ねふろーぜしょうこうぐん

ネフローゼ症候群

概要

ネフローゼ症候群とは、大量のタンパクが尿中へ漏れ出てしまうことにより、血液中のタンパクが減少して皮膚に水分が逃げ出して浮腫(ふしゅ)(むくみ)が生じる疾患です。

腎臓の役目は、尿を作り、体に水が溜(た)まらないように調節し、老廃物(体内のゴミ)を尿として捨てることです。腎臓の血管は、タンパクや血液が尿に漏れ出ないように細かな網目になっていて篩(ふるい)の役目をしています。ネフローゼ症候群になると、この篩の網目全体が大きくなり、大量のタンパクが尿に出て体から失われます(図)。

図
図:ネフローゼ症候群のときの腎臓の動き

ネフローゼ症候群では、感染症と血栓症の合併症が問題になることがあります。特に、タンパクの減少により、タンパクの中に含まれる免疫グロブリンという抵抗力の素が減少し、肺炎や胃腸炎が悪化したり、重症感染症の腹膜炎や水痘(みずぼうそう)などで命を落とすこともあります。また、血液がどろどろの状態になりやすいため血栓症が生じやすく、水分量の調節が大切です。

症状

ネフローゼ症候群の症状は、以下のものがあります。

軽度
むくみ(浮腫)
体重増加
下痢、腹痛
食欲不振
重度
腹水、胸水
腹腔や胸腔に水がたまる
腹部膨張感
呼吸困難
咳や淡

タンパクには血管の水分を保つ働きがあり、血液中のタンパクが減ると皮膚に水分が逃げ出してむくみが起こります。同時に尿量も減って、不要な塩分も捨てられなくなり、喉(のど)が渇いて更に水分を取るため、浮腫に拍車がかかります。

原因

ネフローゼ症候群の原因は、免疫の異常、具体的には、白血球の一種であるリンパ球(Tリンパ球やBリンパ球)が作る物質が悪影響しているとされていますが、はっきりとは分かっていません。腎臓自体に問題があり、遺伝子検査で原因が明らかになるケースもまれにあります。

検査・診断

まずは尿検査と血液検査を行い、①大量のタンパク尿、②血中タンパク質の濃度の低下(低アルブミン血症)が確認された場合にネフローゼ症候群と診断します。腎機能の評価、コレステロール、電解質などの異常、感染症の有無などの詳細な検査も行います。腎臓の一部の組織を採取し顕微鏡で評価する腎生検を行う場合もあります。腎生検は、子どもの場合、全身麻酔が必要になることが多く、小児の腎臓専門医が担当します。子どものネフローゼ症候群の場合、後述するステロイド薬が有効か無効かによって、発病当初に腎生検を行うかを判断します。腎炎などが強く疑われる場合は、治療前に腎生検を行います。

治療

ネフローゼ症候群の基本治療は、ステロイド薬を大量に毎日内服することです。免疫、特にリンパ球の働きを抑える作用があり大きな効果があります。ステロイド薬の効果の差によって、①ステロイド感受性と②ステロイド抵抗性に分類されます。

多くのステロイド感受性の人は、7~10日程度でタンパク尿が消失(寛解(かんかい))しますが、ほとんどの人が再発(タンパク尿が再出現)し、特に、最初の半年に2回、または1年に4回以上の再発が多くみられます(頻回再発)。

再発が多い場合、ステロイド薬の副作用が問題になります。ステロイド薬には、肥満、高血圧、糖尿病、白内障、感染症など多くの副作用があり、この副作用を回避するため、免疫抑制剤が使用されます。免疫抑制剤のひとつのシクロスポリンは、Tリンパ球の働きを抑え、ステロイド薬による低身長の改善に効果的です。ただ、免疫抑制剤にも感染症の悪化などの問題があり、シクロスポリンは腎障害がみられるため、長期使用はできません。

これに対し、Bリンパ球だけを体から消失させるリツキシマブ(商品名:リツキサン)という治療薬が2014年に保険適用になりました。Bリンパ球がなくなり感染症が重篤になる可能性があるため、使用の際には慎重な経過管理が重要です。

更新:2022.08.22

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