胸腔鏡手術とロボット手術 肺がん

徳島大学病院

呼吸器外科

徳島県徳島市蔵本町

肺がんとは?

がんの死亡原因は肺がんが男性で1位、女性は大腸がんに次ぐ2位となっています。新たに肺がんが発見される人の数も年々増加しており、今後もこの傾向は続くと予測されています。肺がんの早期発見が増えたことや、治療法の進歩によって、肺がんの予後(医学的な見通し)は以前に比べると良くなってきています。

肺がんの種類には腺(せん)がん、扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん、大細胞がん、小細胞がんなどがあります。喫煙は肺がんの原因になりますが、特に扁平上皮がんや小細胞がんにかかりやすいことが分かっています。タバコを吸わない人の肺がんの多くは腺がんです。肺がんは悪性腫瘍(あくせいしゅよう)なので、がんができた場所で大きくなり周囲に広がるとともに、リンパの流れに沿ってリンパ節に転移し、血液の流れに沿って肺の別の場所や、骨、脳、副腎などに転移を生じるようになります。

肺がんに対する治療法

肺がんに対する治療法には手術、化学療法(抗がん剤や分子標的治療(ぶんしひょうてきちりょう)などの薬による治療)、放射線療法があります。手術が可能であれば、まず手術を考えます。肺がんの進み具合が早い段階の治療は手術だけですが、一定以上進んだ場合は手術後に化学療法を行います。

肺がんに対する外科治療

肺は右肺と左肺があり、右肺は上葉(じょうよう)、中葉(ちゅうよう)、下葉(かよう)という3つの「ふくろ」(肺葉(はいよう))に、左肺は上葉と下葉の2つに分かれています。

肺がんに対する標準的外科治療では、肺がんができた肺葉を切除するとともに、がんが転移しやすい関連するリンパ節を切除します(リンパ節郭清(かくせい))。肺葉切除のほかに、左右どちらかの肺をすべて切除する肺全摘術、肺葉の一部の区画だけを切り取る区域切除、小範囲の肺を切除する肺部分切除といった術式があります。術式の選択はがんの広がりや進み具合、肺の状態や手術を受けるにあたっての体力を考えて行います。

より体にやさしい胸腔鏡(きょうくうきょう)による肺がんの手術

肺がんに対する外科治療の標準的治療が肺葉切除術およびリンパ節郭清であることは先に述べましたが、胸腔鏡による手術が行われるようになって、胸を大きく切らなくて済むようになりました。以前は肋骨(ろっこつ)を1~2本切ることがありましたが、胸腔鏡手術では肋骨を切る必要はありません。

肺の手術時の体位は側臥位(そくがい)と言って、手術する側の胸を上にした真横を向いた体勢で施術します。胸の前方に約4cmの切開を、ほかに約2cmの切開をして手術を行います(図)。従来の大きく胸を切開して行う手術では、術者や助手が直接手を胸の中に入れて手術を行いますが、2cmや4cmの切開創(せっかいそう)では、指が1本から2本しか入れることができず、胸の中を直接見ることもままなりません。このような状況で、従来と変わらない胸の中の手術操作を可能とする胸腔鏡手術は、術者や助手の目の代わりとなる筒状のビデオカメラである胸腔鏡を使って、胸に開けたほかの穴から、握ったり、切ったり、糸を結んだりする器具(鉗子(かんし)など)を胸の中に入れて、胸の外から操作します。手術は、胸腔鏡を通してモニターに映し出される胸の中の映像を見ながら行います。

イラスト
図 肺がんに対する肺葉切除術時の皮膚切開創

ロボットによる肺がんの手術

当科は、2011(平成23)年からロボット(ダヴィンチ・サージカルシステム®)による肺葉切除術を開始しています(写真1)。術者は患者さんから離れたサージョンコンソールで3次元画像を見ながら左右の手でコントローラーを操作します(写真2)。ペイシェントカートから患者さんに覆い被さるように延びたロボットアームと、その先に付いた鉗子や内視鏡カメラを操作して胸腔内で手術を行います。ロボット手術は、より細かい手術操作が可能です。将来的には装置の小型化や簡易化が期待されます。

写真
写真1 ロボット手術
写真
写真2 術者はサージョンコンソールで操作

更新:2022.03.04