インプラント治療の実際 インプラント

徳島大学病院

口腔インプラントセンター

徳島県徳島市蔵本町

歯を失うと・・・

年齢を重ねると、歯周病や歯根が破折して歯を失うことが多くなります。歯を失ってそのままにしておくと、隣の歯が倒れてきたり、噛(か)み合う対の歯が伸びて、歯並びや噛み合わせが崩れてきます(図1)。

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図1 歯を失うと歯並びや噛み合わせに影響

そうならないためには、なくした歯の形と機能を回復させる治療が必要になります。これを補綴(ほてつ)歯科治療と言い、ブリッジや入れ歯、インプラントなどの方法があります。

ブリッジは失くした歯の両隣の歯を削って連結した歯冠(しかん)(口腔(こうくう)でみえる歯の部分)を被せる方法で元の歯並びに近い状態になりますが、歯を傷めることにもなり、片方の支台となる歯がない場合はできません。入れ歯は顎(あご)にきちんと合っていないと痛みが出やすく、噛む力は元々の歯より弱くなります。

インプラント治療とは?

インプラント implant は、しっかり埋め込む、移植するという意味で、歯科では人工歯根をインプラント体と呼びます。インプラント体の標準的な大きさは直径約4mm、長さ10~13mmで、金属のチタンが使用されます。チタンは骨と結合(オッセオインテグレーション)する性質があり、体内に取り入れてもアレルギーを起こしにくい、生体親和性の高い安全な材料です。

インプラント治療とは、このインプラント体を歯が抜けた部位の顎の骨に埋め込み、歯冠を取り付ける治療方法で、「ほかの歯に負担がかからない」「しっかりした噛み心地の良さ」と「自然な見た目」が利点です。

一方で、手術が必要で、治療期間も長くかかり、自由診療(保険適用外)であることから治療の負担は大きくなるので、治療内容について十分な説明を受けて、理解した上で治療を受けることが重要です。

インプラント治療をする前の準備

インプラント体を埋め込む部位には相応の骨の量が必要になります。治療の前には、口腔内の診査とともにX線検査を行います。CT検査では顎の骨の形が詳しく分かります。骨の量が少ない場合には、骨移植や人工の骨補填材を使って増やす方法も計画します。

また、一般の手術と同様に血液検査をします。安全に治療を進めるために、高血圧や糖尿病、骨粗しょう症などがある場合は、かかりつけの内科医に照会して健康状態を把握します。

そして、歯を失った部分だけではなく、残っている歯のう蝕や歯周病の治療、歯磨き指導によって、口全体の状態を整えておく必要があります。

インプラント治療の流れ

インプラント体を埋入する手術は、手術室で血圧などをモニターで管理しながら行います。手術に対する不安や緊張感を抑えて円滑に行うために、希望に応じて鎮静麻酔法を利用しています。

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写真 インプラント埋入手術

基本的な手術は2回行います。1回目は、口腔内への麻酔によって痛みを感じない状態で歯肉を切開し、顎の骨に穴を開けてインプラント体を埋め込み、歯肉を元通りに縫合して終わります(図2)。

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図2 インプラント体の埋入(一次手術)

埋入後の2~4か月間は、インプラント体と周囲の骨が強固に結合するための治癒の期間で、そのままの状態で過ごします。2回目は、再び麻酔をして歯肉を切開し、インプラント体のねじ穴に支台(アバットメント)を連結して、歯冠(上部構造)を取り付けていきます(図3、4)

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図3 支台(アバットメント)の連結(二次手術)
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図4 歯冠(上部構造)の装着

インプラントは元々の歯と噛む感覚が異なるので、まずはプラスチック製の仮歯を装着して数か月ほど慣らした後で、しっかりとした耐久性のある陶材製や金属製の歯冠を作り、装着しなおします。

治療が終わってからも定期的なメインテナンスが大切です。インプラントの周囲が不潔なままだと周囲炎になる恐れもあるので、担当医によるチェックとクリーニングを受けるとともに、自身でも丁寧な歯磨きを心掛けて良好な口腔衛生を保つことがインプラントを長持ちさせることにつながります。

更新:2022.03.04