生涯を健康な歯で過ごすためにー小児期の大切さ 小児歯科

徳島大学病院

小児歯科

徳島県徳島市蔵本町

健康を考えるとき、最後まで残ってほしい体の機能はなんでしょうか。おいしく食事ができること、楽しく会話ができること……やはり、お口の健康の位置づけは、かなり高いものだと思います。お口の健康が全身の健康へ与える影響は大きく、ずっと健康であってほしいと願うものです。生涯にわたってお口が健康で過ごせるかどうかは小児期にかかっていると言っても過言ではありません。ここでは小児歯科が担う役割について知っていただければと思います。

むし歯と歯周病の予防は、小児期から

歯科の2大疾患はむし歯と歯周病です。むし歯を予防する方法として、歯磨きをすること、甘い物の取り方に注意することは広く理解されるようになってきました。しかし、強い歯を育成する上で特に注意を要する期間があることをご存知でしょうか。

まず、大人の歯(永久歯)のむし歯について少し思い出してみてください。永久歯にむし歯ができて、歯科医院によく通った時期はいつ頃だったでしょうか。多くの方は小学生時代ではないでしょうか。歯は顎(あご)の中で完成して出てくるのではなく、口の中に出てきた後、外からフッ素をはじめとしたミネラルを取り込んで成熟し、ようやく完成します。人間の歯は、立派な歯になるまでに、口の中に出現してから2~3年かかると考えられています。つまり、歯の生え始めから3年間は歯がとても弱く、むし歯になりやすい時期ということです。

従って、永久歯が生えそろう小学生から中学生の時期にしっかりとしたむし歯予防を行うことが、一生を強い歯で過ごせるかどうかの鍵(かぎ)とも言えるわけです。小児期は成長発育の盛んな時期で、学習能力も非常に高い時期です。この時期に、しっかりとした歯磨きの仕方と習慣を身に付けさせることが大切になります(写真1)。

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写真1 ブラッシング指導

子どもの歯(乳歯)についてはどうでしょう。乳歯も同様に口に出現してきてからの2~3年がむし歯予防に大切な期間になります。保護者の食生活習慣がそのまま子どもの食生活習慣の基礎となりますので、特に、子どもの時期は注意が必要です(写真2)。さらに、乳歯の下では既に永久歯が育ち始めています。乳歯にむし歯を作って顎まで炎症が進むと、永久歯の成長や歯並びにも影響が出てきます。従って、乳歯にむし歯を作らないこと、乳歯のむし歯を確実に治療することが強い永久歯を育てる秘けつにもなります。

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写真2 母親への指導風景

小児期に培われた生活習慣が青年期、成人期の歯周病とも深くかかわってきます。また、全身の健康に与える影響も大きいことが分かってきました。私たち小児歯科医は歯の健康を通して規則正しい生活習慣の獲得の支援も行っています。

小児歯科医療の特殊性

子どもを対象とした小児歯科は、成人と大きく異なる点があります。成人の場合は、体に起こる異変に自ら気付き、自ら病院を受診しますが、子どもの場合は自らの異常を早期に訴えるケースは少なく、保護者や第三者による気付きで異常が発見されることになります。

そのため病気が大きく進行してから発見されることも少なくありません。病気が進行してからの治療になれば、治療を受けるお子さんの負担は、より大きいものになります。むし歯や歯周病は十分に予防できる病気です。お子さんが万が一病気になったとしても軽い治療で済めば、負担もより小さくて済みます。

多くの病気がそうであるように、予防できる病気は予防に努め、口の異変も症状が現れないうちに発見し、対処する方が子どもにとって最も望ましいことです。小児歯科では予防を中心に、お子さんの成長発育に併せた口の健康管理を行っています(写真3~6)。最近ではお子さんの「食」に関する悩みを抱えた親御さんたちも増えてきました。食べない、噛めない原因にお子さんのお口の中に存在する諸問題が関係していることもあり、望ましいお口の機能や噛み合わせを獲得させるための治療も積極的に行っています。

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写真3 5歳男児。最初、歯磨きは得意ではありませんでした。歯についている赤色は磨き残しです
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写真4 練習を繰り返すことによって、自分で上手に磨けるようになりました
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写真5 初診6歳男児。全部の乳歯がむし歯でした
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写真6 乳歯のむし歯の治療と永久歯のむし歯予防をがんばりました。中学生の今、永久歯にむし歯はありません

未来を支えるお子さんが健康なお口で成人を迎えることができるように、お手伝いをしていくのが小児歯科の使命です。お気軽にご相談ください。

更新:2022.03.04