卵円孔開存症
基礎情報
概要
卵円孔開存症(らんえんこうかいぞんしょう、以下PFO)は、心臓の左右の心房(※1)の間にある「卵円孔」と呼ばれる小さな穴が、生まれてからも閉じずに残ってしまう状態を指します。もともと胎児のときは、肺がまだ機能していないので、体内の血液はこの卵円孔を通じて心臓の右から左へ流れます。しかし、生まれて肺呼吸を始めると、この穴は自然にふさがるのが通常です。ほとんどの人は治療を必要としません。
※1:血液を受け入れる部屋

卵円孔開存症の原因
PFOは先天性の心臓の形態変化の一つです。原因といっても特別な要因があるわけではなく、胎児期に心臓の左右の心房をつなぐ卵円孔が、出産後も自然に閉じずに開いたままになってしまうことで起こります。これは病気といえる場合とそうでない場合があります。ほとんどのケースでは血液の流れに大きな影響はなく、健康診断や別の目的の検査をきっかけに偶然見つかることが多いです。ほとんどの人の場合、この開口部は乳児期のある時点で閉じます。
卵円孔開存症の症状
PFOがあるだけでは、通常ははっきりした症状はありません。そのため、ほとんどの人は自分にPFOがあることに気付かず、一生を過ごします。こうした症状はごく一部の人に限られるため、PFOを持っていても多くの場合は治療を必要としません。しかし、疑わしい症状がある場合は、医療機関で検査を受けることが勧められます。
卵円孔開存症の検査・診断
PFOが疑われるときは、以下のような検査を行います。
- 1.経胸壁心エコー(けいきょうへきしんエコー)
- 胸の上から超音波を当てて、心臓の動きや構造を観察します。非侵襲的(ひしんしゅうてき:体に傷をつけない方法)で、苦痛が少ないのが特徴です。
- バブルテスト:心エコー検査の一部として、腕の静脈に微細な気泡を含む生理食塩水を注入し、それが右心房から左心房にすぐに流れるかを観察します。もしPFOがあれば、気泡が短時間で左側の心房に移動する様子が確認されます。
- カラードップラー:心臓内を移動する血液細胞に音波が反射すると、音の高さが変わります。この変化はドップラー信号と呼ばれ、心エコー図では異なる色で表示されます。この検査では、心臓内の血流の速度と方向がわかります。
- 2.経食道心エコー(けいしょくどうしんエコー)
- 食道の中に細い超音波プローブを入れて、より詳しく心臓の内部を見る方法です。経胸壁心エコーより詳細に観察できる一方、体への負担は少し大きくなります。これは、卵円孔開存症を診断する最も正確な方法と考えられています。
卵円孔開存症の治療
PFOがあるだけで、すべての人が治療を必要とするわけではありません。多くの場合は無症状で合併症のリスクも低いため、治療せずに経過観察をすることが一般的です。治療が必要となるのは、以下のような場合です。
- 1.原因不明の脳梗塞を発症した場合
- 若い年代で原因不明の脳梗塞が起き、検査の結果PFOが見つかった場合などは、PFOが血栓の通り道になった可能性を疑い、治療を検討します。治療法には次のようなものがあります。
- カテーテル閉鎖術:カテーテルを使い、心臓の中でPFOの穴を閉じる器具を設置する方法です。開胸手術に比べ体の負担が少ないとされています。
- 内科的治療:血液をサラサラにする抗血栓薬や抗凝固薬(※2)を使用し、脳梗塞やほかの合併症を予防します。ただし、PFOそのものを完全にふさぐわけではありません。
- 2.偏頭痛と強い関連が疑われるケース
- 研究によっては、PFOを閉じることで偏頭痛の症状が改善する可能性が示されていますが、現時点では最初の治療法としては推奨されていません。
※2:血液が固まるのを防ぐ薬
卵円孔開存症の合併症
PFO自体では大きな合併症はあまり起こりませんが、以下の点に注意が必要です。
- 脳梗塞
- 静脈側でできた血栓が、PFOを通じて動脈側に移動し、脳血管やほかの臓器の血管を詰まらせる恐れがあります。特に脳で詰まると脳梗塞を引き起こす可能性があります。
- 低酸素血症
- まれに、卵円孔開存により大量の血液が肺を巡ることがあります。これにより血中酸素濃度が低下し、低酸素血症と呼ばれる状態になります。
更新:2026.02.04
