脳動脈瘤
基礎情報
概要
脳動脈瘤とは、脳の動脈の一部に発生した、風船のように膨らんだこぶです。血管が枝分かれしている部分に発生することが多いのですが、ほかの部分にできることもあります。
こぶが破裂すると、脳を包んでいるくも膜と呼ばれる膜の内側に出血するくも膜下出血を引き起こして、命に関わる重大な事態になったり、後遺症が残ったりする可能性が高いとされています。
こぶが破裂していないうちは、ほとんどの場合は症状が出ないため、脳ドックなどでの検査で偶然発見されることが多い疾患ですが、脳動脈瘤の大きさが5~7mm以上の場合は治療がすすめられます。また、脳動脈瘤の大きさが5~7mm未満でも、こぶが脳神経を圧迫して、まぶたが垂れてくる、瞳孔がひらくなどといった重大な症状が出ている場合や、こぶの入り口が狭くて直径が大きい場合などは、破裂する可能性が高いため、治療が必要になります。
原因
脳動脈瘤ができる原因としては、脳血管の先天的な異常や遺伝的な要因に加えて、喫煙や高血圧、動脈硬化、糖尿病など、血管や血流に影響を与える疾患も発症リスクに関係する可能性が高いと考えられています。こうしたさまざまな要因によって、脳動脈の血管にストレスがかかって慢性的なダメージを受けて発症するのではないかといわれています。
脳動脈瘤がなぜ破れるのかに関する明確な原因は示されていません。脳動脈瘤ができたときにすぐ破裂してしまうもの、安定して落ち着いてしまうものなどさまざまです。
症状
脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血が起こり、経験したことのないような突然の激しい頭痛、どんどん強くなる頭痛、血圧の激しい上昇と下降、視力低下やめまい、吐き気や嘔吐(おうと)、意識低下などの症状が起こります。
一方で未破裂脳動脈瘤は、発生した場所と大きさによっては、周辺の神経や脳を圧迫し、次のような症状が出ることがあります。
- 頭痛
- めまい
- ものが二重に見える
- 目が開けづらい
- 視野(しや)が狭くなる
- ふらつく
- 食べ物が飲み込みづらい
検査
未破裂脳動脈瘤は、MRI検査やCT検査で発見されることが多い疾患です。
また、脳の血管の状態をより綿密に診断するためにはMRA検査(磁気共鳴血管撮影)を行います。
これらの検査で脳動脈瘤が見つかったとしても、必ずしも治療が必要とはされず、経過観察となる場合も多く見られます。
治療
破裂を防ぐことが、何より重要な治療の目的となります。
脳動脈瘤が見つかると、こぶの大きさや形、できた場所、患者さんの年齢や全身状態、家族の背景、ほかの病気の有無、精神状態など、さまざまな要因を総合的に判断して、治療の方針が決められていきます。
脳動脈瘤の治療方法は、大きく分けて経過観察、外科的手術(開頭による手術)と血管内治療となります。手術の必要がないと診断された場合でも、慎重な経過観察が必要となります。
経過観察
6カ月~1年に1度はMRAなどの検査を行い、こぶの状態を定期的に調べます。
開頭によるクリッピング術
全身麻酔で行われる手術で、頭蓋骨を開け、顕微鏡を使って脳動脈瘤の根本部分に金属製のクリップをかけ、血液が流れ込まないようにします。同じ場所での脳動脈瘤の再発がほとんどなくなるため、確実な治療方法とされていますが、手術時間が長く、体への負担は大きいものとなります。
血管内治療によるコイル塞栓術
足の付け根、あるいは腕の血管からカテーテルと呼ばれる柔らかく細い管を入れ、脳にできた動脈瘤まで進め、細くて柔らかいコイルを挿入し、隙間なく満たします。コイルは、白金をベースにタングステンなどを混ぜた合金や、プラチナなどを素材にして、形状や太さ、長さ、柔らかさが違ったさまざまな種類があります。瘤の形に合わせて複数のコイルで隙間なく埋めます。
動脈瘤の形によっては、挿入したコイルが血管に出てきてしまうことがあります。その場合は、先端に風船が付いたカテーテルで動脈瘤の入り口を一時的に塞いだり、ステントという金属の筒を動脈瘤の入り口に置いたりするなどの対処が行われます。
体への負担が軽い治療方法ですが、時間が経つとコイルがつぶれて、動脈瘤へ再び血液が流れ込むこともあるため、慎重な経過観察が必要となります。
更新:2022.08.22