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メタボリックシンドローム

基礎情報

概要

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満に高血圧脂質異常症、高血糖などの異常が2つ以上重なった状態です。そのような場合、将来的に心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳卒中などの重篤な病気を引き起こす危険性が相乗的に高くなることから、予防・治療の対象とされています。肥満であっても、内臓脂肪が蓄積されていなければメタボリックシンドロームとは診断されません。

現代の生活では、デスクワークが中心となり、移動手段が車になるなどして運動不足になりやすく、また食生活の欧米化などによって肥満の人が増加していると考えられています。厚生労働省が行った2019年の「国民健康・栄養調査」によると、BMI25以上の肥満の人の割合は男性で33.0%、女性で22.3%にのぼり、男性では40代以降で急激に増え、女性は年齢を重ねるごとに増えています。しかも、男性ではその9割以上がどの年代でも内臓脂肪型肥満です。このタイプの肥満は、メタボリックシンドロームの診断基準となる内臓脂肪の蓄積と高血圧脂質異常症、高血糖などにつながりやすいものです。

健康寿命を延ばすためにも、メタボリックシンドロームに該当する人やその予備群を早期発見し、その人に合った生活習慣の改善を進めることが大切です。

図
図:メタボリックシンドロームの診断基準

原因

メタボリックシンドロームの原因として、もっとも重要なものは生活習慣です。メタボリックシンドロームは運動不足や偏った食生活、睡眠不足など生活リズムの乱れ、ストレス、喫煙といった好ましくない習慣が積み重なることで生じる、生活習慣病の前段階の状態といえます。特に適正カロリーをオーバーした食事、脂質・糖質・塩分の多い食品のとり過ぎは、メタボリックシンドロームに大きく関わっているため、注意が必要です。

内臓に脂肪がたまると、アディポネクチンなどの善玉因子の分泌が低下し、TNF-αやIL-6などの悪玉因子がつくられます。すると血糖値を下げる働きを持つインスリンがうまく作用しなくなり(インスリン抵抗性)、高血圧脂質異常症、高血糖が同時に起こりやすくなります。そして、その状態が続くと糖尿病心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化性疾患を発症しやすくなってしまいます。

日本人は欧米人に比べるともともとインスリンの分泌量が少なく、軽度の肥満でも糖尿病など生活習慣病になりやすいといわれています。また、最近の研究で遺伝的な要因や出生時の体重、家庭環境などもメタボリックシンドロームの発症に影響を与えることが分かってきています。

症状

メタボリックシンドロームになっても、何らかの自覚症状が現れるわけではありません。ただし、さらに内臓脂肪が増え、高血圧や高血糖、脂質の異常などが進行すると、動脈硬化が促進されたり、そのほかの生活習慣病を引き起こしたりすることでさまざまな症状があらわれることがあります。

肥満は、皮下に脂肪がたまりやすい皮下脂肪型肥満と、内臓の周りに脂肪がたまりやすい内蔵脂肪型肥満に分類されます。外見上から、皮下脂肪型肥満は「洋なし型」、内臓脂肪型肥満は「りんご型」ともいわれます。このうち、メタボリック症候群の危険度が高いのは「りんご型」の体型が特徴である内臓脂肪型肥満です。

検査・診断

まず腹囲を測定し、血液検査や血圧測定を行います。メタボリックシンドロームの判断基準は、腹囲が男性なら85㎝以上、女性は90㎝以上あることを必須条件とし、①脂質異常(中性脂肪が150㎎/dL以上かつ/またはHDLコレステロールが40㎎/dL未満)、②高血圧(最高130mmHgかつ/または最低85mmHg以上)、③高血糖(空腹時血糖が110㎎/dL以上)の3つのうち2つ以上に当てはまればメタボリックシンドロームと診断され、1つでも該当すれば予備群であることが疑われます。

内臓脂肪の蓄積を正確に測るには、CT検査が行われることもあります。またメタボリックシンドロームと診断された場合、糖尿病の傾向がないかを調べるために、糖負荷試験が行われることもあります。

治療

メタボリックシンドロームと診断されたら、まず内臓脂肪を減らすことが必要です。そのためには、よく噛んでゆっくり食べること、腹八分目を心がけること、魚や野菜、大豆を多めに栄養バランスの良いメニューを考えること、間食の食べ過ぎは控えること、就寝前に食べないことなど、食生活を見直すことが勧められています。

また運動療法も効果的で、ウオーキングやサイクリング、水泳、水中歩行などが推奨されています。無理のない範囲で、長く続けることが大切です。

急激なダイエットを行うと脂肪だけでなく筋肉も減ってしまい、リバウンドの原因にもなります。3~6カ月かけて体重を3%減らすだけで、血圧や血糖値、コレステロール値などがかなり改善したという最近の報告もあります。メタボリック外来、栄養外来などを設けている病院もあるので、食事や栄養、運動療法などについて相談してみるのもよいでしょう。

更新:2022.08.22