ばいどく

梅毒

基礎情報

概要

梅毒は、性感染症の一つで、梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌に感染することで発症する病気です。感染してから発症するまで3〜6週間程度の潜伏期間があることが特徴で、すぐに症状が現れるわけではありません。また、発症しても数週間で症状が治まるため、放置してしまうケースも見受けられますが、梅毒トレポネーマは確実に増殖し、体内をむしばんでいきます。脳や心臓、神経がダメージを受けると、元に戻ることはないため、早期に治療を開始することが重要です。抗菌薬の服用で完治が可能な病気で、感染すると一定の抗体はできますが、完治しても再び感染する可能性があります。また、HIV感染症など、ほかの性感染症にかかっていると、梅毒にも感染しやすいといわれています。

1940年代までは治療法がなく死に至る病で、1960年代以降は減少を続けていましたが、現在、再び流行の兆しを見せています。

原因

感染者の体液や血液が傷口や粘膜に触れると感染します。主な感染経路は性行為で、皮膚と皮膚の接触だけでは感染しませんが、口腔内は粘膜があるため、キスなどの行為でも感染の可能性があるといわれています。

また、妊娠中に感染することによって、胎盤を介して子どもに感染します。これを先天梅毒といい、早産、死産、新生児の奇形が現れることがあります。

症状

感染してからの期間によって、1期から4期までに分類されています。感染して3週間経つと、全身にさまざまな症状が現れますが、しばらく経つと、治ったり悪化したりを繰り返しながら、進行していきます。治療しない限り、完治することはありません。症状がないからといって治ったと勘違いすると、性行為によって相手を感染させてしまいます。

1期(初期)

感染して3週間後から、3カ月までの期間が1期とされます。

感染が起きた部位(陰部、肛門、口唇部、口腔内など)に、痛みのないしこり、びらん、潰瘍(かいよう)ができたり、太ももの付け根、鼠径部(そけいぶ)といわれる部位が腫れたりすることがあります。痛みがあっても強い症状ではなく、ある程度の期間を経て、治まります。

2期

3カ月以上経過すると、2期に移行します。

進行して、細菌が血液を介して全身に運ばれ、頭からつま先まで赤い発疹(ほっしん)が広がります。小さなバラの花に似ていることから、この発疹をバラ疹といいますが、梅毒の2期に起こる特徴的な症状です。皮膚が硬くなって表皮がむける症状が、手のひらや足の裏に現れることがありますが、これを梅毒性乾癬(ばいどくせいかんせん)と呼びます。

陰部、肛門にしこりが、口腔内に口内炎のような発疹ができることもあります。数週間で症状が軽快することがありますが、治療していなければ、病原菌は体の中で増殖を続けています。

3期

感染から3年以上経過すると、3期に移ります。

皮膚、筋肉、骨、臓器に、ゴム種と呼ばれる硬いしこりができます。ゴム種は、梅毒特有の症状で、深部組織まで病変が進行するといわれています。頭蓋骨、鼻、唇などにできることが多く、やがて崩壊して深い潰瘍になります。

4期

10年以上経過すると、4期になります。臓器、神経、血管、脊髄、脳などに障害を受けて、死に至ります。

図
図:梅毒の主な症状の経過

検査

医師による診察と、血液検査によって行います。血液中の梅毒トレポネーマの抗体ができるのは感染してから3週間後なので、感染が疑われる性行為後3週間が経過してから検査を受けることが推奨されています。感染がわかったら、感染の可能性のあるパートナーなどに必ず伝え、検査を受けてもらうことが大切です。

治療

早期に抗菌薬を内服することによって、完治できます。感染してから時間が経過した分だけ治療期間は長くなりますから、感染が疑われたら医療機関を受診して、早期発見、早期治療をめざすことが何より重要です。症状が重い場合は、入院が必要になるケースもあります。

梅毒は、症状が出たり治まったりしながら進行していく病気です。症状が治まったからといって自己判断せず、医師の指示を守って、処方された薬は必ず継続して服用しましょう。

長期間放置していると、脳や心臓、神経に重大なダメージを与える可能性があるので、症状がなかったとしても不安があれば、必ず検査を受け、適切な治療を受けることが大切です。

予防

梅毒は、感染すると一定の抗体ができますが、再度感染する可能性があります。ほかの性感染症の予防のためにも、性行為にはコンドームが必須です。ただし、コンドームを使用しても感染を絶対に避けられるわけではありませんから、感染している場合は、性行為を控えるべきでしょう。

更新:2022.05.16