てんかん

てんかん

基礎情報

概要

てんかんとは脳の神経細胞が過剰に活動することで発作が起こる病気です。日本を含む世界中で見られる神経疾患の一つです。この病気は、脳の異常な電気信号が原因で、けいれん(※1)や意識が途切れる症状がみられることが特徴です。多くの場合、正しい治療を受けることで症状をコントロールし、普段どおりの生活を送ることが可能とされています。原因が特定できる人もいますが、特定できない人もいます。

※1:体がふるえる発作

てんかんの原因

1.脳の損傷
頭部外傷(重いケガ)や脳卒中(※2)によって脳にダメージが生じ、神経細胞の働きが乱れることがある。
2.先天性疾患(生まれつきの病気)
ダウン症などの染色体の異常や、脳の形成に問題がある場合、てんかんが生じることがある。
3.感染症
脳炎や髄膜炎(※3)などの病気が脳細胞に影響を与え、てんかんを引き起こすことがある。
4.その他の要因
がんの転移による脳の腫瘍やアルツハイマー病などの神経変性疾患も、発作の原因となることがある。
5.遺伝的要因
てんかんには家族内で発生するタイプがあります。このような場合、遺伝的影響がある可能性が高いです。

しかし、約半数では特定の原因を特に見つけられず、「原因不明」のまま診断されることも少なくありません。

※2:脳血管が詰まったり破れたりする病気
※3:脳や脊髄を包む膜の炎症

てんかんの症状

発作の種類や程度は人によってさまざまで、大きく「全般発作(脳全体に起こる発作)」と「部分発作(脳の一部に起こる発作、近年では“焦点発作”とも呼ばれる)」に分けられます。

1.全般発作の症状
1.強直間代発作(きょうちょくかんだいほっさ)

  • 体が突然硬直(強直)し、その後ガクガクとしたけいれん(間代)が起こる。
  • 意識を失い、転倒することがある。
  • 発作後に強い眠気や疲労感が残ることが多い。
図
図:てんかん
2.欠神発作(けっしんほっさ)(小発作とも呼ばれる)
  • 数秒~数十秒程度、突然意識が途切れる。
  • ぼーっとしたり、会話が途切れたりして、何も反応しないように見える。
  • けいれんを伴わないため、周囲が見落としやすい。
3.ミオクローヌス発作
  • 筋肉がピクッと一瞬だけけいれんを起こす。
  • 物を落としたり、体がはねるように動いたりする。
  • 意識障害を伴うこともあれば、ほとんどない場合もある。
4.脱力発作
  • 筋肉の緊張が突然失われ、体が崩れるように倒れ込んでしまう。
  • 頭を強打するなど、転倒によるケガに注意が必要
2.部分(焦点)発作の症状
1.意識が保たれる焦点発作(以前は単純部分発作と呼ばれる)

  • 発作中も意識は明瞭である。
  • 体の一部のけいれん、しびれ、感覚の異常(ピリピリ、チクチクなど)、視覚・聴覚の異常などが起こる。
  • 悪心(吐き気)やめまい、不安感、既視感などが症状として現れることもある。
2.意識が乱れる焦点発作(以前は複雑部分発作と呼ばれる)
  • 発作中に意識が混濁し、自分の行動を把握できなくなる。
  • ぼんやりして反応が鈍くなったり、口をもぐもぐ動かす、同じ言葉を繰り返すなどの自動症と呼ばれる行動が見られたりする。
  • 発作が終わった後、その間の記憶がないことが多い。
3.発作の前兆
一部の患者さんは、発作の前に独特の感覚(光や音の異常、においの変化、胸騒ぎなど)を感じることがあります。
この前兆を感じ取れる人は発作の予兆として認識できる場合がありますが、常に起こるとは限りません。

てんかんの検査・診断

てんかんが疑われる場合、医療機関で以下のような検査を行い、原因や発作のタイプを特定します。

1.問診・症状の確認
発作の起こり方、どのくらいの頻度で起こるか、発作の前兆(発作が始まる前に起こる特有の感覚)などを詳しく聞き取ります。
本人だけでなく、発作をそばで見ていた家族や友人などからの情報も大切です。
2.脳波検査(※4)
頭皮に電極をつけて、脳の電気信号を記録します。発作時の波形をとらえることで、どの部分に異常があるか調べることができます。
3.画像検査
CT検査やMRI検査を行い、脳に腫瘍や出血などの異常がないかを確認します。
4.血液検査
代謝異常(体内の物質の分解・合成のバランスが崩れること)や感染症の有無、発作に関連する可能性のあるその他の疾患の兆候などを調べます。

