てられます。初期段階ならば軽い処置で済む場合も多く、早期発見・早期治療が大切です。
※4:歯に固まって付着した汚れ
虫歯の治療
虫歯の治療は、進行度や患者さんの歯の状態によって異なります。代表的な治療法は次のとおりです。
- 1.初期虫歯(エナメル質の脱灰のみ)
- フッ素塗布:歯を強くし、再石灰化(さいせっかいか)(※5)を促します。
- 充塡(じゅうてん)治療:虫歯部分を削って除去したあと、歯科用レジン(樹脂)や金属、セラミックなどの材料で穴をふさぎます。
- 2.神経にまで達した虫歯
- 根管治療(こんかんちりょう):歯の中の神経や血管が通る管をきれいにし、消毒・薬剤充填してふさぐ治療です。その後、かぶせ物(クラウン)を装着するケースが多いです。
- 3.重度の虫歯で歯を残せない場合
- 抜歯(ばっし):歯が大きく破壊され、保存不可能な場合は抜歯を行います。
- ブリッジやインプラント、入れ歯:抜歯後の歯を補うために、歯科医と相談して方法を選択します。
※5:溶けた歯の表面が再び硬くなること
虫歯の合併症
虫歯を放置すると、歯だけでなく全身にも影響が及ぶ場合があります。主な合併症としては、以下が挙げられます。
- 1.歯髄炎(しずいえん)
- 歯の神経の炎症です。虫歯が歯の神経まで達すると、強い痛みや腫れが生じ、根管治療が必要になります。
- 2.歯根嚢胞(しこんのうほう)
- 感染が歯の根の先まで広がると、膿(うみ)の袋ができ、痛みや腫れを引き起こすことがあります。
- 3.細菌が血流を介して全身に広がるリスク
- まれですが、口の中の細菌が血液を通して心臓やほかの臓器に影響を及ぼし、肺炎や心筋炎など重篤な感染症を起こす場合もあります。
虫歯の予防
虫歯を予防するために、以下のようなポイントを日常生活で意識しましょう。
- 1.正しい歯磨きと定期的な歯科健診
- 歯磨き:食後や就寝前の歯磨きに加え、歯間ブラシやデンタルフロスも活用し、歯と歯の間の汚れも取り除くようにします。
- 歯科健診:半年~1年に1回程度の定期検診を受け、早期に虫歯や歯周病を発見して治療することが大切です。
- 2.食生活の見直し
- 糖分を取りすぎない:チョコレートやキャンディーなどを頻繁に食べると、口の中が酸性になり、虫歯のリスクが高まります。甘いものはほどほどに、食べるときは時間を決めましょう。
- キシリトールガムの活用:キシリトール入りガムは、唾液分泌を促して虫歯の原因菌を減らす効果が期待されます。
- 3.フッ素の活用
- フッ素配合歯磨き粉:フッ素には歯の再石灰化を促進する働きがあるため、フッ素入りの歯磨き粉を使うと虫歯予防に効果的です。
- フッ素洗口液やフッ素塗布:歯科医院でのプロケアや、フッ素洗口液を利用するとより効果的に歯を強化できます。
- 4.唾液を増やす習慣
- よくかむ食事:野菜や果物など歯ごたえのある食材をしっかりかむことで、唾液分泌が促進されます。
- 水分補給:口が乾燥しないように、水やお茶をこまめに飲みましょう。
- 5.シーラント(特に子ども向け)
- 奥歯の溝などに樹脂(じゅし)(※6)を埋めて、虫歯菌が入り込まないようにする方法です
※6:プラスチックの一種
更新:2026.05.13

