悪い嚙み合わせと顎の変形を治す手術 顎矯正手術

徳島大学病院

口腔外科

徳島県徳島市蔵本町

歯並びや噛(か)み合わせの異常

一人ひとりの顔が違うように、歯並びや噛み合わせも一人ひとり違います。それが個性の一つになっていますが、ハリウッドスマイルのようなきれいな歯並びと噛み合わせは誰もがあこがれるところです。

歯並びや噛み合わせの異常は、口を開けると顎(あご)が痛い、カクカクする、口が開きにくいなど「顎関節症(がくかんせつしょう)」の原因となるだけではなく、頭痛や肩こり、耳鳴りなど全身的な症状の原因となることもあります。一般に、歯並びは「歯の大きさと顎の大きさのアンバランス」が原因で悪くなります。このような患者さんは、歯の矯正治療で歯が生えている位置や向きを治すことで、きれいな歯並びと噛み合わせを手に入れることができます。

ところが、噛み合わせの悪い患者さんの中には、歯の矯正治療だけでは治せない方がいます。上顎や下顎が大きく前に突き出ていたり、逆に引っ込んでいたり、顎の形が歪(ゆが)んでいて顔が曲がっていたりと、歯を支えている土台である顎の骨自体に問題がある患者さんです。

このような噛み合わせの異常を「顎変形症(がくへんけいしょう)」と言います。顎変形症の患者さんは顔が変形していることが多く、上手に食べ物が噛めない、話しにくい、口を閉じることができないなど機能的な障害だけでなく、人前に出るのが苦手、歯を出して笑えないなどの心理的な悩みがあり、自分の顔つきに長年コンプレックスを持っている患者さんも少なくありません。

顎変形症の治療

顎変形症の治療は、歯の矯正治療に加えて顎の形を治す手術(顎矯正手術)が必要です。患者さんによって変形の程度はさまざまで、原因も違うため、治療法も違ってきます。重要なのが診断です。X線写真や歯型、顔の写真などから、変形の程度や原因を調べて、それぞれの患者さんに合った治療法を決めます。最近では、コンピューターを使って数mm単位で手術のシミュレーションを行うことができます(図1)。「図1」の左側は手術前の写真、右側は実際の手術と同じように顎を離断して移動させた後の写真ですが、手術前後の顔貌の変化がよく分かります。

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図1 手術のシミュレーション(手術前・手術後)

顎矯正手術は歯の矯正治療だけでは治せない顔の変形も治すことができますが、手術や全身麻酔に伴うリスク、手術後に起こる問題もあります。それらを十分理解して、歯の矯正治療だけを行って顎の変形は治さないで噛み合わせだけを治すのか、それとも手術をして顎の変形と噛み合わせの両方を治すのかを決めなければいけません。ただ、変形が大きい患者さんについては手術でしか治すことができません。

治療計画が決まったら、まず、術後の噛み合わせを想定した歯の矯正治療(術前矯正)を行い、その後に顎矯正手術を行います。顎矯正手術を行う専門科が口腔(こうくう)外科です。顎矯正手術には上顎に対する手術と下顎に対する手術があり、それらの手術を単独、あるいは組み合わせて行います。

例えば、上顎は正常で、下顎が大きく前に突き出ている患者さんには、下顎を小さくして後ろに下げる手術(図2)を行い、上顎が小さく、下顎が大きい患者さんには、上顎を前に出す手術と下顎を後ろに下げる手術を同時に行います。

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図2 下顎を下げる手術

また、顔が曲がっている患者さんには、顎を回転させて対称にするような手術(図3)を行います。このように患者さん一人ひとりに合った手術を選んで行います。術後には、最終的な噛み合わせの微調整(術後矯正)が必要で、治療期間は全部で4~5年かかります。

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図3 顔の曲がりを治す手術

治療後は歯並びと噛み合わせがきれいになって、何でも食べられるようになります。顔の変形も改善されることから、長年、悩んでいたコンプレックスから解放され、性格まで明るくなったという話も聞きます。歯並びや噛み合わせで悩んでいる方は、一度、口腔外科の専門医に相談してみてはいかがでしょうか。

更新:2022.03.04