原発性胆汁性胆管炎
基礎情報
概要
原発性胆汁性胆管炎(PBC)(げんぱつせいたんじゅうせいたんかんえん)は、かつて「原発性胆汁性肝硬変」と呼ばれていた病気です。肝臓の中にある「胆管」(※1)が、体の免疫システム(体を守る仕組み)の異常によって、ゆっくりと傷ついてしまうのが特徴です。このため胆汁がうまく排出されず、肝臓に負担がかかっていきます。胆汁は肝臓で作られる液体です。消化を助け、特定のビタミンを吸収します。また、脂肪を吸収し、コレステロール、毒素、古くなった赤血球を取り除くのにも役立ちます。肝臓の炎症が続くと、胆管炎と呼ばれる損傷を引き起こすことがあります。時には、肝硬変と呼ばれる肝臓組織の永久的な瘢痕化につながることもあります。また、最終的には肝不全につながることもあります。
※1:肝臓で作られた胆汁〈消化を助ける液〉の通り道

原発性胆汁性胆管炎の原因
原発性胆汁性胆管炎は、自己免疫疾患(※2)の一種と考えられています。はっきりした原因はわかっていませんが、以下のような要因が関係している可能性があります。
- 1.遺伝要因
- 近い家族に同じような病気をもつ人がいる場合、発症のリスクがやや高いといわれています。
- 2.環境要因
- 何らかのウイルスや細菌などへの感染、あるいは生活環境がきっかけで免疫反応が過剰に働く可能性が指摘されています。
- 3.性ホルモン
- この病気は女性に多いため、女性ホルモンなどの働きが免疫と関係しているのではないかと考えられています。
※2:自分の免疫システムが、自分自身の細胞を攻撃してしまう病気
原発性胆汁性胆管炎の症状
初期の段階では、ほとんど症状が出ないことも珍しくありません。しかし、病気が進行すると、以下のような症状がみられるようになります。
- 1.疲労感や倦怠感
- 小さな動作でも疲れやすくなり、休んでもなかなか回復しない状態が続きます。
- 2.かゆみ(皮膚掻痒感〈ひふそうようかん〉)
- 体全体の皮膚がかゆくなることがあります。これは胆汁の排出がうまくいかないため、体内に溜まった物質がかゆみを引き起こすと考えられています。
- 3.黄疸(※3)(おうだん)
- 進行して肝機能が低下すると、ビリルビン(※4)が体内に蓄積し、皮膚や白目が黄色っぽくなることがあります。
- 4.腹部の痛みや腫れ
- 肝臓や脾臓が大きくなることによって、右上腹部に不快感や痛みを覚える場合があります。
- 5.脂溶性ビタミン不足の症状
- 胆汁の流れが悪いと、ビタミンA・D・E・Kなどの脂溶性ビタミンの吸収が低下し、視力障害や骨のもろさ、出血しやすい状態になることもあります。
※3:皮膚や白目が黄色くなる
※4:血液中の色素
原発性胆汁性胆管炎の検査・診断
原発性胆汁性胆管炎は、血液検査や画像検査などを組み合わせて診断します。主な検査方法としては、次のようなものがあります。
- 1.血液検査
- 肝機能検査(ALT、AST、ALP〈アルカリホスファターゼ〉.γ-GTPなど)
- 肝臓や胆管が障害されると、これらの数値が高くなります。
- 自己抗体の測定(抗ミトコンドリア抗体など)
- 抗ミトコンドリア抗体は、原発性胆汁性胆管炎でよく見られる抗体です。
- 2.画像検査
- 腹部超音波検査(エコー)
- 肝臓や胆管の状態を大まかに把握できます。
- 磁気共鳴胆道膵管造影検査(※5)(MRCP)
※5:MRI装置を用いて胆嚢や胆管、膵管を同時に撮影する検査
原発性胆汁性胆管炎の治療
原発性胆汁性胆管炎の治療では、早い段階から適切なアプローチを行うことが肝心です。主に以下のような治療法があります。
- 1.薬物療法
- ウルソデオキシコール酸(ウルソ)(※6)
- 胆汁の流れを改善し、肝臓への負担を軽くする効果が期待されます。
- オベチコール酸
- ウルソデオキシコール酸で十分な改善がみられない場合に使用されることがあります。
- かゆみを抑える薬
- 皮膚のかゆみが強いときは、抗ヒスタミン薬などが処方されることがあります。
- 2.生活習慣の改善
- 栄養バランスの良い食事
- 肝臓への負担を減らすために、野菜や果物、良質なたんぱく質をとり、過度なアルコール摂取は避けるようにします。
- 運動
- 適度な運動は、体力維持やストレス軽減に役立ちます。ただし、症状の度合いに合わせて無理のない範囲で行うことが大切です。
- 3.肝移植(かんいしょく)
- 病気が進行して肝臓の機能が大幅に低下した場合、肝移植が検討されることがあります。肝移植は大掛かりな治療ですが、適切な時期に受けることで長期的な予後(病気の経過)を改善できる可能性があります。
※6:胆汁酸の一種
原発性胆汁性胆管炎の合併症
原発性胆汁性胆管炎が進むと、次のような合併症が起こる可能性があります。
- 1.肝硬変
- 肝臓の細胞が繊維化(組織が固くなる)して、血液や胆汁の流れがさらに悪くなり、肝臓本来の働きが制限されます。
- 2.食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)
- 肝硬変の進行によって門脈圧(※7)(もんみゃくあつ)が高まり、食道周辺の静脈がこぶのように膨れ上がります。破裂すると大量出血のおそれがあります。
- 3.骨粗しょう症
- 胆汁の流れが悪いと脂溶性ビタミンの吸収が低下し、骨の密度が下がりやすくなります。骨折のリスクが高まるため注意が必要です。
- 4.高コレステロール血症
- 原発性胆汁性胆管炎患者の最大80%に高コレステロールが見られます。
※7:肝臓に入る静脈の圧力
更新:2026.10.29
