隠れた生活習慣病に正しく対処 睡眠時無呼吸症候群

徳島大学病院

呼吸器・膠原病内科

徳島県徳島市蔵本町

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

睡眠には、大脳の保守・修復、身体機能の回復、情報処理・記憶の固定などの役割があるといわれます。「十分な睡眠時間を取っているのに、なぜか昼間に眠い」「起床時にどうも頭が重い」「喉(のど)に違和感が残る」といった症状を感じたことはありませんか。

もし普段から、いびきがうるさいと言われているようなら、睡眠中に呼吸が止まっていないか家族に確認してください。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)という病気があります。睡眠中に呼吸が10秒以上停止した状態(無呼吸)が頻繁に起こることで、昼間の眠気や集中力の低下とともに、長期的には心血管障害や脳卒中が起こりやすくなる病気です。

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SASは決して少なくはありません。予備軍と考えられる習慣性いびき症の人は男性の25%、女性の5%で、SASと診断される患者さんは男性の4%、女性の2%といわれています。

1泊2日の入院で、正しく診断!

診断には、1泊2日の検査入院で行う終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)検査と、自宅に検査器具を持ち帰って自分で装着する簡易検査の2つがあります。これらの検査によって、夜間の睡眠中に無呼吸が何回起こるか、どんな無呼吸が起こるかを診断します。1時間に5回以上の無呼吸がみられた場合にSASと診断されます。

SASは「閉塞型(へいそくがた)」と「中枢型」に分けられ、閉塞型が大部分を占めます。閉塞型は喉の閉塞で無呼吸が起こるタイプ、中枢型は呼吸運動自体が止まるタイプです。肥満傾向の人、顎(あご)の小さい人、扁桃(へんとう)や舌の肥大している人は閉塞型になりやすく、心疾患や脳血管疾患のある人は中枢型を起こしやすい傾向にあります。

SASはほかの生活習慣病(高血圧や糖尿病など)と関連

SASの患者さんは、夜間に呼吸が止まることで間欠的に低酸素血症が起こり、交感神経の緊張や炎症反応を介して、高血圧や脳血管疾患が誘発されることが分かっています。高血圧ガイドラインには、SASは2次性高血圧の最も大きな原因の一つであることが記載されています。

また、昼間の眠気によって作業効率が落ち、ミスや事故を起こしやすくなります。交通事故を起こす危険性は、健常者の約7倍というデータもあります。最近の研究では、糖尿病の発症への関与も指摘されており、ほかの生活習慣病との関連でも重要な病気です。

有効率の高いCPAP治療でコントロールを

治療には、CPAP(シーパップ)といわれる機器(図)による在宅治療を行います。睡眠中に鼻マスクから気道に空気を送り、気道の閉塞を防いで無呼吸をなくす治療です。有効率は高く、多くの患者さんはCPAP治療によって、無呼吸の改善とともに熟睡感が得られ、生活の質が改善します。最近の機器は、SDカードへの記録によって夜間の治療状況が一目で分かるようになっています。当科では、カード管理によって治療状況の説明を行いながら、丁寧な治療を心掛けています。口腔内(こうくうない)装具(歯科で作製)による治療や手術が検討されるケースもあります。日常生活では、減量と禁煙が無呼吸の改善に重要です。

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図 CPAP機器と使用イメージ
睡眠中に使用するCPAP機器。実際の使用にあたっては、受診時に機器に挿入されているSDカードなどの記録カードを解析することで、図のようなデータを基に治療状況をチェックできます

診断されていない患者さんがたくさんいると考えられている疾患です。当科では多くの患者さんを、院内および地域の医師と連携して診断し、治療にあたっています。

更新:2022.03.04