こうくうかんそうしょう(どらいまうす)

口腔乾燥症(ドライマウス)

基礎情報

概要

唾液は食べ物をスムーズにのみ込むのを助けたり、むし歯や感染を予防したりするなど、口の中や身体の健康にとって重要なはたらきをしています。口の中が乾いてしまう状態を、「口腔乾燥症(ドライマウス)」と呼びます。これは唾液(だえき)が減少することで起こり、唇や舌が粘ついたり、口を開けたときにパサつきが気になったり、食べ物が飲み込みにくくなったりする症状が特徴です。

日本では高齢化が進んでおり、口腔乾燥症を自覚している人も増加傾向にあります。口の乾きは、生活の質や健康管理に大きく影響を与えるため、原因や対策を知っておくことが大切です。

口腔乾燥症の原因

1.薬の副作用
抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、降圧薬など、多くの薬が唾液の分泌を減らす可能性があります。特に高齢になるほど服用薬の種類が増えるため、薬の影響を受けやすくなります。
2.年齢による変化
心加齢によって唾液腺(※1)の機能が低下し、唾液の量が減ることがあります。また、高齢者ほど持病の治療などで複数の薬を飲むケースが多く、副作用が重なりやすいと考えられています。
3.病気や治療の影響
シェーグレン症候群(※2)など、自己免疫疾患によって唾液腺が傷つくと唾液が作られにくくなります。また、頭や首のがんに対する放射線治療や化学療法(※3)なども唾液腺の機能を低下させることがあります。
4.ストレスや生活習慣
ストレスや不安が続くと唾液分泌が減少しやすくなります。口呼吸、喫煙、水分摂取不足、アルコールやカフェインの過剰摂取なども、口の渇きを引き起こす原因となります。
5.脱水症
下痢や嘔吐、発熱などで体内の水分が失われたり、十分に水分を取らなかったりすると、唾液の分泌も減り、口が乾きやすくなります。

※1:唾液をつくる場所
※2:免疫系が体の分泌腺を攻撃する病気
※3:抗がん剤治療のこと

口腔乾燥症の症状

口腔乾燥症の主な症状は、文字どおり「口が乾く」ことですが、具体的には次のようなものがみられます。

  • 口の中やのどが渇きやすく、水をよく飲みたくなる
  • 唇が乾燥し、ひび割れする
  • 舌や喉がヒリヒリしたり、ピリピリしたりする
  • 食べ物が飲み込みにくく、固いものやパサつくものが食べづらい
  • 話しているときに口が乾いて、言葉が出にくくなる
  • 口臭(こうしゅう)が気になる
  • 味覚が変わったり、食べ物の味を感じにくくなったりする

唾液による洗浄・殺菌作用が弱まると、急にむし歯や歯周病が増える、口臭が強くなる、舌がヒリヒリ痛むといったトラブルが起きやすくなります。また、夜中に口が乾いて目が覚めてしまうなど、睡眠の質を下げてしまうことも少なくありません。これらの症状からも口腔乾燥症を疑う必要があります。

図
図:口腔乾燥症の症状

口腔乾燥症の検査・診断

歯科や口腔外科、内科などでは、口腔乾燥症が疑われる場合、以下のような検査・診断を行うことがあります。

1.問診
いつ頃から口が乾くようになったのか、服用している薬や持病はあるか、生活習慣やストレスの有無などを確認し、症状の原因を探ります。
2.視診・触診
口の中や唇の乾燥度合い、舌の状態、むし歯や歯周病の有無などを目で見たり、指先で触れたりしてチェックします。
3.唾液分泌量の測定
ガムを噛んで一定時間にどれくらいの唾液が出るかを測定する「ガムテスト」や、唾液を小さなカップやスポンジに集める方法などで、実際に分泌される唾液の量や性状を調べる検査があります。
4.血液検査など
口腔乾燥症の背景に自己免疫疾患や糖尿病などが疑われる場合は、血液検査などで関連する数値を調べることがあります。

口腔乾燥症の治療

口腔乾燥症の治療は、原因によって異なります。

1.薬の見直し
服用している薬が原因の場合、医師に相談して薬の変更や減量を検討することがあります。ただし、自己判断で薬を中止すると、持病が悪化するおそれがあるため、必ず医師の指示を仰ぎます。
2.人工唾液(じんこうだえき)の使用や口腔保湿剤の活用
ドライマウス専用のジェルやスプレーなどを使い、唾液の代わりに口内を潤すことで不快感の軽減が期待できます。薬局などで市販されているもののほか、処方薬としても用意されています。
3.こまめな水分補給
少量ずつ、こまめに水やお茶を飲むことで、口の中を潤しやすくします。特に、カフェインの多い飲み物やアルコールは口の乾きを助長する可能性があるため、飲みすぎに注意が必要です。
4.ガムやタブレットの活用
砂糖の入っていないガムやタブレットを噛むと、唾液の分泌を促進することができます。ただし、むし歯を防ぐためにも、キシリトールなどの甘味料を使用した無糖タイプを選ぶとよいでしょう。
5.唾液腺マッサージや口腔ケア
顎の下や耳の下、舌の付け根などにある唾液腺を軽くマッサージすると、唾液分泌の促進に効果があると言われています。また、歯科医師や歯科衛生士の指導のもとで適切なブラッシングやケアを行うことで、むし歯や歯周病を予防しつつ、口腔環境を整えます。また、よく噛んで食べることも、最も自然で強力な「唾液のスイッチ」になります。
6.基礎疾患の治療
シェーグレン症候群などの自己免疫疾患や糖尿病などがある場合は、その治療を適切に行うことが口腔乾燥症の改善に役立ちます。専門医と連携しながら治療を続けていくことが大切です。

口腔乾燥症の合併症

口の乾きが続いて唾液の量が不足すると、以下のような合併症のリスクが高まります。

むし歯や歯周病
唾液には細菌の繁殖を抑える働きがあるため、唾液が減るとむし歯や歯ぐきの炎症が起こりやすくなります。
口内炎や口角炎
乾燥により粘膜が傷つきやすく、口内炎や口角炎といった痛みやただれが生じることがあります。
口臭の増強
口腔内の細菌が増えやすくなり、口臭の原因となります。
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)(※4)
高齢者などでは、唾液が少ないことで食べ物がのみ込みにくくなり、誤嚥のリスクが高まります。

※4:食べ物が気管に入って起こる肺炎

口腔乾燥症の予防

口腔乾燥症を予防するには、以下のような生活習慣の見直しやケアが有効です。

1.十分な水分補給
こまめに水やお茶などを飲み、脱水状態を防ぎます。運動時や夏場には特に注意が必要です。
2.口呼吸の改善
鼻づまりなどで口呼吸になっている場合は、耳鼻咽喉科を受診して治療を受ける、あるいは意識的に鼻呼吸を心がけるようにしましょう。
3.適度な運動とストレス管理
軽い運動やリラックスできる時間を持つことで、ストレスの軽減につながり、唾液分泌が安定しやすくなります。
4.生活習慣の見直し
過度の喫煙や飲酒、カフェインのとりすぎは控えましょう。これらは唾液の量を減らしやすくします。
5.定期的な歯科検診
むし歯や歯周病の早期発見・治療のためにも、定期的に歯科医院を受診し、プロによるクリーニングや口腔衛生指導を受けることが望ましいです。

更新:2026.11.01