気管支喘息の最新治療とは?生物学的製剤で「症状ゼロ」をめざす方法と注意点を解説

(せき)が出て呼吸が苦しくなり、発作が重症化すると日常生活にも支障を来す気管支喘息(ぜんそく)。昔は原因がはっきり分からず、狭くなった気道を広げて症状を和らげるという治療が中心だったのですが、今では気道や気管支の炎症が原因と判明しています。

さまざまな薬が登場した結果、発作を抑えるのではなく、最初から炎症を起こさないような治療を行うことで、「症状ゼロ」をめざせる病気になりました。今回は気管支喘息の最新治療と、注意点について解説します。

気管支喘息治療の歴史|吸入ステロイド薬とSMART療法の登場まで

気管支喘息は気道や気管支の炎症が原因で起こる病気

気管支喘息とは、空気の通り道である気道や気管支に、慢性的な炎症が生じることによって気道が狭くなり、呼吸がしにくくなる病気です。

治療を受けていない潜在的な患者さんも含めると、患者数は450万人程度と推測されている、身近な病気です。

気管支喘息は、咳が出て呼吸が苦しくなり、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音が呼吸器から聞こえる喘鳴(ぜんめい)を伴う発作が起こるのが、主な症状です。発作が重症化するとチアノーゼ(血中の酸素不足で皮膚が紫色を帯びること)や意識障害が生じることもあり、さらにはごくまれですが呼吸不全が起こることもあります。

喘息の症状
図:喘息の症状を呼吸の苦しさと動作ができるかで段階付けしている

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気道の炎症を抑えるための治療法が進歩

1980年代になるまでは気管支喘息の原因が気道や気管支の炎症だと判明しなかったため、当時は短時間作用型β2刺激薬という気道を広げて呼吸をしやすくする薬を処方する治療が中心で、炎症を抑えるような治療は行われていませんでした。

しかし1990年代に入ると専門医の間では炎症を抑える吸入ステロイド薬が気管支喘息の治療に有効だという認識が広がり、2000年前後からは同じく炎症を抑える作用のある抗ロイコトリエン薬が登場し、ステロイド薬をうまく吸入できない患者さんでも服用できるようになりました。

さらに、吸入ステロイド薬と発作止めを同じ吸入器で吸入することで、炎症を抑えると同時に気道を広げて発作を抑制するSMART療法(MART療法とも呼びます)も登場。現在の気管支喘息の治療法の主流となっています。

気管支喘息の最新治療と注意点

難治性喘息にも効果が期待できる生物学的製剤の登場

このように、ここ30年余りで急速に進歩した気管支喘息の治療ですが、吸入ステロイド薬やSMART療法でもなかなか症状が改善しない、難治性喘息にかかっている患者さんも存在していました。

しかし、難治性喘息の患者さんにも高い効果を期待できる薬が、2009年以降次々と登場しています。それが生物学的製剤です。

炎症を起こす特定の原因物質をピンポイントで抑え込む薬で、国内では2009年にオマリズマブ(商品名:ゾレア)が承認されたのを皮切りに、メポリズマブ(商品名:ヌーカラ)、ベンラリズマブ(商品名:ファセンラ)、デュピルマブ(商品名:デュピクセント)、テゼペルマブ(商品名:テゼスパイア)といった生物学的製剤が次々と承認・販売されるようになりました。

生物学的製剤と一口に言っても、このように複数の種類があるのですが、抑え込む原因物質の種類が異なるため、症状などによって使い分けることになります。

生物学的製剤により、治療目標も「臨床的寛解」にまでアップデート

生物学的製剤は、注射により使用します。これまで吸入ステロイド薬を使い続けるしかなかった難治性喘息の患者さんでも、症状や発作がない「症状ゼロ」の状態を長期間維持できる「臨床的寛解」にまで回復できるケースが増えてきました。

治療法の進歩により、2024年に改訂された「喘息予防・管理ガイドライン」(一般社団法人日本アレルギー学会)の最新版では、単に咳や発作を止めるだけではなく、「臨床的寛解」を長期間維持することが気管支喘息の治療目標とされています。

気管支喘息治療の今昔
以前の治療 現在主流の治療
軽度の気管支喘息の治療 薬により、気道を広げて呼吸しやすくする 吸入ステロイド薬と発作止めを同時に吸入するSMART療法(MART療法)
重篤な気管支喘息の治療 ステロイド剤投与の継続 生物学的製剤の投与
治療目標 発作を抑える 臨床的寛解

一部では以前の治療法が続けられているという問題も

気管支喘息の専門医はもちろん最新の治療法や治療目標の理解を深めています。しかし、全国各地にある診療所などの医療機関では、必ずしもすべての医師が気管支喘息の専門医であるとは限りません。そのような場合、1980年代当時の治療法が用いられていることもあると指摘されています。

実は今では、かつて気管支喘息治療に用いられていたβ2刺激薬という気道を広げて発作を抑える薬は、単独で投与すると咳や喘鳴を悪化させてしまう場合があることが分かっています。気管支が敏感になり、通常なら問題にならない冷気や温度差、煙といったわずかな刺激にも過剰に反応して気道が狭くなってしまい、咳や喘鳴の悪化につながるのです。

今でこそβ2刺激薬の単独使用はやってはいけないことと認識されていますが、1980年代頃は気管支喘息治療の主流でした。気管支喘息の専門医ではない医師が、古い治療法から更新できていない場合に起き得る問題として、危惧されています。

気管支喘息治療を受けるうえで気を付けたい点

今気管支喘息の治療を受けているという人で、β2刺激薬が単独使用されていないかどうかが気になるという場合は、お薬手帳をチェックしてみてください。吸入ステロイド薬が含まれておらず、以下の薬だけが処方されている場合は、注意が必要です。

  • □メプチンやサルタノールなど、発作止め吸入薬のみの処方
  • □テオフィリンなど、発作止め飲み薬のみの処方
  • □ホクナリンテープなど、発作止め貼り薬のみの処方

該当する場合は、担当医と治療方針について今一度相談する必要があるかもしれません。

更新:2026.02.06