安全に全身麻酔をかけるために 全身麻酔
徳島大学病院
麻酔科
徳島県徳島市蔵本町

全身麻酔とは?
手術を受ける患者さんにとって麻酔は必ず必要です。麻酔の方法には全身麻酔、硬膜外麻酔、脊髄(せきずい)くも膜下(まくか)麻酔、そのほかに神経ブロックがあります。麻酔科医は手術の内容や患者さんが抱えている病気などを総合的に判断し、どの麻酔方法が適切か判断します。手術の間、鎮静薬を使用して意識をなくさせる麻酔方法を全身麻酔と言います。当院の手術室で行われている手術の約70%が全身麻酔、または全身麻酔と硬膜外麻酔などの組み合わせです。
全身麻酔は鎮静(眠らせる)だけでは不十分です。鎮静に加えて鎮痛、不動化(動かないようにする)、有害神経反射の防止(手術に伴う反射を抑える)の4つの因子が必要です。麻酔科医は鎮静薬、鎮痛薬、動かなくさせるための筋弛緩薬(きんしかんやく)あるいは痛みを感じる末梢神経(まっしょうしんけい)を遮断する局所麻酔薬を使いながら、手術中の患者さんの血圧や脈拍、尿量など心臓や血液の流れを保つ循環管理、体の中に十分な酸素を送り込むための呼吸管理、手術中、手術後の痛みを和らげて体の負担をなくす疼痛(とうつう)管理を生体情報モニターと呼ばれる一連のモニターを装着して行っています。
これらのモニターには血圧計、心電図、体温計、パルスオキシメーター(指にセンサーを貼り、血中の酸素飽和度を測定する器械)、カプノメータ(呼気中の二酸化炭素分圧を測定する器械)は必須で、状況によって追加されます。手術中、患者さんは眠っていますが、麻酔科医、看護師、臨床工学技士がチームで患者さんの状態を観察して、全身管理を行っています(写真1)。

最近の全身麻酔
麻酔の目的は、患者さんが安全に安心して手術を受けることです。ここ数年間に麻酔薬、デバイス(麻酔に使う道具)および生体情報モニターなどが進歩し、全身麻酔の安全性が増しています(写真2)。鎮静薬、鎮痛薬、筋弛緩薬、局所麻酔薬すべてに新しい薬が出てきました。

全身麻酔に使用する薬は、副作用が少なく、投与するとすぐに効いてきて中止するとすぐ切れる薬が開発されています。そのため、手術中は麻酔薬を投与し続け、手術が終わり投与を中止すると、すぐ覚めるようになっています。当院では、このような新しく開発された副作用が少なく、作用時間の長い局所麻酔薬で鎮痛を行うことで全身麻酔からはっきりと覚醒し、痛くない状態をめざしています。
全身麻酔中は自分で呼吸ができなくなるので、意識がなくなってから人工呼吸を行うチューブを口から気管に挿入する必要があります。チューブの挿入には器具を使いますが、まれに挿入が困難な場合があります。その場合は適切な呼吸ができず非常に危険です。近年、技術の進歩で新しいデバイスが使用できるようになりました。
当院は挿入困難な場合が予想されるときは、積極的に新しいデバイスを使用して安全に努めています。また、練習用の人形を用いて、若手医師らにチューブ挿入の訓練を徹底して行い、全員が安全な手技を行えるように努力しています(写真3)。

生体情報モニターも最近の技術革新で、その性状が大きく進歩しています。当院は高性能の生体情報モニターを使用し、新しく開発されたモニターは積極的に導入するようにしています(写真4)。そうすることで、患者さんの体の変化をいち早く察知し、早めに対処するようにしています。

全身麻酔を受ける方に
当院では手術を受けるすべての患者さんに、麻酔科医が術前診察を行っています。全身麻酔をする場合は、手術の前に血液検査、心電図検査、胸部X線写真などの検査を受けてもらいます。その結果などをチェックした後、患者さんから、既往歴や服用している薬の内容、アレルギーの既往などを聞きます。その後、身体診察を行い、麻酔の説明をします。そのときに、手術の前にいつまで食べたり飲んだりできるか、服用している薬は手術の日に飲むのか飲まないのか、など説明しますので安全のために指示されたようにしてください。
もし、麻酔のことで分からないことや不安なことがあれば、麻酔科医の術前診察のときに遠慮なく聞いてください。
更新:2022.03.04