これらの検査結果を総合して、てんかんと診断されるかどうか、また発作のタイプなどが決定されます。

※4:脳の電気的な活動を測る検査

てんかんの治療

てんかんの治療は、薬を使う方法が中心です。ただし、症状や原因、生活スタイルによって治療法は変わります。

1.抗てんかん薬(※5)
発作を抑える効果のある薬を継続的に服用します。種類が多く、一人ひとりに合わせて選びます。
副作用(薬による好ましくない作用)をチェックしながら服用を続ける必要があります。
てんかん症状のないてんかんの子供の多くは、最終的には薬の服用をやめて発作のない生活を送ることができます。多くの成人は、発作が2年以上起こらなければ薬の服用をやめることができます。
2.手術療法
薬だけでは発作を十分にコントロールできない場合、脳の中で過剰に興奮している部分を取り除く手術が検討されることがあります。
手術後は発作が減ったり、消失したりする可能性がありますが、脳の場所によっては手術が難しい場合もあります。
3.迷走神経刺激療法(※6)
鎖骨付近に装置を埋め込み、首を通る迷走神経(※7)に電気刺激を送る方法です。これにより発作の頻度が下がる人もいます。
4.ケトン食療法(※8)
小児の難治性てんかんを中心に用いられます。炭水化物を制限し、脂肪を多くとることで体内の代謝バランスを変え、発作を起こりにくくします。

治療では、患者本人だけでなく、家族や周りの人の協力も大切です。薬の飲み忘れを防いだり、発作が起きたときの対応をあらかじめ話し合っておくことで、安心して生活できます。

※5:発作を抑える薬
※6:脳に直接刺激を送らずに発作を抑える治療
※7:脳から内臓などへ信号を伝える神経
※8:炭水化物を減らして脂肪を多くとる食事療法

てんかんの合併症

てんかんそのものが直接ほかの病気を引き起こすことは多くありませんが、重い発作が繰り返し起こると、次のようなリスクが高まります。

1.怪我
発作中に転倒し、頭を打つなどのけがをすることがあります。階段や自転車の利用時など、周囲の安全に気を配る必要があります。
2.うつ病や不安障害
長期的に発作を抱えるストレスや社会的な制限によって、気分が落ち込みやすくなったり、不安症状が強くなることがあります。専門家によるカウンセリングを受けることで症状が軽減する場合があります。
3.てんかん重積状態
発作が長い間続いたり、繰り返し起こって意識が戻らない状態です。重篤な場合は呼吸が止まり命にかかわるため、救急対応が必要です。
4.てんかん患者における突然の予期せぬ死(SUDEP)
てんかん患者も突然の予期せぬ死のリスクがわずかにあります。原因は不明ですが、心臓や呼吸器の病気が原因で起こる可能性があるという研究結果もあります。

てんかんの予防

てんかんには、明確な予防策がない場合もあります。しかし、以下のような点に気をつけることで、発作のリスクを減らしたり、症状を悪化させないようにすることが期待できます。

1.適切な生活習慣
睡眠不足や過度のストレスは発作を誘発しやすいといわれています。十分な睡眠をとり、ストレスをためすぎないように心がけましょう。
アルコールの飲み過ぎも発作を引き起こす可能性があるため、控えめにすることが望ましいです。
2.頭部外傷の予防
交通事故やスポーツなどで頭部を強く打つと、てんかんの原因になることがあります。ヘルメットの着用や安全ルールの順守を徹底することが大切です。
3.発作の前兆をつかむ
光の点滅や特定の音、においなどで発作が誘発される人もいます。自分の発作を引き起こしやすい状況を知り、避けるよう工夫しましょう。
4.感染症への対策
髄膜炎や脳炎などはてんかんの原因になることがあります。予防接種や手洗いなど、感染症を防ぐための基本的な対策を続けることも大切です。

更新:2026.05.13