腰痛
基礎情報
概要
腰痛は、誰もが経験するといっていいほど、よくある症状のひとつです。厚生労働省による国民生活基礎調査(2019年)でも、病気やけがの自覚症状で、腰痛は男性で1位、女性で2位という結果が出ています。
すぐに治まるだろうと、自己判断でやり過ごそうとするケースも見られますが、骨や筋肉に異常をきたしていたり、内臓の病気や腫瘍が原因になっている場合がありますから、しっかりと検査して、正しい治療法を選択することが大切です。
症状
腰痛の症状は、大きく2つに分けられます。1つは、急に鋭い痛みを起こす急性腰痛(ぎっくり腰など)です。痛みだけではなく、しびれを感じることもあり、日常生活での動作、立ち上がる、起き上がる、座る、立つなどの動作が困難になりますが、1週間程度で痛みは治まります。もう1つは慢性腰痛で、鈍い痛み、重い、だるいといった症状が3カ月以上続きます。腰全体や足、お尻まで、広い範囲に痛みやしびれを感じることもあります。
原因
日常生活で行う動作や姿勢、運動不足、ストレス、加齢など、腰痛の原因はたくさんありますが、骨や筋肉の病気や、内臓の病気によるものであることがわかったら、その疾患に応じた治療が必要になります。
骨や筋肉の異常が原因
- 腰部椎間板(ようぶついかんばん)ヘルニア
- 椎間関節症(ついかんかんせつしょう)
- 変形性脊椎(せきつい)症
- 腰部脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)
- 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
- 筋膜性疼痛症候群(きんまくせいとうつうしょうこうぐん)
- 脊椎圧迫骨折
- 脊椎分離症
- 脊椎すべり症
内臓の異常が原因
- 尿路結石などの消化管の病気
- 子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科系疾患
- 膵臓(すいぞう)がんや肝臓がんなど
- 解離性大動脈瘤(かいりせいだいどうみゃくりゅう)など血管の病気
- 統合失調症など心因性によるもの
検査
問診、触診を行った上で、画像診断を行います。触診では、痛む場所や範囲、筋肉の硬さなどを触って確認します。主な画像診断は、X線検査、CT検査、MRI検査ですが、X線検査は、腰全体を写して腰椎や骨の変形が確認できる検査、CT検査は骨、MRI検査は神経や筋肉を見るのに適した検査です。さらに詳しく調べる必要がある場合は、造影剤を使用したMRI検査や、筋電図検査を行います。内臓に原因があると考えられる場合は、血液検査、超音波検査などによって原因を特定します。
治療
原因に応じた治療を行います。内臓の病気が原因のときは、内臓の治療を優先します。骨や筋肉の病気、けがのときは、手術が選択肢に入ることがありますが、原因が特定されない場合も含め、最初の治療は保存療法になります。保存療法には、運動療法、薬物療法、コルセットの装着による腰部の安定などがありますが、まずは筋力をつけ、腰に負担のかからない動作を身につける運動療法から始めます。BMI値が高い方は、体重を減らすことも有効です。多くの腰痛患者さんは、保存療法によって痛みが軽減されますが、軽減されない場合は、神経ブロック療法や手術が検討されます。
運動療法
常日頃から、腰に負担がかからないような姿勢を心がけます。さらに、腹筋、背筋を強化する筋力トレーニングを行って、腰をしっかり支える体を作ることが運動療法の基本です。ストレッチなど体を伸ばして柔軟性を得ることで、腰にかかる負担を減らすことも大切です。こうした方法は、腰痛を予防するためにも高い効果を発揮しますから、痛みがなくなったと思っても、継続することが望ましいでしょう。
薬物療法
貼り薬や塗り薬で炎症を抑えて痛みを和らげます。また、アセトアミノフェンなどの鎮痛薬が処方されることもあります。こうした処方で効果が得られない場合には、神経が障害されたときに効果を発揮する鎮痛剤や、がんなどの強い痛みに処方される鎮痛薬、脳から出される伝達作用を抑えて、筋肉の緊張を緩和する筋弛緩(きんしかん)剤といった薬が検討されます。いずれも、痛みを抑える効果は高い半面、副作用もあり、患者さんによっては、使用できない場合があります。
神経ブロック療法
腰に直接、麻酔薬やステロイドを注射する方法です。腰の神経から脳に痛みの信号が送られるのを、一時的に防ぎます。強い痛みで日常生活に支障をきたすなどといった場合に、選択する方法です。
更新:2022.08.25