ライム病(ライムボレリア症)
概要
ライム病は、ボレリア・バーグドルフェリ菌などの細菌が原因で起こる病気です。主にマダニにかまれることで感染します。アメリカ合衆国の一部地域ではよく見られ、日本でも海外渡航時などにダニにかまれて発症する例が報告されています。ただし国内の症例数は多くなく、依然としてまれな病気とされています。しかし、海外旅行先などでダニにかまれる可能性があるため、正しい知識を身につけておくことが大切です。
ライム病の原因
ライム病は、ボレリア・バーグドルフェリ菌などが体内に入ることで引き起こされます。感染の多くは、野生動物に寄生しているマダニが人をかむ際に起こります。マダニは山や森林など草木が多い場所にすみ、人の皮膚にくいついて血を吸う習性があります。ダニにかまれるときは、かまれた瞬間に痛みを感じにくいことが多いため、気づかないまま感染する可能性があります。
また、すべてのマダニがこの細菌をもっているわけではありません。しかし、ライム病の原因菌を保有するダニが生息する地域(北アメリカ、ヨーロッパなど)に行ったときは特に注意が必要です。
ライム病の症状
ライム病の初期症状としてよく知られているのが、かまれた部分を中心に広がる「遊走性紅斑(ゆうそうせいこうはん)」という赤い発疹(ほっしん)です。発疹は真ん中がやや薄く、輪のように見えることがあります。かゆみや痛みを伴う場合もありますが、症状が軽いことが多く、発疹が出ても気づかないまま放置されることがあります。
その他の初期症状としては、発熱、寒気、疲労感、頭痛、筋肉痛、関節痛など、かぜのような症状が出ることがあります。治療をしないまま放置すると、数週間から数カ月後に次のような症状が現れる可能性があります。
- 関節炎による関節の腫れや痛み(特に膝関節が多い)
- 心拍が乱れるなどの心臓の症状
- 顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)などの神経症状

ライム病の検査・診断
ライム病を疑った場合、医療機関では症状や滞在先、ダニにかまれた可能性などを詳しく確認します。早期に発疹が確認できれば、臨床的にライム病を強く疑うことができます。
ただし、症状だけではほかの病気と区別しにくいこともあるため、血液検査が行われることが多いです。代表的な検査は、酵素結合免疫吸着法(こうそけつごうめんえききゅうちゃくほう:ELISA)やウエスタンブロット(※1)などで、ボレリア・バーグドルフェリ菌への抗体(※2)の有無を調べます。ただし、感染初期には抗体が十分に検出されない場合もあるため、医師の判断で再検査をすることもあります。
※1:たんぱく質の分析法
※2:免疫反応ができるたんぱく質
ライム病の治療
ライム病は早期に見つけて治療を行えば、ほとんどの人が回復します。治療の中心となるのは抗生物質です。主にドキシサイクリン(※3)、アモキシシリン(※4)、セフロキシム・アキセチル(※5)などが処方されます。症状や重症度、年齢、妊娠の有無などによって使われる薬は異なります。
通常、抗生物質を数週間服用すれば症状は大きく改善します。ただし、症状が進んで神経症状や関節症状が出ている場合は、点滴による抗生物質が必要となることもあります。治療後も一部の症状が長く続く場合がありますが、その原因については十分に解明されておらず、追加の治療や経過観察が行われることがあります。
※3:抗生物質の一種
※4:広く使われるペニシリン系の抗生物質
※5:セフェム系抗生物質
ライム病の合併症
ライム病を放置すると、数カ月から数年後に深刻な合併症に発展する可能性があります。代表的な合併症は以下のとおりです。
- 慢性的な関節炎:特に膝関節で強い痛みや腫れが長く続くことがあります。
- 神経症状:末しょう神経障害(※6)や顔面神経まひなど。
- 心臓の異常:心拍が不規則になったり、心臓の機能障害が起こる場合があります。
早期に適切な治療を受けることで、こうした合併症のリスクを抑えることができます。
※6:体の末端にある神経のトラブル
ライム病の予防
ライム病は、ダニにかまれないようにすることが最も重要です。特に森林や草むらなど、ダニが多く生息する場所に行く際は注意してください。予防策としては、次のようなものがあります。
- 長袖・長ズボン・帽子など肌の露出を減らす服装をする。ズボンの裾を靴下の中に入れるとさらに効果的です。
- 虫除けスプレーを衣服や皮膚に使用する。
- 戸外活動後はすぐにシャワーを浴び、体にダニがついていないか確認する。特に髪の毛の生え際や耳の後ろ、わきの下、足の付け根などは丁寧にチェックする。
- ペットを飼っている場合は、ペットにもダニよけ対策を行い、定期的にブラッシングしてダニがついていないか確認する。
もしダニにかまれた場合は、無理にちぎったりつぶしたりせず、ピンセットなどを使って皮膚に近い部分をしっかりつかみ、ゆっくりと取り除きます。その後、傷口を洗浄・消毒し、必要に応じて医療機関を受診します。海外旅行中や帰国後に体調不良があった場合は、旅行先の地域やダニにかまれた可能性を医師に伝えるようにしてください。
更新:2026.05.13

