かいりせいどういつせいしょうがい

解離性同一性障害

解離性同一性障害

概要

解離性同一性障害は、以前は「多重人格障害」と呼ばれていた心の病気です。この病気では、一人の中に複数の人格が存在し、それぞれが交代で現れることがあります。これらの人格は、話し方や考え方、行動が異なることが多く、本人がその変化に気づかないこともあります。また、ある人格のときに起こった出来事を、別の人格のときには思い出せないこともあります。

この病気は、心に大きな傷を負った経験が原因で起こると考えられています。日本ではあまり知られていない病気ですが、適切な治療を受けることで、症状の改善が期待できます。

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図:解離性同一性障害

解離性同一性障害の原因

解離性同一性障害の主な原因は、子どものころに経験した強いストレスや心の傷です。たとえば、虐待や事故、災害など、心に大きなショックを受ける出来事が関係しています。
幼少期にこうした大きな苦痛を受けた際、「これは自分のことではない」と意識を切り離すことで、心の崩壊を防ごうとする「生存戦略」や「防衛反応」が解離の正体です。その切り離された意識が、独立した一人の人間としての性質を持つようになったものが「交代人格」です。

解離性同一性障害の症状

解離性同一性障害の主な症状には、以下のようなものがあります。

複数の人格が交代で現れる
一人の中に異なる性格や行動を持つ人格が存在し、それぞれが交代で現れます。
記憶の抜け落ち
ある人格のときに起こった出来事を、別の人格のときには思い出せないことがあります。
時間の感覚がなくなる
気づいたら時間が経っていたり、自分が何をしていたのか覚えていないことがあります。
自分が自分でないように感じる
自分の体や行動が他人のもののように感じることがあります。
身に覚えのない所持品
買った覚えのない服がクローゼットにあったり、カバンの中に知らないレシートが入っていたりします。
場所の移動
気づいたら知らない場所に立っており、どうやってそこまで来たのか思い出せないことがあります。
周囲との齟齬
友人から「さっき会った時にあんなことを言ったよね」と言われても、全く記憶にないといったことが繰り返されます。

解離性同一性障害の検査・診断

解離性同一性障害の診断は、専門の医師が行います。まず、本人や家族から詳しい話を聞き、症状や過去の経験を確認します。

診断には慎重なプロセスが必要です。脳の病気や薬物の影響、あるいは他の精神疾患(統合失調症の幻聴など)ではないことを確認するために、血液検査や画像検査を行うこともあります。長期間にわたる面接を通じて、症状が演技や虚言ではないか、人格の交代が持続的であるかを確認します。

必要に応じて、心理テストや質問票を使って、他の病気との違いを調べます。

診断には時間がかかることもありますが、正確な診断が適切な治療につながります。

解離性同一性障害の治療

心理療法(カウンセリング)
専門のカウンセラーと話をすることで、心の傷を癒し、バラバラに分かれていた複数の人格(性格や記憶など)を、一つにまとめて安定した自分として生きられるようにすることです。
ただし、治療の最終目標は必ずしも「人格の統合(一つになること)」だけではありません。「それぞれの人格が互いの存在を認め、協力して一つの生活を送れるようになること(共存)」をゴールに置くことも多いです。安心できる環境を整え、主治医との信頼関係の中で少しずつ過去のトラウマを整理していきます。
薬物療法
不安やうつなどの症状がある場合、薬を使って症状を和らげることがあります。

治療は長期間にわたることが多いですが、継続することで症状の改善が期待できます。

解離性同一性障害の合併症

解離性同一性障害の人は、以下のような他の問題を抱えることがあります。

うつ病や不安障害
気分が落ち込んだり、不安を感じることがあります。
自傷行為や自殺願望
自分を傷つけたり、命を絶ちたいと感じることがあります。

これらの問題に対処するためにも、早めの治療が大切です。

解離性同一性障害の予防

解離性同一性障害を完全に防ぐことは難しいですが、以下のようなことが予防につながります:

子どもを安心できる環境で育てる
愛情を持って接し、安心できる家庭環境を作ることが大切です。
ストレスやトラウマに早めに対処する
心に傷を負ったときは、早めに専門家に相談しましょう。

解離性同一症は、心の深い傷が原因で起こる病気ですが、適切な治療を受けることで、症状の改善が期待できます。自分や周りの人がこのような症状に悩んでいる場合は、早めに専門家に相談することが大切です。また、交代人格が出てきたときに否定したり、無理に元の人格に戻そうとしたりせず、まずはそのままの相手を受け入れる姿勢が大切です。

更新:2026.05.13