ぼっきしょうがい

勃起障害

基礎情報

概要

勃起障害は、十分な勃起をしない、または勃起を維持できないために、満足な性交ができない状態のことをいいます。以前はインポテンスと呼ばれていましたが、現在はED(Erectile Dysfunction)という呼び方が浸透しています。

成人男性の4人に1人が勃起障害に悩んでいるといわれていますが、実数は定かではありません。性交に関しては個人差があり、デリケートな部分も含まれているため、悩んでいても他人に相談できないケースが多いと考えられているからです。最近では、男性不妊の原因の一つに勃起障害が挙げられています。

図
図:勃起の流れ

原因

勃起とは、陰茎が膨張して硬くなる反応のことです。陰茎には、海綿体と呼ばれる組織がありますが、性的な刺激を受けて脳の中枢が興奮すると、脊髄神経を介して刺激が伝わり、副交感神経の作用で海綿体が弛緩(しかん)して、血液を取り込みます。海綿体は血液を取り込んでスポンジのように膨らむ性質があるため、陰茎は膨張して硬くなります。神経系と血管系が関わる、この一連の流れのどこかに障害が起きると、勃起障害が生じます。

勃起障害には、いくつかの原因があります。

心因性勃起障害

精神的なストレスによって、勃起障害が起こるものです。体の機能には異常が見つからないのに、性交の際に勃起障害を起こすことで、例えば、極度の緊張や妊活のプレッシャー、過去の失敗経験など、精神的なストレスが原因になります。自慰行為など、勃起自体ができないわけではありません。うつ病や躁病、統合失調症アルコール依存症など、精神疾患が隠れている場合があります。

器質性勃起障害

脊髄、副交感神経などの神経系や血管系、尿道や包茎など陰茎の異常によって起こるもので、性的刺激を受けて、勃起するまでの血流や神経伝達に障害があると考えられます。脳血管障害、外傷、
糖尿病、脊髄の損傷なども原因になります。また、直腸がんや前立腺がんの手術後は高い確率で勃起障害が起こりますが、手術の際、勃起に必要な神経が温存できれば、勃起機能が保てます。

血管や精巣、海綿体、男性ホルモンなど、体の機能は年齢とともに衰えますから、加齢そのものも大きな要因の一つです。

混合性勃起障害

心因性勃起障害と、器質性勃起障害が混在するものです。勃起できないことで満足な性交が得られず、それがトラウマとなって、また勃起できなくなるといったケースなど、一つの原因だけに特定できません。

薬剤性勃起障害

長期間、常用している薬がある場合、薬の副作用による勃起障害を起こしていることがあります。抗うつ剤、向精神薬、睡眠薬といった神経に作用する薬をはじめ、高血圧脂質異常症などの生活習慣病、アレルギーなどに対する薬が副作用を起こす可能性があるとして挙げられています。

症状

常に勃起できない、時々勃起できない、特定の条件下では勃起できない、性交の最中に勃起が維持できない、勃起しても硬さが十分でない、勃起するまで時間がかかるなど、性交に伴うさまざまな状態が含まれており、多くの男性に経験があるといわれています。

検査・診断

問診によって、基礎疾患の有無などの健康状態、勃起障害の様子、性生活、射精、性欲などについて確認します。さらに、血液検査、画像検査、視診などを行い、勃起障害の原因となる疾患や、男性ホルモンの分泌状況などを調べます。

また、健康な男性には、性欲とは関係なく、寝ている間に数回勃起する、夜間睡眠時勃起現象という生理現象があるため、リジスキャンやエレクトメーターという測定器で、夜間睡眠時勃起を調べることがあります。さらに、陰茎部への血流を調べるために、海綿体に血管を拡張させる作用のある薬剤を注入して、勃起の程度を確認する検査もあります。

治療

治療の第1選択肢は、薬物治療です。多くの場合、薬物治療によって効果があるといわれています。ただし、治療薬を服用できないケースもあるので、医師による確認が必要です。

薬物治療

薬には、海綿体の弛緩作用によって勃起を促進するホスホジエステラーゼ5(PDE-5)阻害薬と呼ばれる、シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルという3種類の薬があります。いずれも医師の処方箋が必要な薬ですが、勃起不全の薬物治療は保険適用外です。インターネットなどではED治療薬と称して、薬やサプリメントなどが売られていますが、効果が保証されない上に、粗悪品も多く、健康被害も報告されています。受診をためらって、安易にこうした商品に手を出しても、症状の改善にたどり着くことはできません。専門医を受診して、診断を受けた上で、処方箋してもらいましょう。

カウンセリング

心因性の場合は、専門家による治療が必要です。日々感じているストレスを解消するだけで、治ることがありますが、それだけでは不十分な場合には、精神科や心療内科を受診して心理療法によってストレスが軽減される考え方を身につけたり、心理カウンセリングを受けたりといった方法があります。

生活習慣の改善

喫煙や肥満、高血圧糖尿病など、生活習慣病は大きなリスクになります。規則正しい生活を心がけ、毎日の生活に運動を取り入れることは、勃起障害の予防にもつながりますから、前向きに取り組む必要があるといえます。

更新:2022.08.25