きゅうせいぜんりつせんえん

急性前立腺炎

概要

前立腺炎は、男性にある前立腺という臓器に起こる炎症のことをいいます。前立腺は、膀胱から尿を体の外に出すための尿道を取り囲むように存在し、精液の一部を作る働きをしています。前立腺炎は、急激に症状が出る「急性前立腺炎」と、長いあいだ症状が続く「慢性前立腺炎」に分けられます。

前立腺は尿道を取り囲むように位置しているため、炎症によって前立腺がパンパンに腫れ上がると、尿道が押しつぶされて尿が全く出なくなる「尿閉(にょうへい)」という状態に陥ることがあります。これは緊急処置を要する状態です。

急性前立腺炎の原因

前立腺炎の原因には、大きく分けて「細菌性」と「非細菌性」があります。

1.細菌性前立腺炎
細菌が尿道を通って前立腺に入り込み、炎症を起こすことで発症します。膀胱炎(ぼうこうえん)や尿道炎(にょうどうえん)をきっかけに発症することもあります。高齢者では大腸菌などが主ですが、20代〜30代の若年層では、クラミジアや淋菌(りんきん)などの性感染症(STD)が原因で発症するケースも少なくありません。パートナーへの感染を防ぐためにも、原因菌の特定は非常に重要です。
2.非細菌性前立腺炎
検査をしても細菌がみつからないタイプの前立腺炎です。ストレスや骨盤(こつばん)周辺の筋肉のこわばり、生活習慣などが影響している可能性がありますが、正確な原因はまだ十分にはわかっていません。
図
図:急性前立腺炎

急性前立腺炎の症状

前立腺炎の症状は人によってさまざまですが、主に次のようなものがあげられます。

  • 排尿時の痛みや違和感
  • 尿が出にくい、出しにくい
  • 会陰部(えいんぶ)(※1)や下腹部の痛み
  • 下腹部や腰まわり、太ももの付け根あたりが重たい感じになる
  • 発熱(細菌性の場合、とくに急性で高熱が出ることがある)
  • 倦怠感(けんたいかん)や疲れやすさ

急性前立腺炎では、突然の高熱や強い痛みが出ることが多く、重症化すると尿が全く出なくなる恐れもあります。

突然の38度以上の高熱、激しい寒気(震え)、排尿時の激痛がある場合は、細菌が血液中に入り込む「敗血症(はいけつしょう)」という命に関わる状態に進行する恐れがあります。これらの症状が出た場合は、迷わず救急外来や泌尿器科を受診してください。

※1:肛門と陰のうの間

急性前立腺炎の検査・診断

前立腺炎かどうかを確かめるために、以下のような検査が行われます。

1.尿検査
尿の中にばい菌や白血球が含まれていないかを調べ、感染の有無を確認します。
2.直腸検査
医師が手袋をして、肛門から指を入れて前立腺に触れ、腫れや痛みの程度を調べます。これを「直腸診」といい、前立腺の状態を知るのに重要な方法です。
3.血液検査
感染や炎症の度合いを知るために、血液検査を行います。
4.画像検査
超音波検査などを使って、前立腺が大きくなっていないかや、ほかに病気が隠れていないかを確認します。

これらの検査結果を総合的に判断して、細菌性か非細菌性か、急性か慢性かを見極めます。

急性前立腺炎の治療

前立腺炎の治療は、原因や症状の程度によって異なります。

1.細菌性前立腺炎
抗生物質:菌を殺す効果のある薬を一定期間飲み続けます。急性の場合で高熱や脱水、尿閉がある重症例では、入院して抗菌薬の点滴治療を行う必要があります。症状が落ち着いた後も、再発や慢性化を防ぐため、処方された抗菌薬は必ず指示された期間(通常2〜4週間と長めになることが多いです)飲みきってください。
痛み止めや発熱に対する薬:痛みを和らげたり、熱を下げるために使用します。
排尿を楽にする薬(アルファ遮断薬など):尿道や前立腺まわりの筋肉をゆるめ、尿を出やすくします。
2.非細菌性前立腺炎
痛み止めや筋肉をゆるめる薬(筋弛緩薬)など:骨盤底筋(こつばんていきん)がこわばっている場合には有効とされています。
日常生活の改善:ストレスを減らす工夫や、アルコールや刺激の強い食べ物を控えるなどが推奨されることがあります。
リラクセーション法:骨盤周りの筋肉をほぐす運動やマッサージ、温熱療法などが取り入れられる場合もあります。

いずれのタイプも、症状に合わせて治療を組み合わせることが重要です。また、再発を防ぐためにも医師の指示どおりに薬を飲み続け、定期的に受診することが望まれます。

急性前立腺炎の併症

重い前立腺炎を放置すると、以下の合併症を起こすおそれがあります。

  • 前立腺の膿瘍(のうよう):膿がたまった状態
  • 尿閉:尿が出せなくなる
  • ほかの部位への感染拡大(血液を通して全身にばい菌が広がる敗血症など)

症状が軽くても長期間放っておくと、慢性的な痛みや排尿障害が続き、生活の質が大きく下がってしまうことがあります。少しでも違和感がある場合は早めに受診することが大切です。

急性前立腺炎の予防

前立腺炎の予防策は、はっきりとした原因がわからないケースもあるため一概には言えませんが、次のような点を心がけるとよいとされています。

1.規則正しい生活
睡眠を十分にとり、栄養バランスの良い食事をとる。
アルコールや刺激物をとり過ぎない。
2.排尿を我慢しすぎない
長時間尿をためると、膀胱や前立腺に負担がかかることがあります。
水分を適度に摂取し、尿意を感じたら早めにトイレに行く習慣をつけましょう。
3.適度な運動
血行を良くするためにも、ウォーキングなどの適度な運動を行う。
座りっぱなしの姿勢を長時間続けないように注意します。
4.性感染症予防
コンドームを正しく使用するなど、感染を防ぐ工夫も大切です。

更新:2026.05.13