口腔がん 口腔がん手術後の口腔機能回復
徳島大学病院
総合歯科診療部
徳島県徳島市蔵本町

口腔がんの手術後の後遺症
歯ぐき、顎(あご)の骨、舌やほっぺたに腫瘍(しゅよう)ができた場合、口腔外科、口腔内科、耳鼻咽喉(じびいんこう)科、形成外科などで検査、治療を受けることになります。治療法は、腫瘍の状態によって異なりますが、抗がん剤による化学療法や、放射線が細胞を殺す作用を利用した放射線治療、手術によって腫瘍を取り除く外科的療法があります。腫瘍が大きい場合、化学療法や放射線治療を行った後、大抵の場合には外科的に手術が行われます。
口の中の手術では、顎の骨や舌、ほっぺたなどの悪い部分を切り取ります。手術の後は、大抵の場合、皮膚や骨を移植しますが、上顎を切り取った場合には、移植することは少なく、上顎に穴が開いた状態で生活することが多数を占めています。
上顎に穴が開いていると、口と鼻とが交通しているため、食べ物が鼻に入り込む、飲み込みが十分できない、鼻から空気が抜けて話していることが分かりにくいなど、日常生活に影響が出ます。下顎や舌の手術後、たとえ移植を行ったとしても、歯を失ったり、舌の動きが悪くなって、上顎を取ったときと同じように食事がしにくい、飲み込めない、しゃべれない、見た目が気になるなど、さまざまな障害が現れ、QOL(生活の質)の低下が起こります。
口腔機能の回復法
手術後の口の機能を回復する一つの方法として手術があります。広範囲に腫瘍などを取った場合は、手術による再建は難しく、多くの場合、入れ歯を使った機能回復が行われます。つまり、手術で切り取った部位を入れ歯で補い、食べ物の飲み込みを容易にします(写真1~4)。会話をするときに、空気が鼻へ抜けるのを防ぎ、言葉が明瞭になります。このような入れ歯を顎義歯(がくぎし)と呼びます。




舌の動きが悪い場合は、上顎と舌の接触を助けるために、上顎に入れ歯を入れることもあります。舌と上顎がきちんと接触するようになり、飲み込みやすくなります。こうした特殊な装置を使用することで、失われた機能(食べる、しゃべる、飲み込む、見ばえ)の回復を図ります。このような治療を顎顔面補綴(がくがんめんほてつ)といいます。
治療の流れ
手術が決まると、手術前に口の中を見せていただきます。その時、口の形をとります。手術後に、口が開きづらく、口の中の形がとれない場合に仮の入れ歯を作るためです。口が大きく開く場合は、手術後1~2週間で口の形をとって、仮の入れ歯を作り始めます。手術前に入れ歯を使用していた場合は、入れ歯を直ぐに改造して、その日から食事や会話をすることも可能になります。
できるだけ退院前に、入れ歯を入れて食事や会話ができるように、口の機能を改善するように対応しています。手術部位は状態が安定するまで半年以上はかかるため、その後、最終的な入れ歯を作ります。
退院後は、口の中の環境を整え、機能回復の状態を確認するために、1~3か月に一度の受診となります。


更新:2022.03.04