女性外来で、打ち明けたくても打ち明けられない悩みに対応 女性泌尿器科疾患

徳島大学病院

泌尿器科

徳島県徳島市蔵本町

頻尿(ひんにょう)、尿失禁に悩む女性の増加

最近、頻尿(1日に8回以上トイレに行くこと)や尿漏れで悩んでいる方から相談が増えています。男性よりも、女性に多い悩みです。40歳代以上の女性の3人に1人が尿漏れを経験しています。トイレが気になって外出したくない、人前でお漏らしをして恥ずかしい思いをした、尿漏れのために好きなスポーツをやめてしまった――などと生活の質を落としている患者さんも多いようです。

テレビや新聞などで、排尿に関する症状について取り上げられる機会も増え、これまでは「年齢のせいだから、仕方がない」「どこを受診したらよいのか分からない」「恥ずかしい」と思っていた多くの女性が泌尿器科を受診されるようになってきました。親しい友人や家族にも打ち明けられなかったという方も少なくありません。

当院では、女性スタッフだけで対応する女性外来を開設し、女性に多い排尿などに関する悩みが少しでも改善されるよう、努めています。

咳(せき)やくしゃみで漏れてしまう腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)

咳やくしゃみ、重たいものを持ったり、運動をしたときなど、お腹に力が入ったときに、漏れてしまうものです。腹圧性尿失禁の9割が出産経験者となっています。妊娠や出産で骨盤底が緩んでしまうことが原因です。骨盤底とは、骨盤の内部で膀胱(ぼうこう)や子宮、直腸といった臓器を支えている筋肉や繊維組織のことを言います。

治療には、骨盤底を鍛える骨盤底筋体操(図1)が有効です。効果が現れるまでには、1か月程度はかかりますので、毎日続けることが大切です。骨盤底筋体操を続けても良くならない方、1日に何枚もパッドが必要な方、スポーツを楽しみたい方などには、手術療法が適しています。

イラスト
図1 骨盤底筋体操〈基本的な姿勢〉/膣から肛門の周辺を締めるイメージで、骨盤の筋肉をすぼめる動作を繰り返します

尿道スリング手術と呼ばれる尿道の下にポリプロピレンでできたメッシュ状のテープを通して補強する手術を行います。テープ周囲に結合組織が増加して、腹圧がかかるときに尿道にくびれができて、尿漏れを防ぎます。

当院では、スリング手術のうち、テープを閉鎖孔に通すTOT(ティーオーティー)手術(図2)を行っています。手術時間は20~30分程度で、合併症も少なく、入院期間も3~4日となっています。術後は、尿漏れに煩わされることなく、快適に過ごすことができます。

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図2 TOT手術

トイレの我慢ができない過活動膀胱

過活動膀胱とは、尿意切迫感(急に尿がしたくなり、我慢が難しい)があり、切迫性尿失禁(我慢ができずに尿が漏れる)や頻尿を起こす病気です。トイレのドアまで待てない「ドアノブ尿失禁」、冷たい水が刺激になる「手洗い尿失禁」がみられます。このような症状があって、腎臓や膀胱にがんや結石、感染症がない場合に過活動膀胱と診断がつきます(表)。

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表 OABSS(過活動膀胱症状スコア)

治療は、尿意を感じてから膀胱に尿を溜(た)める膀胱訓練やダイエット、骨盤底筋体操が有効です。体を冷やさない、水分やカフェインを取り過ぎない、といった生活習慣の改善も大切です。薬物治療が有効で、過活動膀胱のガイドラインでも抗コリン剤と呼ばれる膀胱の収縮を抑える薬とベータ3受容体刺激薬と呼ばれる膀胱を広げる薬が推奨されています。

抗コリン剤は数種類あり、便秘や口が渇くといった副作用も生じるため、患者さんに合わせて処方しています。副作用が少ない貼り薬もあります。ベータ3受容体刺激薬は、閉経後の女性に主に使用しています。

骨盤臓器脱の治療

骨盤底の緩みによって、膣(ちつ)から膀胱や子宮、直腸が脱出してくるような病気です(図3)。陰部にピンポン玉のようなものが触れる、いすに座ると何かが中に入る感じがある、といった症状が起こります。排尿や排便がしにくくなることもあります。

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図3 骨盤臓器脱

海外では、出産した女性の5人に1人が骨盤臓器脱や尿失禁で手術を受ける、との報告もあり、多くの女性に生じています。

治療は骨盤底筋体操が有効です。しかし、程度がひどい場合は、ペッサリーというドーナッツ状の器具を膣から挿入して、臓器が下がらないように押さえる方法があります。定期的に病院で交換したり、ご自身で着脱をしている方もいます。

手術療法は、患者さんの状態に合わせて、膣壁形成術や膣閉鎖術を行っています。今後、メッシュ手術や腹腔鏡下(ふくくうきょうか)での膣仙骨固定術も導入していく予定です。

更新:2022.03.04