動脈硬化の診断と治療の最前線 動脈硬化

徳島大学病院

内分泌・代謝内科

徳島県徳島市蔵本町

動脈硬化とは?

活動的な日常生活を送るため、私たちの体は常に、酸素や栄養素を必要とします。体の隅々まで酸素や栄養素を運ぶ重要な運搬路としての役割を果たしているのが動脈です。動脈の老化が進行すると、弾力性が失われて硬くなります。また、動脈内にさまざまな物質が沈着して血管内腔(ないくう)や血管壁の構造異常が生じ、血液の流れが滞る状態を動脈硬化と言います。動脈は内膜、中膜、外膜の三層からなっていますが(図)、動脈硬化は①粥状(じゅくじょう)動脈硬化②細動脈硬化③中膜硬化――の3種類に分類されます。

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図 動脈硬化の発症モデル

動脈硬化の原因は?

粥状動脈硬化は、大動脈、脳血管の動脈、心臓に栄養を送る冠動脈など比較的太い動脈に起こる硬化で、動脈の内膜にコレステロールなどの脂質成分を主とする粥腫(じゅくしゅ)(アテローム)が出来て、病態が進行し、徐々に肥厚(ひこう)することで動脈の内腔が狭くなります(図)。その結果として、脳梗塞(のうこうそく)などの後遺症を生じるような重篤な疾患にかかってしまったり、血管の狭窄(きょうさく)が進行していなくても、粥腫が破れると血栓がつくられ、心筋梗塞(しんきんこうそく)を引き起こすことがあります。

一方、細動脈硬化は、脳や腎臓の中の末梢(まっしょう)の細い動脈が硬化して血液の流れが悪くなる動脈硬化です。特に高血圧が治療されずに放置したり、治療が不十分な状態が長く続いた場合に生じます。

動脈硬化の原因になったり、進行させるものを「危険因子もしくはリスクファクター」と呼びます。加齢に加え、脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、高尿酸血症、肥満、運動不足、ストレス、遺伝素因などが挙げられます。これらの危険因子は互いが密接関係にあり、リスクファクターが増えれば加速的に動脈硬化の危険性が高まります。

動脈硬化症予防と早期発見

これらの病気は、発症予防を図ることが一番です。進行する前に発見して、初期の段階で治療することが大切です。

単独の、あるいは複数のリスクファクターを持っていても、無症状の人の中から、動脈硬化症の有無を調べるためには、単に血液や尿検査のほかに、体に負担をかけずに、血管の状態を安全に評価することが必要になります。当院では、早期の動脈硬化症の発見と予防・治療をめざして、アンチエイジング医療センターで、メタボリックシンドローム検診を行っています。検診内容の詳細については、当院ホームページをご覧ください。通常の健康保険を用いた診療で評価も可能です。(http://www.tokushima-hosp.jp/info/circulatory_center.html?view=1&rank_code=center&belong_code=25)動脈硬化症の評価には、主として以下の検査を行っています。

●心電図検査

不整脈や虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)の有無、心臓の肥大、電解質異常などの評価ができます(写真1)。

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写真1 心電図検査

●脈波伝播速度検査

血管壁を伝播する圧力波の速度のことで、主に動脈の伸展性・しなやかさが評価できます(写真2)。

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写真2 脈波伝播速度検査

●血管内皮機能検査

動脈硬化の始まりである血管内皮機能障害をみる検査。血流の刺激で、血管が拡張することを利用した検査です。狭心症などの冠動脈疾患の発症と強く相関することが知られています(写真3)。

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写真3 血管内皮機能検査

●頸動脈(けいどうみゃく)エコー検査

頸動脈は全身の動脈硬化の程度をよく反映し、動脈硬化を起こすと血管壁が厚くなったり硬くなったりします。頸動脈エコー検査は血管の壁の状態や血液の流れ、プラークの有無や大きさの評価をします(写真4)。

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写真4 頸動脈エコー検査

●心臓エコー検査

X線と違って被曝(ひばく)の心配がなく苦痛も伴いません。心臓肥大の有無,左心室の収縮能や拡張能の評価、心臓弁膜の評価をすることによって、心臓疾患の有無や心血管疾患の進展度を予測できます(写真5)。

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写真5 心臓エコー検査

動脈硬化症があった場合は?

いかなる状態においても必要なことは、食事・運動療法・禁煙など生活習慣の改善です。これらが基盤になった上で各リスクファクターへの薬物治療も考慮されます。また、今回ご説明したような検査で詳細に血管の状態を確認し、個々の患者さんの病態に応じた治療が可能になってきます。身体的に障害が残ってしまう可能性のある心筋梗塞や脳梗塞をきたす前に、動脈硬化のリスクを評価し、予防対策を取ることが何よりも重要です。ご不明な点は、当科または、アンチエイジング医療センターにお問い合わせください。

更新:2022.03.04