糖尿病性腎症の上手なコントロール法 糖尿病性腎症

徳島大学病院

腎臓内科

徳島県徳島市蔵本町

糖尿病性腎症は、どんな病気ですか?

まず、糖尿病とは、血糖値が異常に高い状態(高血糖)になる病気です。長期間の高血糖はさまざまな合併症を起こします。糖尿病性腎症は糖尿病が原因で腎臓が障害をきたす病気です。

糖尿病性腎症は、初めのうちはほとんど症状が現れませんが、次第に尿の泡立ちやむくみを自覚するようになります。さらに進行すると、むかつきや食欲低下など、いわゆる尿毒症(にょうどくしょう)が現れます。最終的には腎臓の機能が失われ、透析(とうせき)が必要となります(図)。糖尿病性腎症は、透析が必要になった原因として、最も多いことが知られています。さらに糖尿病性腎症の患者さんは心臓病を起こしやすく、進行するほど死亡率も高くなります。糖尿病性腎症を早期にとらえ、治療することが大切です。

イラスト
図 糖尿病性腎症の進行段階

糖尿病性腎症は、どうすれば分かりますか?

糖尿病性腎症は糖尿病の合併症なので、まず糖尿病にかかっていることに気付くことが大事です。初めのうちは症状がないことが多く、健診がよいきっかけになります。糖尿病が疑われる患者さんだけでなく、高血圧やコレステロール異常などの生活習慣病(せいかつしゅうかんびょう)を疑われた患者さんは糖尿病を合併していることがあり、異常を指摘された場合は、速やかに医療機関を受診することが大切です。

最近「かくれ糖尿病」と呼ばれる、健診で異常がないにもかかわらず、糖尿病にかかっている患者さんのいることが注目されています。これを患者さん自身で見つけることは難しく、心配なときには医療機関の受診をお勧めします。医療機関では糖尿病の詳しい検査ができ、血液や尿検査によって糖尿病性腎症の早期診断が可能です。

糖尿病性腎症になると少しずつ病状が進むため、早い時期から治療を始めた方が進行を止めやすく、治癒することもあります。従って、糖尿病性腎症は早期診断がとても重要です。

糖尿病性腎症は、どのようにコントロールしますか?

まずは糖尿病にかからないこと。食べ過ぎないことや日々の運動が大事です。糖尿病や糖尿病性腎症にかかってしまっても、食事や運動は大切です。糖尿病性腎症の主な治療目的は、腎臓がこれ以上悪くならないようにすることと、心臓病にかかりにくくすることです。

糖尿病性腎症の食事療法は、病気の進行具合によって異なります。そのため「先生によって言うことが違う」と話す患者さんの声を聞くことがあります。当院では、患者さんに納得いただけるまで十分に説明するように心掛けていますが、患者さん自身は病状が変われば治療も変わるものだと受け止めていただきたいのです。その内容について簡単に触れます。

写真
写真 外来における図表を用いた腎機能の説明

初めのうちは、ある程度カロリーを控えますが、病気が進むにつれてカロリーを多めに摂取します。タンパク質も控えるべきとされています。病気がある程度進行した患者さんや、高血圧を合併する患者さんは、塩分を1日あたり6~7g程度に控えましょう。ちなみに、市販の弁当などに「ナトリウム量」が書かれているのをご存知ですか?ナトリウム量の約2.5倍が塩分量に相当(例えば、ナトリウム量1gの食品は塩分量2.5gに相当)します。参考にしてみてください。

糖尿病腎症の運動療法は、血糖値を改善するだけではなく、体の動かしやすさや生活の質の向上に役立ち、心臓病にかかりにくくなる可能性があります。ただ、運動療法を控えた方がいい患者さんもいますので、詳しいことはかかりつけの先生に聞くことが大切です。

薬は、高血圧など患者さんの病状に応じて処方されます。病状が進むと水分やカリウムを控えることや、貧血の注射を使うこともあります。このように、糖尿病性腎症は患者さんの病気の状態によって治療が異なります。糖尿病性腎症は患者さん自身と、私たち医療従事者が互いに協力することで、初めて立ち向かえる病気なのです。

更新:2022.03.04