さまざまな保存的治療に取り組む 顎関節症・非歯原性歯痛
徳島大学病院
かみあわせ補綴科
徳島県徳島市蔵本町

口を開けると顎(あご)が痛い(顎関節症)、問題のない歯が痛い(非歯原性歯痛)
顎関節症は口を開けると顎の関節や筋肉が痛い、口を大きく開けにくい、顎を動かすと耳の前でカクカク、ジャリジャリなどの音がするという症状があります。患者さんの大半は女性ですが、男性にも発症する病気です。顎関節は、頭の骨のくぼみに下顎の骨の突き出た部分がはまる構造になっていて、その間に関節円板(軟骨)があります(図1)。関節円板がずれると口を開閉するときに音がしたり、口が開けにくくなったりします(図2)。下顎には口を開け閉めする筋肉が付いていて、それらが筋肉痛を起こすことも多くあります(図3)。さらに、顎の痛みに加えて、頭痛、肩こり、耳の痛みなどが同時に起きることもあります。



顎関節症の原因はさまざまですが、日常的に上下の歯が当たっている、仕事などに集中しているときに歯を噛(か)みしめている、寝ているときに歯ぎしりをしている、などが主な原因として考えられます(図4)。昼間、無意識に上下の歯を噛みしめている人は夕方になると顎が痛くなり、夜中に歯ぎしりをしている人は起床時に痛くなることが多いようです。

歯ぎしりは精神的なストレスの多い日常生活、寝るときの姿勢、上下の噛み合わせが悪いことなどで発症する可能性があります。
非歯原性歯痛は、むし歯や歯周病などの問題がない歯が痛くなる病気です。顔の筋肉や神経の問題、頭痛、副鼻腔(ふくびくう)の問題、心臓疾患などによって発症する可能性があります。症状はいろいろで、原因の病気によって異なります。
問診、触診、画像検査などで診断
顎関節症や非歯原性歯痛の検査は、医師・歯科医師などによる聞き取り検査が最も重要です。ほかの病気と同じですが、現在の症状、発症の時期・きっかけ、時間的な経過などの情報が診断には有効です。加えて、顎関節や顔面の筋肉を触って、痛みや顎関節音があるのかの確認を行います。X線検査やMRI検査(磁気検査)などで、詳しい検査を行うこともあります。

顎関節症の原因を明らかにするために、目を閉じてボーっと口を閉じたとき、上の歯と下の歯が当たっているのかを確認したり、日常生活の様子なども尋ねたりします。
顎や顔の筋肉が痛い場合、顎関節症や非歯原性歯痛ではなく、顎関節脱臼、腫瘍(しゅよう)、骨折、骨の過形成などということもあり、検査も必要となります。
保存的治療とは?
顎を動かす筋肉(顔面部の筋肉)が痛い人は、筋肉を温めたり冷やしたりすることで、血流の回復を図ります。食事中に痛みのある人は、堅い物を食べないことや長時間の食事をしないことを実践してもらいます。筋肉に痛みのある人や、口が開けにくくなって長期間経過した人は、口を開けるストレッチを行います。
このストレッチは親指で上の前歯を押し上げ、人差指で下の前歯を押し下げて6秒間キープします。あるいは片手を上の歯に当て、もう一方の手を下の歯に当てて、開口ストレッチをします。この運動を6回1セットとして、1日に3~6セットを行います。できるだけ精神的なストレスの少ない生活をめざすことも大切です。
食事以外では、上下の歯を接触させないようにするために「歯を離す」「顎を楽にする」などのメモを目につく所に多く貼り、そのメモを見たら、腹式呼吸をすることで、歯の接触を離すようにすることも良いようです。
顎関節の痛みが強い人には、鎮痛薬を処方することもあります。睡眠時に歯ぎしりをしていると考えられる人にはマウスピースを処方して、寝るときにつけてもらいます。強い痛みが長期間続く人には、顎関節への注射、そのほかの薬の処方、ボツリヌス毒素注射なども当院では行っています。
非歯原性歯痛に対しては発症原因を明らかにして、それらに対する治療を行う必要があります。
更新:2022.03.04