せいそうしゅよう

精巣腫瘍

基礎情報

概要

精巣腫瘍とは、男性の精巣(※1)に発生する悪性腫瘍(※2)のことです。がんというと高齢者に多いイメージがありますが、精巣腫瘍は20代から30代の比較的若い世代に多くみられる特徴があります。

日本では、肺がんや胃がんなどと比較すると発症数は少ないとされていますが、若年層に起こるがんの中では代表的なものの一つです。精巣は男性ホルモンの分泌や精子の産生を担う重要な器官です。進行が非常に早いという特徴はありますが、一方で今の医療では最も治りやすいがんの一つとされています。早期に発見し、適切な治療を行えば、高い確率で完治を目指すことができます。ただし、放置すると転移(※3)など重い合併症を引き起こす場合があります。

※1:陰嚢(いんのう)の中にある生殖器
※2:がん細胞のかたまり
※3:がん細胞が別の場所に広がること

精巣腫瘍の原因

精巣腫瘍のはっきりした原因は、まだ完全に解明されていません。しかし、以下のような要因が関係していると考えられています。

1.停留精巣(ていりゅうせいそう)(※4)
生まれつき精巣が陰嚢におりず、おなかの中や鼠径部(そけいぶ)(※5)にあるままになっている状態を停留精巣と呼びます。手術で治した経験がある方も含め、停留精巣がなかった方に比べて発症のリスクがやや高いことが分かっています。
2.遺伝的要因
家族や血縁者に精巣がんの患者がいる場合、発症リスクが高まる可能性があります。
3.年齢や人種
特に20~30歳代に多くみられ、欧米の白人男性に多いとされますが、日本人でも発症例は少なくありません。
4.その他の要因
はっきりとしたエビデンスは限られますが、生活習慣や環境なども関係する可能性が指摘されています。

※4:精巣が陰嚢の中におりていない状態
※5:足の付け根付近

精巣腫瘍の症状

精巣腫瘍の症状は、初期の段階ではほとんど痛みや不快感がないことが多いため、自分で気づきにくい場合があります。代表的な症状は次のとおりです。

1.陰嚢のはれやしこり
精巣が大きくなり、しこりやかたまりが触れるようになります。左右の精巣を触り比べたとき、いつもと大きさが違うと感じることがあります。
2.違和感や重苦しさ
痛みというよりは、重たい感じや張ったような感覚を覚える人が多いです。ときどき鈍い痛みを感じる場合もあります。
3.腰痛や腹部の不快感
がんが大きくなったり、リンパ節へ転移したりすると腰やおなかのあたりに痛みや圧迫感が出ることがあります。
4.乳房のはれ
一部の精巣がんは、ホルモンのバランスに影響を及ぼすため、まれに男性の乳房がはれることがあります。

早期発見につながる大きなポイントは、陰嚢の大きさや固さの変化に気づくことです。中学生や高校生でも、自分の体の状態を定期的にチェックする習慣を持つと、異変に早く気づける可能性があります。最大の特徴は「痛みがないのに、精巣が硬くなったり腫れたりする」ことです。炎症のように熱が出たり痛んだりしないため、「放っておけば治るだろう」と見過ごされがちです。「片方の陰嚢が急に大きくなった」「石のように硬いしこりがある」と感じたら、それは重要なサインです。

図
図:精巣腫瘍

精巣腫瘍の検査・診断

精巣腫瘍を疑う場合、医療機関では主に以下の検査が行われます。

1.視診・触診
医師が実際に陰嚢を見て、はれやしこりがあるかどうかを確認します。また、しこりの硬さや大きさなども触って確かめます。
2.超音波検査
超音波を用いて精巣の内部構造を映し出します。しこりの位置や大きさ、固さや組織の状態を詳しく見ることができます。
3.血液検査
精巣腫瘍の種類によっては、血液中に特定の腫瘍マーカー(※6)が上昇します。代表的なものにアルファフェトプロテイン(AFP)やヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、乳酸脱水酵素(LDH)などがあります。
4.画像検査
がんの広がり具合を確認するために、CTやMRIを撮影します。リンパ節やほかの臓器への転移がないかを詳しく調べます。

これらの検査結果を総合的に判断して、精巣腫瘍であるかどうか、またがんのタイプや進行度を診断します。

※6:がん細胞が出す物質

精巣腫瘍の治療

精巣腫瘍の治療は、がんの種類(セミノーマ、ノンセミノーマなど)や進行度、患者さんの体調によって異なります。主な治療法は以下の通りです。

1.手術
がんがある精巣を摘出(※7)する高位精巣摘除術(こういせいそうてきじょじゅつ)(※8)が基本となります。もう一方の精巣が健康であれば、男性ホルモンの産生や生殖能力は大きく損なわれないことが多いです。
2.放射線療法
セミノーマというタイプの精巣腫瘍は放射線感受性(※9)が高いため、手術後の予防的照射や転移したリンパ節への照射が行われる場合があります。
3.化学療法(かがくりょうほう)
抗がん剤(※10)を使って、体内にあるがん細胞を小さくしたり、消滅させたりする治療です。精巣腫瘍は化学療法に比較的反応が良いとされ、再発や転移がある場合でも治療効果が期待できます。
4.経過観察
がんの広がりが限定的である場合、手術後に積極的な放射線療法や化学療法を行わず、定期的な検査を続ける経過観察を選択することもあります。転移や再発が認められたら、すぐに追加の治療に移行します。

近年は治療技術の進歩により、早期に見つけて適切に治療すれば高い確率で治癒が期待できます。ただし、治療後も再発リスクが完全になくなるわけではないため、定期的なフォローアップが大切です。

※7:取り出すこと
※8:鼠径部(そけいぶ)付近で精巣と精管を切除する手術
※9:がん細胞が放射線で破壊されやすい性質
※10:がん細胞を攻撃する薬

精巣腫瘍の合併症

1.転移
リンパ節や肺、肝臓、脳などへがんが広がり、症状が悪化するケースがあります。
2.男性ホルモンの減少
一方の精巣を摘出した場合、残った精巣が十分に働いていれば問題ありませんが、まれに男性ホルモンが不足し、疲れやすさや性欲の低下が起きる可能性があります。
3.生殖能力への影響
手術や化学療法、放射線療法により精子を作る能力が低下する場合があります。将来を考慮して、治療前に精子を凍結保存する選択肢もあります。
4.治療の副作用
放射線療法や化学療法による吐き気、脱毛、疲労などの副作用がみられることがあります。

精巣腫瘍の予防

精巣腫瘍を防ぐために、確立した完全な予防法はありません。しかし、次のような点を意識することで、早期発見やリスク低減が期待できます。

1.自己触診
陰嚢を定期的に触ってみて、しこりや腫れの有無を確認する習慣をつけましょう。違和感があれば、早めに泌尿器科などを受診することが大切です。
2.停留精巣の早期治療
生まれつき停留精巣がある場合は、早期に治療を受けることで将来的な精巣腫瘍のリスクを下げることができるとされています。
3.健康診断の活用
学校や自治体などで行われる健康診断やがん検診を活用し、異常を見逃さないようにしましょう。
4.規則正しい生活習慣
はっきりとした因果関係はまだ解明されていませんが、バランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠は全般的に免疫力を高め、病気予防に役立ちます。

更新:2026.11.01