快適な治療のための歯科麻酔 歯科麻酔
徳島大学病院
歯科麻酔科
徳島県徳島市蔵本町

患者さんの快適性を向上させる麻酔法
歯科治療で患者さんをいちばん苦しめるのは、その痛みや不快感に対する不安ではないでしょうか。一般的に歯科治療では局所麻酔を行います。静脈内鎮静法とは、局所麻酔に加えて精神安定薬や静脈麻酔薬などを点滴で投与することで、恐怖心やストレスを軽減する方法です。
その目的は、ずばり安心と安全性で、患者さんの不安や不快感を和らげ、満足な診療を提供します。患者さんはリラックスして、治療時間を短く感じたり、場合によっては治療中の出来事を忘れてしまいます。
静脈内鎮静法は、全身麻酔と違って処置の間、完全に意識はなくなりません。薬の作用によってウトウト、浅い眠りのような状態になるので、恐怖心や痛みをほとんど感じなくなります。恐怖心が先立って歯の治療が受けられない患者さんをはじめ、快適で安全な歯科治療を希望される患者さん、それにインプラント手術などの小手術を受ける患者さんに対して静脈内鎮静法を行います。
高齢者や高血圧の患者さんにも最適
高血圧症・糖尿病・心臓疾患など全身的疾患のある患者さんは、歯科治療中に緊張や痛みで症状が悪化することがあります。このような患者さんも、静脈内鎮静法によって意識が保たれたまま、緊張がとれてリラックスした状態で歯科治療を受けることができます。
また心電図や血圧計、血液中の酸素の取り込み状態などをモニターしながら歯科治療を行うことで、処置中に体調が急変した場合でもすぐに対処可能で、非常に高い安全性を確保できます。
静脈内鎮静法は、次のような方に適しています。
- 歯科治療に対する不安や恐怖心が強い方
- 歯科治療中に気分が悪くなったことのある方
- 高血圧症、狭心症、糖尿病などの全身的な病気がある方
- 口の奥に器具が入るとすぐに吐きそうになる方(絞扼(こうやく)反射が強い方)
- リラックスして、楽に歯科治療を受けたい方
連携による総合力、バックアップ態勢
歯科治療現場での歯科麻酔科医の取り組みは、あまり一般的に知られていません。四国地方で唯一の歯学部で、専門医のもと十分なバックアップ態勢を整備した当院では、2014(平成26)年に年間260例の静脈内鎮静法の実績があります。
静脈内鎮静法は高齢者や全身性疾患のある患者さんには、治療中の全身管理が可能なことが特に重要な要素と言えます。高齢化や生活習慣病の増加に伴って、今後はますます静脈内鎮静法の必要性が高まり、歯科麻酔科医の必要性、有用性を実感する機会が増えるものと思います。
歯科麻酔科の診療体制と治療方針
当科の業務は、「写真1~2」のように歯科麻酔科外来の診療と、手術部での口腔外科領域の手術、処置の麻酔管理、全身管理に分かれます。


静脈内鎮静法以外には、麻酔ガスを吸入してリラックスさせる方法(亜酸化窒素吸入法)や心電図、血圧計などのモニターを付けた状態で歯科治療を行うモニター管理、局所麻酔薬のアレルギー検査や全身麻酔を行っています。全身麻酔については、主に口腔外科、口腔内科の手術、歯科治療時の全身麻酔を担当しています。口腔外科的疾患のある患者さんの中には、全身麻酔中に気道(空気の通り道)を確保する方法が難しくなることがあり、そのような場合には、高輝度LED光源とカラーディスプレイの付いた最新のビデオ喉頭鏡(こうとうきょう)やファイバースコープを使って、人工呼吸用の気管チューブを挿入する技術を備えています。
得意分野
◆歯科治療時の精神鎮静法、全身麻酔
◆口腔外科手術の全身麻酔
◆歯科治療中の合併症の対応
対象疾患
◆歯科治療に対する不安、恐怖症
◆歯科治療時に障害となる嘔吐反射
◆歯科局所麻酔薬アレルギー
また、私たちは歯科内での院内緊急体制を担っています(写真3)。大学病院で歯科治療中の患者さんが急変した場合、緊急コールを受けて、専門医が診断や治療にあたるシステムとなっています。

更新:2022.03.04