胆石症
概要
胆のうや胆道内に石(結石)ができることで起きる病態を総称して、胆石症といいます。
食事で摂取した脂肪分やビタミンの消化・吸収を助けるために肝臓で作られる胆汁(たんじゅう)という消化液の成分が結晶化して固まったものを胆石といいます。肝臓で作られた胆汁は、胆のうに蓄えられ、胆管を通って十二指腸に送られますが、この胆汁の流れる道を胆道といいます。
胆石があると必ず症状が出るわけではなく、2〜3割の人が無症状といわれています。食事をすることによって胆のうが刺激されて胆石が動いたり、細菌感染によって胆のう炎や胆管炎を起こすことで症状が出ます。
胆石症は、胆石のできる部位によって次のように分けられます。
胆のう結石
胆のうにできる結石のことで、胆石症の中でもっとも多いといわれています。
胆管結石
胆管にできた結石です。胆管を流れる胆汁を胆石が止めてしまうために、細菌感染を起こすことが多く、時に短時間で危険な状態になることがあります。
肝内結石
肝臓内にある胆管にできた胆石のことで、珍しいものです。肝内胆管がんのリスクが高いといわれています。
胆のうポリープ
胆のうにできる良性のポリープです。ポリープのうち、コレステロールが沈着したものは、大きくなっても悪性になることはありません。ただし、悪性化する可能性があるポリープやポリープではなく胆のうがんの場合があり、注意が必要です。
原因
胆汁の成分がバランスを崩すことによって結晶化し、胆石となります。胆石には、コレステロール濃度が高いときに結晶化するコレステロール石と、胆汁の細菌感染によってできるビリルビンカルシウム石、肝障害などが原因の黒色石があります。胆石の中でもっとも多いのがコレステロール石で、脂肪分の多い食事が原因と考えられており、胆石症患者さんの大半を占めるといわれています。
症状
胆道痛
右の肋骨(ろっこつ)の下の部分やみぞおちの痛みとして出る傾向があり、右肩にかけて痛みを感じることがあります。この痛みは食後に出ることが多いのも特徴としてあげられます。
高熱
胆石が原因で胆のうや胆管が炎症を起こし、高熱が出る場合があります。胆のうから胆管への胆汁の流れが胆石によってせき止められることで、胆汁の成分が胆のうの粘膜を傷つけ、さらに細菌の感染が加わることで炎症が起こります。
黄疸症状
皮膚や白目部分が黄色くなる黄疸症状が見られる場合もあります。本来、肝臓で作られた胆汁は便に混じって排泄されますが、胆石などによりその流れがせき止められて、十二指腸に排泄されずに血液中に流れることで黄疸になります。黄疸になると皮膚がかゆくなったり、ビリルビン尿という褐色または黒色の尿が出たりします。
胆石は必ずしも症状が出るとは限りませんが、激しい腹痛や吐き気・嘔吐・発熱などの症状が続く場合は、胆嚢炎や胆管炎の発症も想定されるので注意が必要です。
また、症状を放置して治療が遅れてしまうと、さらに深刻な状態(胆のう周囲膿瘍や胆のう穿孔、敗血症など)まで進行することもあります。なかでも、急性閉塞性化膿性胆管炎は、救急医療体制の整備が進んだ現代であっても命を落とすことのある怖い疾患です。
検査・診断
画像検査によって診断します。炎症を起こしている場合は、血液検査で炎症反応や黄疸の値が確認できます。
腹部超音波(エコー)検査
プローブと呼ばれる小さな装置をおなかに当てて、おなかの表面から超音波を当てる検査です。患者さんの体にもっとも負担の少ない方法ですが、奥深い場所など、全域を詳しく見ることはできません。
CT検査
X線を利用して、体内の断層を撮影する方法ですが、コレステロールが原因の胆石は映りません。胆のうがんが疑われる場合など、胆のうや胆管に集まる働きを持つ特殊な造影剤を点滴しながら行うことがあります。
MRCP(磁気共鳴胆管膵管造影検査)
MRI装置を用いて、胆のうや胆管を描出する検査です。放射線被ばくが少ない方法ですが、ペースメーカーやステントなど金属物質を体内に入れている方、入れ墨のある方、閉所恐怖症の方、妊娠中の方は検査できません。
EUS(超音波内視鏡検査)
内視鏡を挿入して、胃や十二指腸から胆のう、胆管を高解像度の超音波で撮影する方法です。
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査)
内視鏡を十二指腸まで挿入して、胆管に造影剤を注入し、X線で撮影する方法です。胆石が見つかった場合には、内視鏡で胆石を取り除いたり、がんが疑われる場合には、組織を採取して病理検査を行うことができます。検査後に絶食が必要で、入院が必要となります。
治療
胆石症の治療の基本は、手術です。症状がなければ、年1回の検査で経過観察をしますが、症状がある場合や、がんが疑われる場合などには治療を検討します。内科的療法には、体外から衝撃波を照射して結石を砕き、自然に体外に排出する体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、薬物の内服によって行う胆石溶解療法がありますが、効果は限定的で、再発も多く見られます。
胆のう結石の治療は、胆のうの摘出です。胆石だけを取り除いても、再発することが多いため、腹腔鏡下手術を行います。胆のうがんの疑いがあるときや、炎症によってほかの臓器と癒着(ゆちゃく)しているときなどは、開腹手術になります。
胆管結石は、放置すると胆管炎を起こして短時間で重篤な症状になることもあるため、症状が出ていなくても、胆石を除去する腹腔鏡下(または開腹)手術を行います。
炎症が強い場合は、胆管から鼻にかけて長いチューブを置いて、たまった胆汁を体外に出すこともあります(内視鏡的経鼻胆管ドレナージ)。
更新:2022.05.16