生物学的製剤でピンポイント治療 乾癬

徳島大学病院

皮膚科

徳島県徳島市蔵本町

乾癬の症状、原因、種類

乾癬とは、皮膚が赤く盛り上がり、その表面に乾燥した白いかさぶたが付着し、それがフケのようにぼろぼろと剥(は)がれ落ちてしまう皮膚の病気で、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の疾患です(写真1)。欧米で多い皮膚病ですが、近年は生活習慣の変化に伴い日本でも患者さんが増えています。日本では現在、人口の約0.1%、約10万人の患者さんがいるといわれています。原因は、まだ完全には分かっていませんが、ウイルスや細菌によるものではないので、感染の心配はありません。

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写真1 乾癬ができやすいところ

乾癬は症状の違いによって、大きく以下のように分けられます。尋常性(じんじょうせい)乾癬(最も多いタイプ)、関節症性(かんせつしょうせい)乾癬(関節の痛みや炎症を伴うタイプ)、膿疱性(のうほうせい)乾癬(発熱や膿(うみ)を持ち、発疹を伴うタイプ)、乾癬性紅皮症(こうひしょう)(ほぼ全身に赤みが広がるタイプ)などです。

乾癬は命にかかわる病気ではありません。しかし乾癬の患者さんの中には、皮膚の症状や関節の痛みなどによる身体的なつらさだけでなく、人に肌を見られることによる精神的なつらさを感じている人も少なくありません。通院や軟膏(なんこう)を塗るなどの治療の煩わしさを訴える方もいます。治療の目標として症状やライフスタイルに合った治療方法を見つけて、症状の改善、精神的な苦痛の緩和、QOL(生活の質)の向上をめざしています(写真2)。

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写真2 診察風景

症状に合った治療を選択

現在、乾癬の治療は大きく分けて、外用療法(塗り薬)、光線療法、内服療法(飲み薬)、生物学的製剤による治療(注射薬)の4通りがあります。外用療法は、ステロイド軟膏(なんこう)とビタミンD3軟膏の2種類があり、症状に応じて塗り薬を選びます。最も基本的な治療方法で、ほかの3つの治療と組み合わせることもできます。

光線療法は、人工的に紫外線を発疹のある部分か、全身に照射する治療法です。内服療法は主に免疫抑制剤(めんえきよくせいざい)(免疫を抑える薬)とレチノイド(ビタミンA誘導体)の2つがあります。皮膚症状の範囲が広い場合や塗り薬だけでは追いつかない場合に行いますが、副作用に注意が必要で定期的な血液検査も行います。

新しい薬剤が高い効果

最後に、最近登場した生物学的製剤による治療ですが、2015(平成27)年1月現在、点滴で投与する薬が1種類、皮下注射で投与する薬が2種類、計3種類の薬剤があります。乾癬が発症する原因物質をピンポイントで抑えることで、皮膚や関節の症状を速やかに改善する効果があります。なかなか治癒しない爪の病変にも高い効果があります。治療効果は今までの治療よりも抜群によい場合が多く、多数の患者さんの喜びの声を耳にします。

ただ、すべての患者さんに効くわけではなく、難点としてやや高額な医療であることが挙げられます(治療費の補助を受けられる場合もあります)。また多くはありませんが、体の抵抗力低下、感染症にかかりやすくなるなどの副作用が起こることがあり、定期的な検査が必要です。今後、より病気の本質をターゲットにした、さらに副作用が少ないと予想される薬も出る予定です。当院では、このような新しい薬の治験(ちけん)(新薬の有効性・安全性を調べるために行う臨床試験)も行っています。新規の治験が2015年春からスタートしており、尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬の患者さんが対象となります。

日常生活では、食事やたばこなどに注意が必要です。カロリーの取り過ぎや肥満は乾癬が悪化する要因で、バランスの取れた食生活が求められます。

長年、乾癬でお困りの方、過去に乾癬と言われて治療を諦めている方、よろしければご相談ください。門をたたいてみてください。一緒にあなたに合った、より良い乾癬治療をめざしていきましょう。

更新:2022.03.04