外用薬の使い方を教えてください

皮膚科

塗り薬って、ベタベタして嫌だ

塗り薬には、薬(主薬)を混ぜている基剤(主薬を溶かして皮膚に浸透させる役割のもの)によって、いろいろな種類があります。主には、軟膏(なんこう)、クリーム、ローションなどです。これらを皮膚の状態や部位、季節によって使い分けます。傷がある皮膚には刺激感の少ない軟膏を、夏にはベタベタしないクリームを、頭皮などにはローションを、といったように、それぞれの薬には適した使い方があります。

塗った軟膏がベタつくようなら、拭き取らない程度にティッシュで押さえて余分な軟膏を取り除くのも1つの方法です。皮膚の状態にもよりますが、一度主治医に相談してみてください。

どれぐらい塗ればいいの?

「塗り薬を塗っておいてください」と言われても、どれぐらいの量を塗ればいいか分からない……。飲み薬と違って、1回の量が決まっているわけではないので難しいですね。

FTUという言葉を聞いたことはありますか?Finger(フィンガー) Tip(ティップ) Unit(ユニット)、人差し指の先端から第1関節までにチューブから出した量(約0.5g)のことで、これが両手のひらに相当する面積に塗る薬の量です(写真1-a、実際には径によって異なるので、チューブによっては0.2~0.3gしか出ません)。これはいざ塗ろうとすると、意外と多い量であり、本当にこんなに塗るの?と思うような量です。

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写真1 手のひら2枚分の面積に塗る薬の量(a.チューブから出した量、b.ローションタイプ)

実際ここまで塗っている方は多くないと思いますし、ここまで塗らなくても治ることも多いです。しかし、使い切ってほしい、と思って処方した外用薬も、実際は半分も使われていないことがあります。塗る量が足りなければ皮膚の状態はなかなか改善しません。処方された外用薬を塗ってもなかなか治らない、という方は塗る量を見直してみるといいかもしれませんね。

ちなみにローションタイプでは1円玉大が、容器に入った軟膏やクリームでは人差し指の先端から第1関節の半分の長さまですくった量が、この量に当てはまります(写真1-b)。ただ、これらはあくまで目安であり、皮膚がしっとりするぐらいの量、ティッシュが貼り付く程度に塗れば問題ありません。

ステロイドって、怖くない?

「ステロイドって副作用が怖いから塗りたくない」。外来でたびたびこの言葉を耳にします。確かにステロイドは外用薬にも副作用があります。皮膚が薄くなったり、ニキビができやすくなったり、細い血管が拡張したり。

しかし、そもそも本当にステロイドは怖いだけの薬なのでしょうか。ステロイド外用薬には、ステロイドホルモンを人工的に合成したものが入っています。ステロイドホルモンは、もともと人間の体の中で作られているホルモンの1種で、炎症を抑える働きがあります(写真2)。つまり、使い方さえ間違えなければ怖いだけの薬ではないということです。

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写真2 ステロイド外用薬により軽快した接触皮膚炎

世の中で怖いと考えられているステロイド外用薬の副作用の原因の1つは、自己判断で塗ったりやめたりを繰り返し、長い期間に及んで使い続けることです。

また、ステロイド外用薬には大きく分けて5段階の強さがあり、それぞれ体の部位、年齢、肌の状態によって使い分けます(表)。これを自己判断で強さと皮膚の状態が合わないものを使ってしまうと、皮疹(ひしん)が治りはしても副作用が大きく出てしまったり、逆に皮疹が治らず、延々と使い続けてやはり副作用が出てしまったりすることになります。

ランク
strongest(Ⅰ群:最も強い)
very strong(Ⅱ群:とても強い)
strong(Ⅲ群:強い)
medium(Ⅳ群:普通)
weak(Ⅴ群:弱い)
表 ステロイドの5段階の強さのランク

皮膚科医にとって、ステロイド外用薬は最もよく処方する薬の1つです。そのときの皮膚の状態によって、「表」の大きな5段階の強さの中で、さらに細かく分かれている中から適切に使い分けをしています。最初から最後まで同じ薬のときもあれば、途中で強さを変えることもあります。

もちろん皮膚科医が処方した通りに外用しても、副作用が出ないわけではありません。効果と副作用とのバランスをよく見ながらステロイドの強さを調節し、治療を進めていくことが大切です。

ちなみに、ステロイドを塗っても皮膚は黒くなりません。湿疹などの炎症が長く続いてメラニンが過剰に作られることにより、黒くなるのです(炎症後色素沈着)。したがって、むしろしっかりステロイドを塗って炎症を早く抑えることで、色素沈着を防ぐことができます。

更新:2023.08.27