大腸がんの治療ー内視鏡治療、外科手術、化学療法 大腸がん

徳島大学病院

消化器内科

徳島県徳島市蔵本町

大腸がんの診断

大腸がんは食生活の欧米化などの影響により罹患率は増加傾向です。早期に発見、治療できれば、ほぼ治癒可能ですし、近年、化学療法の効果も飛躍的に向上してきています。

大腸がんは一般に大腸内視鏡検査によって診断確定しますが、超音波検査やCT検査などでも病態を評価し、総合的に診断します。そして、がんの進行度(病期)に応じて治療法を決定します。

●大腸がんの病期

大腸がんはがんの広がりの程度によって、下記の病期に分類されます。

表

治療方針

0~Ⅲ期の大腸がんに対する治療は切除が原則で、切除方法には内視鏡的切除と外科的手術があります(図1)。

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図1 大腸がん0~Ⅲ期の治療方針

1.内視鏡的切除

0期およびⅠ期の中でも、がんの広がりが粘膜下層の浅層までと診断した場合は、内視鏡的切除の適応となります(詳細は「消化器がんの内視鏡治療」参照)。

2.外科的手術

内視鏡的切除では根治できないと判断された症例は、外科的手術の適応となります。手術の基本は、病変部の腸管切除とリンパ節郭清(かくせい)ですが、消化器外科と連携の上、患者さん個々の病態に応じた術式が選択されます。

3.術後補助化学療法

外科的手術でがんを切除しても、リンパ節転移があった場合(Ⅲ期)は、再発の危険性があることが分かっているため、再発予防を目的として抗がん剤による全身化学療法を行います。Ⅱ期でも、再発の危険性が高いと判断された症例は、この療法を行うケースもあります。

遠隔臓器への転移があるⅣ期の大腸がんでも、大腸の原発巣(げんぱつそう)とともに肝臓や肺の遠隔転移巣も切除可能な場合は、まず外科的手術を行います。外科的切除が不可能な大腸がんは全身化学療法の適応となります(図2)。術後、再発を認めた場合にも全身化学療法を行います。

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図2 大腸がんⅣ期の治療方針

切除不能大腸がんと再発大腸がんの化学療法

近年、新しい抗がん剤に加え、分子標的治療薬(ぶんしひょうてきちりょうやく)の開発によって、大腸がんの化学療法は目覚ましく進歩し、患者さんの生存期間や生活の質は劇的に改善しています。

抗がん剤治療は、キードラッグであるオキサリプラチン、イリノテカン、5-FUの中から薬剤を組み合わせたFOLFOX(フォルフォックス)療法やFOLFIRI(フォルフィリ)療法、5-FUを内服薬であるカペシタビンに変更したCapeOX(カペオックス)療法が主流です。

これらに分子標的治療薬であるベバシズマブ(血管新生阻害剤)やセツキシマブ、パニツブマブ(共にヒト上皮成長因子受容体阻害剤)を追加することで、治療効果がさらに上がることも証明されており、現在の標準療法となっています(写真)。

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大腸がんⅣ期に対する全身化学療法(FOLFOX療法+ベバシズマブ)施行例治療前(左)に比較して、治療後(右)は大腸原発巣、肝転移巣ともに著明に縮小している

セツキシマブおよびパニツムマブについては、KRAS(ケーラス)遺伝子(がん遺伝子の一種)の変異の有無によって治療効果に差があるため、治療開始前に患者さん個々の遺伝子検査を行い、より効率的な個別化治療ができるようになっています。そして、治療経過中に薬剤が無効となった場合や副作用で治療が継続できなくなった場合は、薬剤を変更しながら、二次治療、三次治療と継続していくことで生存期間はさらに延長することも分かっています。

これらの治療は基本的には外来通院で行うため、患者さんの日常生活への影響を抑えることができ、最近は単剤で投与されるTAS(タス)-102、レゴラフェニブといった比較的副作用の少ない薬剤も登場し、治療の選択肢は増えています。

薬剤の選択や治療スケジュールは、患者さんの年齢や全身状態、希望などを考慮して、担当専門医と相談しながら進めます。また、化学療法と並行して、抗がん剤や分子標的治療薬の副作用に対する予防や治療、痛みなどの症状への緩和ケアについても、専門スタッフとともに積極的に行っていきます。

更新:2022.03.04