がん治療の口腔管理 医科歯科が連携し、がん治療をサポート
徳島大学病院
口腔管理センター
徳島県徳島市蔵本町

周術期口腔機能管理とは?
2012(平成24)年4月、健康保険に周術期口腔(こうくう)機能管理が新設されました。周術期とは、入院から麻酔、手術、回復といった一連の期間を指します。周術期口腔機能管理は、主にがん治療の支持療法と位置づけられています。
周術期になぜ、口腔管理が必要なのでしょうか。手術を受ける患者さんの場合、全身麻酔を行うときや術後に口腔内の細菌や汚れが肺に流れ込み、術後に合併症や感染症を起こすことがあるからです(図1)。頭頸部(とうけいぶ)や消化管の手術を行った場合は、口腔内の細菌が傷に付着することも考えられます。

また、放射線治療や抗がん剤治療を行う場合は、悪い細胞だけでなく正常な細胞もダメージを受けて口腔粘膜炎を起こすことがあり、さらに口腔内の細菌による感染で、症状の悪化を引き起こすことが予想されます。
そのため、これらの合併症を防ぐために医科と歯科が連携して、入院中の口腔管理を専門チームが行い、1日でも早い退院ができるように努めています。
周術期口腔機能管理の流れ
当センターにおける周術期口腔機能管理の流れについて「図2」に示します。

まず、医師、歯科医師から周術期口腔機能管理の依頼を受け、入院前、治療前に口腔内の状態を確認します。むし歯や歯周病などで治療が必要な歯がある場合は、地域歯科医院へ紹介し、治療を行います。入院中は、当センターで口腔管理を行います。
治療や手術前には、歯科医師や歯科衛生士による専門的口腔ケアを行い、口腔内の細菌や汚れを除去します。放射線治療や抗がん剤治療の場合は、口腔乾燥(口の渇き)に備えて、保湿ケアの指導や歯と粘膜の清掃指導、口腔粘膜炎などのトラブルが発生した場合の生活指導についても説明を行います。
手術後や抗がん剤治療などで、外来歯科への受診が難しい場合は、病室訪問によって口腔ケアを行います。入院中、入れ歯が合わない、むし歯による痛みが出るなど、早急に治療が必要になった場合は、当院歯科で応急的に治療を行います。
入院前や退院後もシームレスな(途切れのない)治療の提供
当センターを受診した周術期患者さんについては、口腔内に自覚症状がみられないにもかかわらず、約半数の方に治療が必要な歯が認められています。そのため、入院中だけでなく入院前、退院後も継続して歯科の介入が可能になるよう、地域歯科医院と密な連携を取り、シームレスな(途切れのない)治療の提供に努めています。
現在、当センターでは月間に約100人の新患の周術期患者さんの口腔管理を行っています(写真1~4)。手術予定の患者さんや放射線療法・抗がん剤治療を受ける患者さんに対して、口腔管理を通して、がん治療のサポートを行っています。




さらに、周術期患者さんに対する口腔機能管理(歯科介入)の効果についても臨床研究を進め、より有意義な口腔管理をめざして、スタッフ一同日々努力しています。
周術期口腔機能管理に関する問い合わせは、気軽に口腔管理センター(☎088-633-7369)に相談してください。
更新:2022.03.04