坐骨神経痛
基礎情報
概要
坐骨神経(ざこつしんけい)は、腰から足先まで伸びている、体の中で最も太くて長い神経です(太いところでは小指ほどもあります)。この神経が途中で圧迫されたり刺激されたりすることで、お尻や足に電気が走るような痛みやしびれが生じるのが「坐骨神経痛」です。
坐骨神経が通るルートに沿って症状が出るため、片方の足やおしりにしびれや鋭い痛みが広がったり、足の動かしづらさを感じたりする場合があります。
この症状は、腰痛の一部ととらえられることが多く、高齢者だけでなく若い人でも起こります。日常の動作や仕事で負担がかかることで、腰痛や坐骨神経痛の症状が出やすくなると言われています。
坐骨神経痛の原因
坐骨神経痛の主な原因には、椎間板ヘルニア(ついかんばん)(※1)や脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)(※2)などがあげられます。これらは腰椎(ようつい)(※3)まわりの椎間板や骨・靭帯(じんたい)が変形したり、加齢などでスペースが狭くなったりすることで坐骨神経を圧迫し、痛みやしびれを引き起こすことがあります。
また、筋肉が硬くなることで坐骨神経を圧迫することもあります。代表的なのが梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)(*4)です。さらに、腫瘍が神経を圧迫しているケースや、糖尿病の合併症として神経に異常が生じる場合も原因になりえます。ただし、これらは比較的まれであり、多くは加齢や生活習慣による骨や筋肉への負担が主な原因です。
若い方はヘルニア、高齢の方は狭窄症、デスクワークなどで座りっぱなしの方は筋肉による圧迫が多い傾向にあります。
※1:背骨の間にある椎間板が飛び出して神経を圧迫する病気
※2:背骨の中の神経の通り道が狭くなる病気
※3:腰の骨
※4:おしりの筋肉である梨状筋が神経を圧迫して痛みやしびれを起こす状態

坐骨神経痛の症状
坐骨神経痛の特徴的な症状は、腰やおしりから太もも、ふくらはぎ、足先にかけて走るような痛みやしびれです。特に、長時間座りっぱなしや立ちっぱなしの姿勢をとったあとに症状が悪化することが多いとされています。痛みの感じ方は人によって異なり、鋭い痛み、焼けるような痛み、電気が走るような痛み、鈍い重だるさなど、さまざまな表現がなされます。特徴的なのは、お尻から太ももの後ろ、ふくらはぎ、足にかけて、一直線上に症状が出ることです。「椅子に座るとお尻が痛い」「歩くと足がしびれるが、少し休むとまた歩ける」といった症状は、坐骨神経がSOSを出しているサインです。
また、症状が進むと足の筋力が低下して、うまく力が入らなくなったり、歩行が困難になる場合もあります。睡眠中に痛みやしびれで目が覚めてしまうこともあり、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。もしも足やおしりに激しい痛み、麻痺(まひ)、しびれなどが続く場合は、早めに医療機関で受診することが大切です。
坐骨神経痛の検査・診断
医療機関では、まず医師による問診で症状の出方や痛みの場所、生活習慣などが確認されます。その後、脚を持ち上げる下肢伸展挙上テストなどで痛みの有無や程度を調べます。このテストで痛みが強く出ると、坐骨神経痛の可能性が高いと判断されます。
さらに、原因を特定するために、レントゲン撮影やMRI検査、CT検査などを行う場合があります。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、腫瘍の有無を確認することで、痛みの正確な原因を突き止め、最適な治療につなげます。
坐骨神経痛の治療
坐骨神経痛の治療は、原因や症状の重さによって異なります。主な治療法には以下のようなものがあります。
- 1.保存療法(※5)
- 薬物療法:痛み止めや消炎鎮痛薬(しょうえんちんつうやく)を用いたり、筋肉の緊張をやわらげる薬を使うことがあります。
- 物理療法:温熱療法で血行を促し痛みを緩和したり、超音波治療、電気刺激を利用して筋肉の緊張をほぐします。
- リハビリテーション:理学療法士指導のもと、腰やおしり、足の筋肉を強化する運動を行い、姿勢や歩き方を改善して痛みを軽減します。
- 「重いものを持ち上げるときは膝をつく」「長時間座り続けない」といった小さな工夫が、神経の圧迫を和らげます。また、お風呂で体を温めて筋肉の緊張をほぐすことも、痛みの緩和に効果的です。
- 2.注射による治療
- 心神経ブロック注射:痛みが強い場合に、坐骨神経まわりに局所麻酔薬(※6やステロイド薬を注射して炎症や痛みを抑えます。
- 3.手術
- 保存療法で症状が改善しない場合や、足の麻痺や筋力低下が進行している場合には、手術を検討することがあります。椎間板ヘルニアが原因の場合は、飛び出した椎間板を取り除く手術などが行われます。また、脊柱管狭窄症が原因の場合は、狭くなっている部分を広げる手術が検討されます。
※5:手術を行わずに症状を緩和する方法
※6:特定の部位の痛みを感じにくくする薬
坐骨神経痛の合併症
坐骨神経痛は放置すると痛みやしびれが強まり、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。また、足の筋力が低下して転倒しやすくなるなど、二次的なケガが増えるリスクがあります。長期的に歩行が困難になると、運動不足から肥満や生活習慣病のリスクが上がることもあります。
さらに、まれに、膀胱(ぼうこう)(※7)や直腸(ちょくちょう)(※8)に異常が出て、排せつ機能に問題が起こる場合があります。こうした神経症状が出ているときは、ただちに医師の診察を受けることが必要です。
※7:尿をためる臓器
※8:便がたまる部分
坐骨神経痛の予防
坐骨神経痛を予防するには、普段から腰に負担をかけない生活を心がけることが大切です。以下のようなポイントに留意しましょう。
- 1.正しい姿勢を保つ
- 立つときも座るときも、背筋を伸ばして骨盤(こつばん)を安定させます。スマートフォンを長時間見るなど、前かがみの姿勢を続けないよう注意します。
- 2.適度な運動
- ウォーキングやストレッチ、軽めの筋力トレーニングなどで、腰まわりやおしりの筋肉を柔らかく保ち、血行をよくします。運動によって体重をコントロールすることも重要です。
- 3.荷物の持ち方に注意
- 重いものを持ち上げるときは、腰だけでなく膝を使い、体全体で支えるようにします。無理な姿勢で一気に力を入れると、腰や坐骨神経に負担がかかります。
- 4.生活習慣を整える
- 睡眠不足や運動不足、偏った食事は身体の回復力を低下させます。バランスの良い食事と十分な休養を取るよう意識しましょう。
更新:2026.11.01
