コンピューター支援による治療(デジタルデンティストリー) 補綴歯科

徳島大学病院

そしゃく科

徳島県徳島市蔵本町

歯科補綴治療とCAD(キャド)/CAM(キャム)

虫歯などで歯の一部がなくなってしまった場合、あるいは歯周病などで歯が抜けてしまった場合に、人工の材料を使って元の歯の形態や機能を取り戻す治療方法を「補綴(ほてつ)歯科治療」と言います。一般的に「詰め物(専門用語ではインレー)」や「被せ物(専門用語ではクラウン)」と呼ばれている治療方法は、少なくても歯根(歯の歯ぐきに埋まっている部分)が残っているときに適応される方法です。

歯が歯根から抜けてしまった場合でも、抜けた歯の本数に対して十分な歯がその両隣にあれば、「橋渡し(専門用語ではブリッジ)」と呼ばれる治療方法が適応できます(図1)。これらは歯科技工士によってオーダーメードの手作りで製作され、「図2」のように、さまざまなステップを経て完成します。

イラスト
図1 補綴治療の種類
フローチャート
図2 CAD/CAMを用いた補綴治療の製作過程

CAD/CAMとは、Computer Aided Design/Computer Aided Manufacturingの頭文字を取った略語であり、「コンピューター支援による設計・製作システム」と訳されます。これは、コンピューター上で設計したデザインを実体化させることができる技術であり、さまざまな一般産業界で広く使われています。皆さんもCAD/CAMシステムの一部である3次元スキャナーや3次元プリンターなどをテレビや雑誌などで見聞きしたことがあるかもしれません。

このCAD/CAM技術は、近年、歯科治療にも盛んに応用されるようになり、補綴装置(クラウン、ブリッジ、義歯など)の製作過程で、「図2」のように歯科技工士や歯科医の仕事の一部をCAD/CAMで代替することで、コンピューターを用いた補綴装置の製作が可能になりました。

CAD/CAMによる補綴治療の特徴

CAD/CAMを取り入れたことによって、補綴装置に新しい材料が使えるようになりました。その一つが、「ジルコニア」です。

ジルコニアとは、ジルコニウム(原子番号40)の酸化物のことで、正式名称を二酸化ジルコニウムと言います。ジルコニアは、通常の状態では非常に高強度の白色の固体で、「白い金属」とも呼ばれています。また、生体との親和性にも優れ、整形外科領域では人工関節にも使われています。

「白い・硬い・生体親和性が高い」と、ジルコニアは補綴歯科治療に有利な特性を備えているのですが、一方で融点(個体が液体になる温度)が約2700℃と非常に高いため、一般的な歯科技工所で加工することが難しいことから、補綴歯科治療には使われることはありませんでした。

しかし、CAD/CAM技術によってジルコニアの塊から補綴装置を「削り出して製作する」という方法が可能になり、歯科用貴金属の高騰という社会背景も相まって近年では盛んに使われるようになりました(写真)。

写真
写真 ジルコニアを使った補綴歯科治療
ジルコニアにセラミックを焼き付けた補綴装置を使うことで、自分の歯のような非常に美しく、かつプラークの付着しにくい清潔な治療を行うことができます

CAD/CAMによる歯科治療の現状と将来性

前述したジルコニアを使った治療は自費診療ですが、2012(平成24)年4月からの小臼歯部に限り白色の複合材料を使ったCAD/CAM治療が保険治療に導入されました。将来的に、この適用範囲は拡大され、いずれは保険治療の範囲内でも金属を全く使用しない「メタルフリー」治療を行えるようになるかもしれません。

また、補綴歯科治療の一つである「入れ歯(専門用語では義歯(ぎし))」の一部もCAD/CAMによって製作することができ、現在、私たちの教室では、その適応範囲を広げるための研究を行っています。口腔外科領域では、手術の補助装置や術前資料の製作などにもCAD/CAMが使われて、CAD/CAMは歯科治療のさまざまな分野で活用されています。

このように、CAD/CAMは歯科治療に関する製作物全般に応用できる可能性のある、非常に将来性の高い技術であり、今後も患者さんや医療従事者が受ける恩恵は、さらに拡大していくでしょう。

更新:2022.03.04