かしょくしょう

過食症

基礎情報

概要

過食症(かしょくしょう)は、短時間に大量の食事をしてしまう「過食」と、その後に食べたものを吐いたり下剤を使ったりする「排出行動」を繰り返す摂食障害(せっしょくしょうがい)の一つです。医学的には「神経性大食症(しんけいせいたいしょくしょう)」とも呼ばれます。

過食症は、思春期から若い成人に多くみられますが、性別や年齢にかかわらず起こる病気です。お腹が空いているから食べるのではなく、自分の意志ではどうしても止められない強い食欲に襲われる病気です。食べた後に自分を責め、無理に吐いたり下剤を使ったりすることで、心と体の両方がボロボロになってしまいます。これは「性格のせい」などではなく、適切な治療が必要な「脳と心の病気」です。

体重や体型に対する強い不安や自己否定感など、心理的な要因が複雑に影響しているため、周囲の理解とサポートが欠かせません。治療では、カウンセリングや薬物療法、栄養指導などを組み合わせたアプローチが取られます。

過食症の原因

過食症の原因は一つではなく、さまざまな要因が重なって発症すると考えられています。大きく分けると以下のような要素があります。

1.心理的要因
自尊心が低い、または「自分は太っている」「もっと痩せないといけない」という思い込みが強いなど、極端な自己イメージのゆがみが関係することがあります。ストレスや不安、うつ状態から食べることで気持ちを落ち着かせようとする場合もあります。真面目で完璧主義な人ほど、少しの食べすぎを「大きなの失敗」のように感じてしまい、その絶望感からさらなる過食と排出のループに陥りやすくなります。
2.社会的要因
やせていることが美しいとされる風潮や、ネット・SNSなどを通じた体型への強いプレッシャーが影響を与えることがあります。また、家庭や学校などでの人間関係のストレスなども誘因になりえます。
3.生物学的要因
家族に摂食障害の人がいると、過食症を発症しやすいといわれる研究結果もあります。これは遺伝的な要因や脳内の神経伝達物質の働きが影響している可能性があります。

過食症の症状

過食症の主な特徴は、「過食」と「排出行動」を繰り返すことですが、そのほかにも身体的・精神的にさまざまな症状が現れます。

1.過食
自短時間(おおむね2時間以内)に、大量の食べ物をコントロールできないほど食べ続けます。食べた後に強い罪悪感や後悔の念を抱くことが多いです。
2.排出行動
体重の増加を恐れ、食べたものを吐いたり、下剤や利尿薬(りにょうやく)(※1)を使ったり、極端な断食や過度な運動などを行うことで、体重を減らそうとします。無理な排出行動を続けると、体の中のミネラルバランスが崩れ、強いむくみや不整脈、歯のエナメル質が溶けるといった症状が現れます。また、唾液腺が腫れて顔がふっくら見える(過食顔)こともあり、痩せたいという願いとは裏腹に、体がSOSを出し始めます。
3.体重や体型への強いこだわり
やせていないと自分に価値がないと感じるなど、体重や体型に対して過剰に心配していることが多いです。
4.身体的なトラブル
反復して吐く行為により、歯やのどが傷つきやすくなります。
まめに吐いてしまうことで脱水症になりやすくなり、体内の電解質のバランスが崩れやすくなります。
過度な下剤の使用で、腸の働きに悪影響が出る場合もあります。
5.精神的な不調
過食と排出行動をくり返すことへの罪悪感が強く、自己嫌悪や落ち込み、うつ症状が表れやすくなります。また、他者とのコミュニケーションを避けるようになったり、周囲に対して過度に攻撃的になるなど、感情の波が大きくなることがあります。

※1:尿を出しやすくする薬

図
図:過食症

過食症の検査・診断

過食症は、見た目や体重だけでは判断できない場合が多いため、専門の医療機関での検査が必要です。以下のような手順で診断が行われます。

1.問診・視診
医師や臨床心理士が、食事の内容や食事に関する考え方、体重・体型への認識、過食や排出行動の頻度などについて詳しく聞き取ります。
2.身体検査・血液検査
体重や血圧、脈拍などを測定し、必要に応じて血液検査を行います。脱水症や電解質の異常、肝機能や腎機能のチェックも行い、身体への影響を評価します。
3.心理評価テスト
摂食障害や関連する精神的な問題を把握するために、カウンセリングやアンケート形式の心理テストを実施することがあります。
4.他の病気の可能性を除外
甲状腺(こうじょうせん)などのホルモン異常や、ほかのうつ病などの精神疾患によって食行動が乱れている可能性もあるため、さまざまな角度から総合的に判断します。

過食症の治療

過食症の治療では、身体の安全を確保しながら、心理面や栄養面を総合的にケアしていきます。主な治療法は以下のとおりです。

1.カウンセリング(心理療法)
認知行動療法
自分の考え方や行動パターンを見直し、過食や排出行動が起こる状況・きっかけをコントロールする方法を学びます。
対人関係療法
人間関係のストレスやコミュニケーションの問題を解決することで、摂食障害の症状を和らげる方法です。
2.薬物療法
抗うつ薬や抗不安薬などが使われることがあります。これらは気分の落ち込みや不安をやわらげ、過食や排出行動を減らすのに役立つ場合があります。ただし、薬の効果には個人差があるため、医師と相談しながら慎重に進めます。
3.栄養指導
管理栄養士による適切な食事のとり方やバランスの良いメニューの提案などを受けることで、食に対する恐怖感や偏ったイメージを少しずつ改善します。
4.家族や周囲のサポート
本人が治療に専念できるように、家族や友人などの理解と支えがとても重要です。心理療法に家族が参加して、一緒に学ぶ場合もあります。
5.入院治療
体重が極端に落ちている、重い電解質異常がある、あるいはうつ症状がひどいなど、専門的なケアが必要なときは、入院して集中的に治療を行うことがあります。

過食症の合併症

過食症を長期間放置すると、体や心にさまざまなトラブルが起こる可能性があります。

1.体調不良や内臓への影響
吐く行為が続くことで歯が溶けたり、のどや食道がただれたりします。また、電解質バランスが崩れると、不整脈など心臓に負担がかかるリスクが高まります。
2.精神的な疾患
うつ病や不安障害などを併発することがあります。自己肯定感が下がりやすいため、人間関係や学業・仕事にも影響が出る場合があります。
3.生理不順
女性の場合、ホルモンバランスが乱れて生理が止まったり、不規則になったりすることがあります。これは将来の妊娠や健康状態にも影響します。

過食症の予防

過食症は、早期に気づいて対処することで重症化を防げる可能性があります。以下の点に注意しましょう。

1.体型や体重への過剰なこだわりを避ける
やせすぎを目指すダイエット情報やSNSの影響を受けすぎず、健康的な身体づくりを意識することが大切です。
2.ストレスの上手な解消
ストレスや不安がたまると、過食などの行動に向かいやすくなります。適度な運動や趣味、友人との会話など、自分に合った解消法を見つけましょう。
3.周囲からの早期発見・声かけ
家族や友人が、食べ方や体型について極端に悩んでいる様子を感じたら、早めに声をかけ、必要があれば専門医療機関を受診するよう勧めます。
4.正しい知識を身につける
過食症やほかの摂食障害について、学校や保健指導などを通じて正しい理解を深めることで、予防や早期対策につながります。

更新:2026.10.30