治療抵抗性統合失調症の治療 統合失調症

徳島大学病院

精神科神経科・心身症科

徳島県徳島市蔵本町

多彩な精神症状が表れる統合失調症

統合失調症は、幻覚や妄想などの症状(陽性反応)が出たり、感情が平板になったり意欲が低下する(陰性反応)、認知機能障害、抑うつや不安などの感情症状など、多彩な症状を認める病気です。

生涯で発症する率は、人口100人に1人よりわずかに少ない程度で、一般的には青年期から成人早期に発症します。

治療の基本は抗精神病薬を使った薬物治療で、それに加えて、病気の回復や程度に応じた精神療法やリハビリテーションが行われます。

抗精神病薬は、大きく分けて定型(従来型)抗精神病薬と非定型抗精神病薬(新規型)に分類され、一般的には非定型抗精神病薬が第一選択で、原則として、単剤(1種類の薬)で治療を行います。

非定型抗精神病薬の長所は、定型抗精神病薬に比べ、日常の動作がスムーズにできなくなる障害である錐体(すいたい)外路症状が少なく、陽性症状には同等の効果を持ち、陰性症状や、抑うつや不安などの感情症状、および認知症状に対しては、より優れた効果を持つとされていることです。

現在、国内で使用できる非定型抗精神病薬はリスペリドン、ペロスピロン、ブロナンサリン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール、そしてパリペリドンの7種類(いずれも一般名)があり、当院は、これらすべてを使用しています。

薬の効果が表れない治療抵抗性の症例も

統合失調症のなかには、「統合失調症の診断が確定していて、かつ数種類の抗精神病薬を十分な期間、十分な量を投与したにもかかわらず、十分な反応を示さない症例」である治療抵抗性統合失調症があります。通常、有効な抗精神病薬を投与しても改善がみられない「反応性不良」と、コントロール不良の錐体外路症状などの副作用によって十分な量の抗精神病薬を投与できない「耐用性不良」の2つに分類されます。

治療抵抗性の症例に対する有効な薬・クロザピン

治療抵抗性統合失調症の治療は、特徴が異なる抗精神病薬へ切り替えると、精神症状が改善することがあるため、原則として、性質の異なる幾つかの薬物を単剤で試します。もし、非定型抗精神病薬が未使用であれば使ってみます。非定型抗精神病薬を適量の定型抗精神病薬に切り替えて精神症状が改善することもあります。いずれにも反応しない患者さんに対して有効性が証明されている唯一の抗精神病薬がクロザピン(一般名)です。

クロザピンは、国内では治療抵抗性統合失調症治療薬として、2009年に承認・販売開始となり、クロザリルという製品名で発売されています。

クロザピンには好中球が極端に減少し、感染症を起こしやすくなる無顆粒球症(むかりゅうきゅうしょう)や、痙攣(けいれん)、高血糖などの重篤な副作用が報告されており、国内ではその適応や使用方法に厳しい基準が設けられています。そのため、クロザピンは、国内の適応患者さんの具体的な選択基準があります(表)。

表
表 治療抵抗性の基準表

その基準を満たした患者さんに対して、クロザピン導入の際には、規定の文書を使った説明と文書同意が必要であり、クロザピン使用にあたっては医療機関、医療従事者および保険薬局ならびに患者さんの「クロザリル患者モニタリングサービス(Clozaril Patients Monitoring Service:CPMS)」への登録が必要です。副作用の早期発見・早期対応のため、原則としてクロザピン投与開始後18週までは入院治療を行い、初めの26週は週1回、その後は2週に1回血液検査を実施します。

当院は、県内でクロザピンをいち早く導入し、これまでに10例以上の治療抵抗性統合失調症患者さんに治療経験があり、血液内科医や内分泌・代謝内科医と連携して安全に治療を行っています。

重症な人には「電気けいれん療法」も

ほかに、重篤な緊張病症状、自称・自殺・他害の切迫、薬物不耐性などの場合に適応になる「電気けいれん療法」があります。この治療は、薬物治療に反応しない重症の精神病症状にも有効なことがあり、当院では、治療抵抗性統合失調症患者さんに対する治療法の一つに電気けいれん療法を行っています。

更新:2022.03.04