かっしょくさいぼうしゅ

褐色細胞腫

基礎情報

概要

褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)は、副腎(ふくじん)(※1)の髄質(ずいしつ)(※2)に発生する腫瘍(しゅよう)です。腫瘍からカテコールアミンというホルモンが多く分泌されると、高血圧(特に急激な血圧上昇)、頭痛、動悸(どうき)(※3)、発汗、顔面蒼白などが「発作的」に現れるのが大きな特徴です。褐色細胞腫は比較的まれな病気ですが、これが原因となる高血圧は治療によって改善できる可能性があります。

稀少疾患(きしょうしっかん)(※4)の一つとして扱われることがあります。発症年齢はさまざまで、若い世代から高齢者まで幅広くみられますが、腫瘍が見つかる時期によっては長期間気づかないケースもあるため、注意が必要です。

※1:腎臓の上にあり、ホルモンを分泌する小さな臓器
※2:副腎の中心部
※3:心臓がドキドキする感覚
※4:患者数が少ない病気

図
図:褐色細胞腫

褐色細胞腫の原因

褐色細胞腫の主な原因は、副腎の髄質でできる腫瘍です。髄質はアドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモン(総称してカテコールアミン)をつくる場所で、腫瘍が発生するとこれらのホルモンが過剰に分泌されます。過剰なカテコールアミンによって交感神経(こうかんしんけい)(※5)の作用が強くなり、高血圧や心拍数の増加などの症状が出やすくなります。放置すると脳出血や心不全、重症不整脈などの致命的な合併症(高血圧クリーゼ)を引き起こす危険があるため、早期発見が極めて重要です。

また、褐色細胞腫が遺伝性の疾患に関連していることもあります。遺伝子(※6)に変化があることで腫瘍ができやすくなる「多発性内分泌腫瘍症(たはつせいないぶんぴつしゅようしょう)」や、ほかの遺伝子の異常などが原因となるケースも確認されています。ただし、ほとんどの場合は特定の遺伝的要因が見つからないことも多いとされています。

※5:体の興奮やストレス反応を司る神経
※6:体の性質や特徴を伝える情報

褐色細胞腫の症状

褐色細胞腫による症状は、過剰に分泌されるホルモンの影響が大きく、特徴的なものがいくつかあります。代表的な症状は次のとおりです。

1.高血圧
血圧が慢性的に高くなる場合もあれば、発作的に急上昇する場合もあります。
2.頭痛
血圧の上昇によって頭がズキズキする痛みが起こることが多いです。
3.動悸
心臓がバクバクする、脈が速くなるなどの自覚症状がみられます。
4.発汗
大量の汗をかくことがあります。暑くないのに汗が出る場合は注意が必要です。
5.不安感・恐怖感
カテコールアミンの過剰分泌により、理由もなく落ち着かない、パニックのような気分になることがあります。

これらの症状は、ストレスや運動、急な姿勢の変化などの刺激によって発作的に起こりやすいと言われています。日常的にこれらの症状が強く出る場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。

褐色細胞腫の検査・診断

褐色細胞腫を疑う場合、以下のような検査・診断が行われます。

1.血液検査・尿検査
(安静状態で)**カテコールアミンやその代謝産物(※7)(メタネフリン、ノルメタネフリン)の濃度を測定します。通常より高い値が検出される場合、褐色細胞腫の可能性が考えられます。
2.画像検査
CTやMRIを使い、副腎に腫瘍があるかどうかを調べます。
さらに、MIBGシンチグラフィー(※8)など、腫瘍の位置や広がりを詳しく確認する検査も用いられます。
3.遺伝子検査
遺伝的な要因が疑われる場合、特定の遺伝子変異がないか調べます。

※7:体内で分解された後の物質
※8:放射性物質を使った検査

褐色細胞腫の治療

褐色細胞腫の治療で最も一般的なのは、腫瘍を外科的に取り除く手術です。ただし、手術をする前には高血圧をコントロールするために薬物療法が行われます。カテコールアミンが急激に増減すると、手術中や手術後に大きく血圧が変動するリスクがあるため、事前に血圧や心拍数を安定させることが大切です。

1.薬物療法(手術前の準備)
(Α遮断薬(アルファしゃだんやく)(※9)やβ(ベータ)遮断薬(※10)などを使い、血圧と心拍数を調整します。まずα遮断薬(アルファしゃだんやく)を投与して血圧をコントロールし、必要に応じてβ遮断薬を追加します。β遮断薬を単独で先に使うと、血圧が異常に上昇する危険があるため、順番が非常に重要です。
カルシウム拮抗薬(きっこうやく)や利尿薬(りにょうやく)なども併用される場合があります。
2.手術(腫瘍の摘出)
腫瘍が片方の副腎にだけある場合は、その副腎を部分的、あるいは全体を摘出することが一般的です。
両方の副腎に腫瘍がある場合は、腫瘍の大きさや状態によって手術法が異なります。
腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)(※11)が選択されることもあり、患者の体への負担を軽減できます。
なお、褐色細胞腫は手術前の組織検査(生検)が禁忌であり、また顕微鏡検査だけでは良性・悪性の区別がつきにくいという特徴があります。
3.手術後の管理
手術によって腫瘍を取り除くと、カテコールアミンの過剰分泌がなくなるため、高血圧やその他の症状が改善する可能性が高いです。
ただし、手術後に一時的な血圧の低下や、ホルモンバランスの変化による不調が出る場合もあります。主治医の指示に従って定期的に検査を受け、状態を確認することが必要です。

※9:血管を広げて血圧を下げる薬
※10:心拍数を抑える薬
※11:小さな穴から内視鏡〔ないしきょう〕を使って行う手術

褐色細胞腫の合併症

褐色細胞腫を放置すると、過剰なカテコールアミンの作用によって重い合併症が起こることがあります。

  • 心不全(しんふぜん):心臓の機能が低下する
  • 脳卒中(のうそっちゅう):脳の血管が詰まる、あるいは破れる疾患
  • 虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん):心臓に十分な血液が行き渡らない状態
  • 不整脈(ふせいみゃく):脈のリズムが乱れる

また、腫瘍が大きくなれば、ほかの臓器を圧迫するリスクも高まります。定期的に検査を受け、早期発見・早期治療を行うことで、こうした合併症を防ぐことが重要です。

褐色細胞腫の予防

褐色細胞腫そのものを完全に予防することは難しいとされています。しかし、以下の点に注意することで、早期発見や合併症のリスクを下げることが期待できます。

1.定期的な健康診断
健康診断や人間ドックで血圧の状態を確認し、異常があれば早めに医療機関を受診しましょう。
2.家族歴の確認
血縁者に褐色細胞腫を含む腫瘍性疾患(しゅようせいしっかん)の方がいる場合、必要に応じて遺伝子検査や専門的な診察を受けることが推奨される場合があります。
3.生活習慣の管理
高血圧や動脈硬化(どうみゃくこうか)(※12)につながる、塩分のとりすぎや運動不足、喫煙などを避けることで、万が一褐色細胞腫があった場合でも、重症化のリスクを下げる可能性があります。

※12:血管が固くなる状態

原因不明の激しい高血圧発作がある方は、一度専門医(内分泌内科)へ相談をされることをおすすめします。

更新:2026.11.01