くろーんびょう

クローン病

基礎情報

概要

クローン病は、主に小腸や大腸などの消化管にただれや潰瘍などができ、慢性的な炎症を引き起こす病気です。潰瘍性大腸炎と似ている点も多く、2つを総称して「炎症性腸疾患」と呼びます。口の中から肛門までの部位に現れる可能性があり、血便や下痢、腹痛などさまざまな症状を引き起こします。

難病に指定されていて(難病情報センター/https://www.nanbyou.or.jp/entry/81)、治療は長期に及ぶことがあります。しかし、適切な治療をして症状を抑えることができれば、健康な人とほとんど変わらない日常生活を続けることが可能です。

以前はまれな疾患でしたが、年々増加しており、厚生労働省の「患者調査」によると、平成29(2017)年の国内のクローン病の総患者数は2万4000万人です。年代では10~20歳代で発症するケースが多く、男女比は2対1で男性に多い傾向があります。

図
図:クローン病による炎症がよくできる場所

原因

クローン病の原因は腸管での異常な免疫反応によるものとされていますが、はっきりと解明されていません。免疫の制御がうまく働かなくなる理由としては、遺伝子や腸内細菌などの影響が考えられます。また、人種や地域によって発症率が異なり、同じ家系内で発症しやすいことから、遺伝的な要因が関わっている可能性があります。

動物性脂肪やタンパク質を多くとる人のほうが発症しやすく、食物中の成分、腸内細菌が微抗原となって異常反応を引き起こすことも原因の一つとされています。

そのほか、内視鏡検査による診断が容易になったことや、病気の認知度が高まったことも関係していると考えられます。特定のウイルスや細菌による感染、腸の血流の悪化などによって発症するという説もあります。

症状

クローン病の初期症状として多いのは腹痛と下痢で、血便もよく見られます。病変が生じやすい部位は、回腸(小腸と大腸のつながる部分)と大腸ですが、潰瘍性大腸炎とは異なり口から肛門に至る消化管のどの部分にも起こる可能性があります。炎症が生じた範囲によって、病変が小腸だけにある小腸型、大腸だけにある大腸型、両方にある小腸・大腸型に分類されます。

重症になると、腸の壁に穴が開いたり、腸管が狭くなったり、膿がたまったりすることがあります。腸の栄養吸収能力も低下するため、長引くと体重の減少や、発熱、貧血、関節痛、だるさといった全身症状が現れやすくなります。さらに、肛門付近の異常(膿瘍[のうよう]や痔瘻[じろう])、口内炎(アフタ)、皮膚や目に病変が起こることもあります。また、クローン病の特徴として、症状が改善しても再発を繰り返しやすいことが挙げられます。

検査・診断

血液検査では、炎症反応上昇や貧血、低栄養状態が分かります。CRP(C反応性タンパク)や白血球数、血小板数、血沈などが基準範囲の値を超えている場合は、体内のどこかに炎症が生じている可能性が高いと判断でき、Hb(ヘモグロビン)濃度で腸からの出血を知ることができます。

便潜血検査では便に血液が混ざっていないかを、便培養検査では便の中に血便を起こす菌がいないかを確認し、クローン病と似た症状を起こすほかの病気と見分けます。

内視鏡検査で消化管の内側の様子を観察すると、クローン病の場合、正常な粘膜の中に潰瘍やびらんが飛び飛びに見られます。縦走潰瘍(じゅうそうかいよう)と呼ばれる縦方向にできる細長い潰瘍や、敷石像(しきいしぞう)と呼ばれる石を敷き詰めたように隆起した腸粘膜の状態が特徴的です。消化管X線造影検査は腸が細くなって内視鏡が通過しない場合でも行うことができ、病変の範囲や分布、炎症の状態が確認できます。

クローン病では、消化管全体の検査が必要となるため、CT検査やMRI検査を行う場合もあります。

治療

クローン病の治療では、炎症などを改善し、免疫の働きを抑える作用のある薬を用いた薬物療法が中心となります。主に用いられるのはステロイドや炎症抑制薬などで、免疫を調整することで炎症を抑える免疫調節薬や体内の炎症物質に働きかける生物学的製剤などが用いられることもあります。

栄養療法も重要で、脂肪や食物繊維の多い食品は避けるようにします。重症になると、入院して絶食と点滴で栄養を補う治療(中心静脈栄養)が必要です。腸の壁に穴が開いたり、腸が狭くなったり、腸閉塞を起こしたりした場合、外科手術が必要になることもあります。

クローン病は多くの場合、症状が悪化した活動期と症状が落ち着いている寛解(かんかい)期を繰り返します。疲労や過度のストレスによって悪化しやすいため、腸にやさしく栄養バランスの良い食事をし、十分な休養と睡眠をとり、ストレスをためない生活を送ることが大切です。

更新:2022.08.22