前立腺がん・子宮がんに対する低侵襲治療 小線源治療

徳島大学病院

放射線治療科

徳島県徳島市蔵本町

体に負担の少ない治療

小線源治療とは小線源と呼ばれる放射性物質を密封した小さな金属カプセルを病変に可能な限り近接させることによって、放射線照射を行う方法です。小線源治療の利点は①病変に放射線を集中させ、周囲の正常組織に当たる放射線量を減らすことができる②小線源を病変内部や病変の近くに固定できるので、臓器の動きによる影響を受けにくいことです。

小線源治療の治療部位は、子宮・膣(ちつ)・口腔(こうくう)・皮膚・咽頭(いんとう)・乳腺(にゅうせん)・前立腺(ぜんりつせん)・気管・食道・胆管などがありますが、その中でも当院では子宮と前立腺に対する治療を多く行っています。

小線源治療の歴史は古く、1898(明治31)年のキュリー夫妻によるラジウムの発見に端を発し、1902年には初めてのラジウムを用いた小線源治療が行われた記録が残っています。その後、技術の進歩とともに改良を重ね、近年は画像誘導を使った高精度な線源配置や線量評価が可能となりました。この画像誘導小線源治療はCTやMRI、超音波画像などを使って小線源治療を行う方法で、標的となる腫瘍(しゅよう)と周囲の正常臓器を判別して必要な部分にしっかりと放射線を照射しつつ、正常臓器への照射を最小限に抑えて副作用を抑制する理想的な線量分布を実現します。

小線源治療は線源の挿入方法や線量率によって分類されます。アプローチの方法には組織内に直接小線源を刺入する組織内照射(舌がんや前立腺がん)と、体腔内に線源を挿入する腔内照射(子宮頸(しきゅうけい)がんなど)、皮膚や粘膜の上に線源を配列する貼付照射があります。また、用いる放射性物質の種類によって短時間で強い放射線を当てる高線量率小線源治療と比較的長い時間をかけてゆっくり放射線を当てる低線量率小線源治療に分かれます。

子宮頸がんに対する小線源治療

子宮頸がんの治療には、外部照射(所属リンパ領域を含めた全骨盤照射)と小線源を使った腔内照射を併用します。小線源治療時には子宮内に1本のタンデム、膣内に2本のオボイドと呼ばれる細い管状のアプリケーターを挿入し、X線撮影で位置を確認します。治療計画用コンピューターで計算し、遠隔操作で小線源を幾つかのポイントに数秒~数分停止することによって、腫瘍に体内から集中的に効率よく放射線を当てることができます。治療時間は1時間半から2時間程度です。当院ではリモートアフターローディングシステムによって、イリジウム(Ir-192)を使った高線量率小線源治療を行っています。

従来、2次元治療計画で良好な局所制御率が得られてきましたが、2013年から画像誘導小線源治療を開始しました。画像誘導小線源治療では、アプリケーターを留置した状態でMRIやCTを撮像し、それを基に3次元画像データを応用した治療を行います(写真1)。CTやMRIを利用すると子宮の近くにある臓器(膀胱(ぼうこう)・直腸・S状結腸・小腸)が判別できるので、これらの臓器に対する不必要な線量を減らすことによって副作用の軽減を図ることができます。

写真
写真1 子宮頸がんの画像誘導小線源治療の線量分布図
子宮頸がんに対する画像誘導小線源治療の治療計画画像です。膀胱(黄色矢印)や直腸(青色矢頭)にあたる実際の放射線の量を評価することができます

前立腺がんに対する小線源治療

前立腺がんに対する根治治療の選択肢として手術と放射線療法があり、放射線療法には前出の強度変調放射線治療(IMRT)などの外部照射と小線源治療があります。小線源治療は、前立腺にアプリケーターを一時的に留置して行う高線量率小線源治療と小線源を前立腺内に永久留置する低線量率小線源治療の二つの方法がありますが、当院では低線量率小線源治療を行っています(写真2)

写真
写真2 前立腺への小線源治療後のX線写真
前立腺に対して小線源(矢印)挿入後に撮影したもの。I-125のチタンカプセルが、X線写真では前立腺内に整然と並ぶ白い粒として認められます

低線量率小線源治療は、泌尿器科と協力して放射性ヨウ素(I-125)が密封された5㎜くらいの小さなチタンカプセルの小線源を前立腺の大きさによって50~100個程度挿入します。このカプセルは永久に前立腺内に残りますが、1年後にはカプセルから出る放射線の量はほとんどゼロになり、体外に出る放射線の量も非常に弱いので周囲の人への影響はありません。

低線量率小線源治療は低リスク群に分類される前立腺がんに推奨されていますが、中リスク群の症例に対しても有効な治療法です。また、IMRTやホルモン療法を併用することで高リスク群の症例にも適応できます。この治療の利点として、手術をしないで十分に根治を望めることですが、頻度は低いものの頻尿(ひんにょう)などの副作用を生じることがありますので、どの治療法を選択するかは、担当医や放射線治療医と十分に相談してください。

更新:2022.03.04