糖尿病・メタボリック症候群 メタボを事前に察知、生活習慣病を防ぐ
徳島大学病院
糖尿病対策センター
徳島県徳島市蔵本町

糖尿病死亡率全国ワースト
徳島県は糖尿病死亡率が全国ワーストの状態が続いています。肥満者の数も全国有数の高い状態が続いています。肥満は糖尿病を起こしやすくします。また、メタボリック症候群(通称、メタボ)という糖尿病予備軍、コレステロールや中性脂肪の異常、高血圧などが同時に進む状態を引き起こします。
糖尿病にしてもメタボにしても、心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳梗塞といった重い病気の原因になるため、なるべく早期に見つけ、生活習慣の改善と必要に応じた薬で治療し、心筋梗塞や脳梗塞に進む事態を防ぐことが非常に重要です。
糖尿病もメタボも元々かかりやすい体質のところに、悪い生活習慣が何年も続き、お腹の中の内臓脂肪が溜(た)まった状態が続くことで発生すると考えられています。しかし、どの程度の生活習慣が安全なのか危険なのか、糖尿病やメタボになりやすい状態になっているかどうかを判定する指標はまだ知られていません。
メタボになりやすい人を判定する指標づくり
そこで当センター(写真1)は、院内外の研究室や製薬企業と協力し、糖尿病、肥満で深刻な状況にある徳島県で、糖尿病やメタボの原因となる生活習慣の解明、糖尿病やメタボになりやすい状態になっているのかどうかを判定する指標づくりをめざしています。約1400人に協力を得て、身体計測や血液検査といった体の状態、食事、運動などの生活習慣が年々どのように変化するか、を調査してきました。

その結果、今は元気な状態でも、4年以内にメタボになっている可能性のある男性を血液検査で見いだす方法を確立しました。血液中には脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンと呼ばれるホルモンが存在します。肥満、特に内臓脂肪が増えるタイプの肥満とともに血液中のアディポネクチンの量が減少すること、アディポネクチンが少ないと糖尿病になりやすく、心筋梗塞や脳梗塞にもかかりやすくなることが知られていました。
しかし、どの程度、血液中のアディポネクチンが減少すると、今は元気でも近いうちに病気になることが予想できるか、といった点については、はっきりした境目となる数字が分かっていませんでした。
当センターの調査の結果、今は健康な状態だったとしても、もし血液中のアディポネクチンの値がある数字を下回ると、4年以内にメタボになる危険性が約3倍になる、ということが分かりました。今のところ、この境目となる数字は男性だけに当てはまり、女性は現在、調査中です。

女性でメタボにならないための指標となるアディポネクチンの数値、また男女ともに、そのほかの生活習慣病にならないための指標となる数値も、これから次々と明らかになってくる予定です。
近年、医療費の増大が著しく、健康保険のシステムの存続が脅かされています。皆さんの支払われる健康保険料も増加の一途ではないでしょうか。病気になってから、いろんな薬を使って治療する場合に比べ、病気にならないための予防にかかる費用は、かなり少ないことが知られています。
特に、糖尿病やメタボといった生活習慣病は、いったんかかってしまうと、完全に治すことは今のところできません。生活習慣病になる前に、病気に向かって進んでいることを察知し、予防することを当センターはめざしています(写真2、3)。


更新:2022.03.04