ひるしゅすぷるんぐびょう
ヒルシュスプルング病
概要
ヒルシュスプルング病は、胎児期に腸管の神経(神経堤由来の細胞)が大腸の末端まで移動・成熟する過程が途中でうまく進まず、一部に神経節細胞(※1)が欠けたまま出生することで起こります。遺伝的要因の関与が知られており(例:RETなど)、家族内でみられることもありますが、多くは複数の要因が重なって発症すると考えられています。
神経節細胞が欠けた腸管では、便を先へ送る蠕動(ぜんどう)や、直腸が伸びたときに肛門がゆるむ反射(直腸肛門反射)が十分に働きません。そのため便が大腸内にたまりやすく、腸が拡張して症状が出ます。
※1:腸の動きを制御する細胞

ヒルシュスプルング病の症状
新生児期
- 生後48時間以内に排便しない
- ひどい便秘や腹部のふくらみ
- 嘔吐(おうと)(緑色または茶色の物質を吐くことを含む)
新生児期に最もはっきりとしたサインが見られるのは、「胎便(*2)がなかなか出ない」ことです。
※2:赤ちゃんが生まれて初めて排出する濃い緑色の便
幼児期・学童期
- 慢性的な便秘
- 腹痛や腹部の張り
- 成長の遅れや体重増加不良
- 倦怠感
重症例では新生児期に発見されますが、軽症の場合は成長してからわかるケースもあります。
ヒルシュスプルング病の検査・診断
- 1.レントゲン検査
- 腸の中に便やガスがどの程度たまっているのか見るために、腹部レントゲンを撮影します。
- 2.バリウム注腸検査(※3)
- 肛門からバリウムという白い造影剤を入れて、X線で大腸の形や便の通り方を調べます。
- ※この検査では、細い部位(無神経節部)と拡張した部位の境目(移行部)が手がかりになることがあります。
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図:ヒルシュスプルング病の検査 - 3.直腸生検(※4)
- 確実な診断方法で、肛門から細い器具を挿入して、大腸の壁の一部を少し取り、顕微鏡(けんびきょう)で調べます。
- ※神経節細胞の有無を確認できるため、一般に「確定診断」に最も重要な検査です。
- 4.肛門内圧検査(※5)
- 直腸内で風船を膨らませます。その結果、周囲の筋肉が弛緩するはずです。弛緩しない場合は、ヒルシュスプルング病が原因である可能性があります。通常、年長児や成人に行われます。
- ※直腸肛門反射(RAIR)がみられないことが典型所見で、年長児・成人では診断の補助になります。
※3:造影剤を使った腸の検査
※4:腸の組織を採取して概略検査
※5:肛門の筋肉や神経の働きを測定する検査
ヒルシュスプルング病の治療
手術療法
手術までの間は、直腸洗浄(直腸から温かい生理食塩水などで便やガスを出して減圧する処置)を行い、腸閉塞や腸炎を防ぎながら全身状態を整えることがあります。
- プルスルー手術
- プルスルー手術では、神経節細胞が欠けた腸管(無神経節部)を切除し、神経節細胞のある正常な腸管を肛門側へ引き下げて吻合します。手術は肛門から行う方法(経肛門的プルスルー)や、腹腔鏡(*6)を併用する方法など、状態や病変の長さにより選択されます。
- ※6:お腹に小さな穴を開けて、カメラや器械を挿入して手術を行う方法
- ストーマ手術
- 重病の小児の場合、手術は2段階で行われることがあります。
- まず、結腸の異常な部分を切除し、結腸の上部の健康な部分を、腹部に開けた開口部につなぎます。その後、便は開口部から体外に排出され、腹部の穴(ストーマ)から突き出ている腸の端に取り付けられた袋に入ります。これにより、結腸の下部が治癒する時間ができます。
- 結腸が治癒するまで時間が経ったら、ストーマを閉じて腸の健康な部分を直腸または肛門につなげる2回目の手術が行われます
- 手術後、ほとんどの子どもは、肛門から便を排出することができるようになります。
- 手術後、特に1年目は、子供は腸の感染症(腸炎)を発症するリスクが続きます。次のような腸炎の兆候や症状が現れた場合は、すぐに医師に連絡してください。
- 直腸からの出血
- 下痢
- 発熱
- 腹部の腫れ(はれ)
- 嘔吐
更新:2026.09.25
