集中治療室( ICU) 重症患者を専門医が24時間態勢で治療
徳島大学病院
救急集中治療部
徳島県徳島市蔵本町

当院の集中治療室(ICU)には院内外から重症患者が入室してきます。院内の重症患者、救急患者、心臓血管外科や移植などの大手術の後や合併症を持つ患者さんの治療を行っています。
院外からの救急患者としては重症の3次救急患者、中毒患者、重症熱傷患者などの治療を行っています。元の疾患や担当科に関係なく生命の危機に陥った場合に治療を行います。
集学治療病棟(東病棟4階)に11床のICUがあります。ICUで働く医師は集中治療専門医と呼ばれ、特別な教育を受けた医師だということはあまり知られていません。
集中治療専門医が24時間ICUにいて、治療にあたるかどうかは病院によってさまざまです。集中治療専門医が24時間対応して、治療を行うICUのことをClosed-ICUまたはHigh intensity ICUと呼びます。このようなICUでは重症患者が助かる率が高くなります。当院のICUは、わが国では数少ないClosed-ICUで、常に集中治療専門医が重症患者の治療にあたっています。
敗血症/敗血症性ショック――世界水準の治療成績
ICUでの治療が必要な疾患はさまざまです。多くの疾患では医学の進歩によって治療成績が向上しています。しかし、世界的にも治療成績が改善しない疾患が幾つかあります。
その代表が敗血症/敗血症性ショックです。細菌感染が引き起こす疾患で治療成績の良い施設でも30~40%の患者さんが死亡します。世界中の集中治療医が協力して、この疾患の治療に取り組んでいます(写真1、2)。早期に診断して的確な治療をできるだけ早く開始することで、多くの患者さんが助かることが分かっています。

的確な診断、治療ができるのは集中治療専門医です。この疾患では、集中治療専門医が24時間体制で治療にあたるICUでの成績は良く、当院のICUでも世界水準の治療成績です。
急性呼吸窮迫症候群(きゅうせいこきゅうきゅうはくしょうこうぐん)(ARDS)に高い実績
この疾患も死亡率の高いものです。体のどこに異常が起きても肺に影響が及びます。もちろん肺炎のように、肺そのものが障害される場合もあります。骨折のように、肺とは関係ないと思われるような疾患でも、重症の場合は肺が障害されることがあります。
特に、肺に疾患がなかった患者さんでも手術や腹膜炎を契機に胸部X像で全体が白くなります(写真3)。CTを撮影しても正常な部分がほとんどありません(写真4)。約20年前は50%以上の患者さんが亡くなっていましたが、少しずつ生存率は改善してきました。しかし、成績の良いICUでも30~40%の死亡率です。


この20年で、生存率が改善した大きな理由は、人工呼吸の方法が変化したためです。肺を膨らませ過ぎないような注意が必要ですが、実践するには人工呼吸管理に習熟した集中治療専門医でないとできません。重症になると、膜型人工肺(ECMO)と呼ぶ方法が必要になり、これを安全に実践できる施設も多くありません(写真5)。

当ICUでは、特別なECMO研修を受けた医師、臨床工学技師が担当し、多くの実績を残しています。
更新:2022.03.04