口の乾きの原因と治療 口の乾き

徳島大学病院

口腔内科

徳島県徳島市蔵本町

どうして口が乾くのですか?

口が乾く原因には幾つかあります。多くは唾(つば)の量が減ることによって起こってきます。唾は健康な人であれば1日あたり1~1.5ℓ出ています。個人差はありますが、この量より減ってくると口の乾きを感じ始めます。

この唾は唾液腺(だえきせん)という臓器で作られます。唾液腺は大唾液腺(耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん))と口の中に数多くある小唾液腺からできています(図)。そして唾を実際に作っているところは、唾液腺の中の腺房細胞(せんぼうさいぼう)という場所になります。口の乾きを感じる人の多くは程度の差はありますが、腺房細胞が壊れて死んでいく様子がみられます。腺房細胞が壊れる原因に「加齢」や、自己免疫疾患として知られています「シェーグレン症候群」、口の中や周辺にできた「がん」の治療の際に使われる放射線治療が挙げられます。

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図 唾液腺の仕組み

口の乾きを起こさないための方法の一つに、腺房細胞が壊れるのを防ぐ方法が考えられます。唾の量は唾液腺を支配している神経によっても左右されます。副交感神経は唾の出る量を増やしますから、薬などで副交感神経を低下させる薬を飲んでいる場合、口の乾きを感じることがあります。

口が乾くと、どんな症状が現れますか?

口の乾きとともに、口の中が燃えるような感じがする(灼熱感(しゃくねつかん))、食事の飲み込みが困難になる(摂食・嚥下障害(えんげしょうがい))、味を異様に感じる(味覚障害)、かすれ声(嗄声(させい))、入れ歯が合わない(咀嚼困難(そしゃくこんなん))などがみられます。

シェーグレン症候群は進行性の病気なので、これらの症状がひどくなることもあります。また、シェーグレン症候群の患者さんの約5%は悪性B細胞性リンパ腫(しゅ)に進行することがあるため、注意深い観察が必要です。

シェーグレン症候群とは、どんな病気ですか?

シェーグレン症候群は主として、口の乾き(ドライマウス)や目の乾き(ドライアイ)を生じる病気で、まだ治療法が確立されていない指定難病の病気です。中年以降の女性に圧倒的に多くみられます。現在、完全に治る治療法がないため、患者さんに対する治療法は、症状を少しでも和らげる対症療法になります。

例えば、人工唾液や口腔内保湿(こうくうないほしつ)ジェル、トローチ、無糖のガム、漢方薬などが用いられます。最近、唾液腺の神経を刺激することで唾の量を増やす薬(ピロカルピン製剤)も販売されていて、一定の効果が確認されています。ただ、病状が進行することで薬の効果が弱まってくるという心配もあります。従って、この薬以外の働きを持った別の薬も必要とされます。

シェーグレン症候群に対する新しい薬は?

シェーグレン症候群の患者さんの唾液腺組織を顕微鏡で観察した場合、唾を作る腺房細胞がなくなっていることが多くみられます(写真1)。つまり、先ほど示した神経を刺激する薬の効果が薄れてくるのはこのためです。より効果的な治療法を考える場合、腺房細胞が死なない治療法が良いことが分かります。

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写真1 シェーグレン症候群の特徴的顕微鏡像

私たちはこれまでの研究によって、ある種の薬にこの作用があることをつかみ、現在、当院臨床研究倫理審査の承認を得て、臨床研究を行っています(写真2)。既に一部、治療の有効性について、学術雑誌に報告しています(写真3)。今後も患者さんに役立つ治療法を開発していきたいと考えています。

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写真2 口腔内科スタッフ
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写真3 シェーグレン症候群の患者さんに対するアルカロイド製剤の治療効果

更新:2022.03.04