リハビリの取り組み 体の動きをコンピューターで捉え、リハビリに生かす

徳島大学病院

リハビリテーション部

徳島県徳島市蔵本町

リハビリの目的

ロコモティブシンドローム(ロコモ)という言葉をご存知でしょうか?骨・関節・脊椎・神経などから成るいわゆる運動器は脳や内臓に劣らない重要な臓器であり、運動器の不調は内臓の不調に結びつきます。

リハビリテーション(以下、リハビリ)といえば、麻痺している手足や動きが悪くなった関節に対して、療法士が手足を曲げ伸ばししたり、寄り添って歩いている姿をイメージされると思います。これらは運動器に対する直接のリハビリですが、最近ではこれに加え心臓や肺を患われた方の病気の再発・再燃を防ぐための運動療法もよく行われています。また、抗がん剤治療などで入院が長引いて足腰が衰える方に対して、治療中も運動療法を行い、退院後の生活をより早く元に戻すための手助けを行うのもリハビリの大きな分野になっています。

運動器の健康は体全体の健康に直結します。皆さんがご自身で簡単に診断できるロコチェック(図)がありますので、ぜひとも一度、ご自身でご確認ください。

表
図 日本整形外科学会が提唱しているロコチェック。7つの項目はすべて、骨や関節、筋肉などの運動器が衰えているサインで、このうち1つでも当てはまればロコモの心配があります(ロコモ チャレンジ!推進協議会ホームページよりhttps://locomo-joa.jp/)

当院では、リハビリを受けるにあたり、やる気が出やすいようにできるだけ具体的な目標を持っていただくように努めています。例えば、抗がん剤治療を受けている方では、膝(ひざ)を伸ばす力を定期的に計って、目標値を維持できるようにしています。ここでは、その一環として取り組んでいる体の動きをコンピューターで捉える取り組みをご紹介します。

最新鋭の3次元動作解析装置

お年を召して背中が曲がってくるのは、骨粗(こつそ)しょう症(しょう)が進み背骨の一部がつぶれる、背中の筋力が弱くなる、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)で腰を反らすと脚のしびれが増えるなどの原因があります。体が前かがみになると、膝が曲がり、歩くのが遅くなるだけではなく、胸やお腹が詰まったようになり、肺活量や食欲が落ちてきます。

出掛けるのがおっくうになるとロコモが進行し、悪循環が進みます。腰の手術を受けると、腰を伸ばしても楽に歩けるようになりますが、いったん、ついてしまった習慣はなかなか戻りません。

当院の総合リハビリテーションセンターには最新鋭の3次元動作解析装置があります(写真1)。体中にマーカーを貼り、8台の赤外線カメラで歩いている姿を撮影しコンピューターに記憶させます。ここから歩いている姿を画面上で再現するだけではなく、歩いている最中の膝や足首などの角度、床から受ける力などを解析することができます(写真2)。

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写真1 総合リハビリセンターにある3次元動作解析装置。白矢印が赤外線カメラで、左下は体に貼るマーカーの位置を示します
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写真2 腰部脊柱管狭窄症の方の歩行開始直後(左)と下肢症状が出てきたとき(右)の解析図。体が前傾し、歩幅・手の振りが小さくなり、矢印で示される床を踏みしめる力が弱くなっているのが分かります

ここから、股の硬さ、お尻や背中の筋の弱さなどがはっきりすれば、そこを重点的に指導して、より健康な生活へ早く戻っていただく手助けをすることができます。

膝の十字靭帯損傷(じゅうじじんたいそんしょう)に対する再建術は若いスポーツ愛好家を中心によく行われており、多くの方がもとのスポーツに復帰しています。しかし、同じ状態で復帰したのでは再び同じけがを負ってしまう危険性があります。

これも3次元動作解析をすることによって、靭帯損傷に至った背景にある体の使い方の特徴などを見つけ出し、これを修正して再発の危険性をできるだけ減らす訓練をすることができます。

現在のところ、測定には時間がかかりますので、受診ごとに気軽に評価するというものではありませんが、当院で本格的に治療を受けられる際にお願いする場合があるかもしれません。その際にはご協力のほど、よろしくお願いします。

更新:2022.03.04