はいどうみゃくせいはいこうけつあつしょう

肺動脈性肺高血圧症

概要

肺動脈性肺高血圧症(はいどうみゃくせいはいこうけつあつしょう)は、心臓から肺へ血液を送り出す血管である肺動脈(はいどうみゃく)に高い圧力がかかる状態のことを指します。本来、肺動脈には酸素を取り込みやすいように適度な圧力で血液が流れますが、この圧力が高くなると右心室(うしんしつ)(*1)に大きな負荷がかかり、心臓の働きや肺の機能に支障をきたすおそれがあります。進行すると、日常生活でも動きづらくなるだけでなく、生命にかかわる場合もあります。肺動脈性肺高血圧症は比較的まれな病気とされ、指定難病に認定されています。

参考:肺動脈性肺高血圧症(指定難病86)/難病情報センター

*1:心臓の右側

肺動脈性肺高血圧症の原因

肺動脈の変化

 肺動脈の内側の細胞が異常に増殖し、血管が狭くなったり硬くなったりすることで血圧が上昇します。これは「血管内皮機能障害(けっかんないひきのうしょうがい)」とも呼ばれます。

ほかの病気による影響

左心不全(さしんふぜん)(*2)や、慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)や間質性肺疾患(かんしつせいはいしっかん)などの肺の病気が原因で、肺動脈に高い圧力がかかることがあります。また、一部の先天性心疾患(せんてんせいしんしっかん)によっても肺高血圧症が起こります。

*2: 心臓の左側に生じる障害

遺伝的な要因

遺伝的に肺高血圧症が認められる場合もあります。原因となる遺伝子の変異が特定されていることもありますが、必ずしも家族内に同じ症状が出るとは限りません。

薬剤やその他の要因

一部の食欲抑制薬などを長期間使用することで肺高血圧症を発症する場合があるといわれています。そのほか、原因不明の「特発性(とくはつせい)肺高血圧症」と呼ばれるタイプも存在します。

肺動脈性肺高血圧症の症状

肺動脈性肺高血圧症の症状は、初期にはあまりはっきり出ないことがあります。しかし、病気が進行すると、以下のような症状がみられやすくなります。

息切れ、呼吸困難

運動時に息切れしやすくなり、進行すると安静時でも呼吸が苦しくなる場合があります。

疲れやすい

少し動いただけでも疲労感を強く感じるようになります。体が酸素不足になりがちなため、全身の疲れが抜けにくくなります。

胸の痛みや圧迫感

胸の中央付近に違和感や圧迫感を覚えることがあります。心臓に負担がかかるため、胸部症状が出現することがあります。

めまい・失神

血圧のコントロールが難しくなり、急に立ちくらみや気を失うことがあるため、転倒などの二次的なケガにも注意が必要です。

動悸(どうき)

心臓の鼓動が強くなったり、脈のリズムが不規則になったりする場合があります。

これらの症状は、ほかの心臓病や肺の病気でも起こり得るため、早めに医療機関を受診して適切な検査を受けることが重要です。

肺動脈性肺高血圧症の検査・診断

身体診察・問診

医師が聴診器を使って心音や肺の音を確認します。また、運動時の息切れの程度や病歴、家族歴などについて詳しく問診します。

心エコー検査

超音波を用いて心臓の形や動きを映し出します。右心室の壁の厚さや肺動脈の血流速度を推定し、肺高血圧症の疑いがあるかを評価します。

心臓カテーテル検査

カテーテル(*3)を血管から心臓や肺動脈に挿入し、血圧や血流を直接測定します。肺高血圧症の確定診断に不可欠な検査であり、どの程度血圧が上昇しているかを正確に把握します。

*3:体内に挿入して、検査や治療などを行うための柔らかい細い管

肺機能検査

肺の大きさや呼吸機能を測定します。肺にほかの病気がないか、また肺がどれぐらい正常に働いているかを把握するために行われます。

画像検査(CTやMRIなど)

肺動脈や心臓の状態、ほかに病気がないかを詳しく調べるために、CTやMRIを使うことがあります。

肺動脈性肺高血圧症の治療

肺動脈性肺高血圧症の治療では、症状の進行を抑え、心臓や肺にかかる負担を軽減することが目標となります。治療法は以下のように多岐にわたります。

薬物療法

血管拡張薬(けっかんかくちょうやく)
肺動脈を広げる作用を持ち、心臓から肺への血液の流れを良くします。
利尿薬(りにょうやく)
体内の余分な水分を排出して、心臓や肺にかかる負担を軽くします。
抗凝固薬(こうぎょうこやく)
血栓(けっせん)ができにくくなるようにし、血管が詰まるのを予防します。
酸素療法
血中の酸素濃度が低い場合は、在宅酸素療法などにより酸素を補います。

生活習慣の改善

運動療法
医師や専門スタッフの指導のもと、無理のない範囲でウォーキングなど軽い運動を行い、心肺機能を保つようにします。
禁煙
たばこは肺や血管を傷つけ、肺高血圧症を悪化させる原因の一つです。できるだけ早い段階で禁煙を心がけます。
塩分・水分管理
塩分や水分の摂取を適切に調整し、血圧やむくみのコントロールをはかります。

手術療法や高度医療

病状によっては、心臓や肺の手術、または肺移植(はいしょく)などの高度な医療措置が検討される場合があります。

肺動脈性肺高血圧症の合併症

肺動脈性肺高血圧症が進行すると、心臓への負担が大きくなり、以下のような合併症が生じる可能性があります。

右心不全(うしんふぜん)

右心室が高い肺動脈圧に抵抗して血液を送り出そうとするうちに、肥大や拡張が進み、最終的に機能不全(*4)になることがあります。

不整脈(ふせいみゃく)

心臓の拍動が乱れ、動悸や胸の不快感、失神などを引き起こします。

血栓症(けっせんしょう)

血液が固まりやすくなると、肺動脈などの血管が詰まりやすくなり、急激に病状が悪化するリスクがあります。

低酸素血症(ていさんそけっしょう)

血液中の酸素濃度が下がることで、全身の臓器に十分な酸素が行き渡らず、倦怠感(けんたいかん)や集中力の低下、心不全などにつながる場合があります。

*4:十分に血液を送り出せない状態

肺動脈性肺高血圧症の予防

肺動脈性肺高血圧症の中には、はっきりした原因がわからない場合も多いため、すべてを予防することは難しいとされています。しかし、以下のような点に注意することでリスクを減らすことが期待できます。

禁煙や受動喫煙の回避

たばこの煙は肺や血管を傷つける一因といわれています。

定期的な健康診断

心臓や肺の病気は早期発見が重要です。定期検査を受けることで、関連する病気を早めに見つけ、肺動脈性肺高血圧症の発症や悪化を防ぎやすくなります。

適度な運動と体重管理

運動不足や肥満は高血圧や心疾患のリスクを高め、肺高血圧症の引き金となることがあります。無理のない範囲で日常的に運動を続け、健康的な体重を保つよう心がけましょう。

原因となる病気の治療

慢性閉塞性肺疾患など肺の病気や、左心不全などの心臓の病気がある場合、適切な治療や管理を行うことで肺動脈性肺高血圧症を引き起こすリスクを抑えることができます。

更新:2025.02.21

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